●. 私の絵はいつ採用してくれるの?

 

 TSの宮野ゆかなさんとの絵の思い出を書いておきたい。

 

私の絵はいつ採用してくれるの?」それが最近の彼女の口癖になっている。

「私の絵は他の人に見せないでね」という踊り子さんはけっこう多い。こんなに上手いのにどうして見せちゃダメなのかなと思う。私としては、××さんからこんないい絵を描いてもらったんだよー!と自慢したいところなのだがそれができない。すごくジレンマを感じる。しかし、本人からそう言われたら他の人には見せないよう我慢するしかない。

それに対して、宮野さんのように言う方は初めてだった。私にはそれがけっこう新鮮だった。

少し、最初から事の成り行きを話しておこう。

お絵描きがMYブームになっていた私は、ゆかなさんのポラ時に渡す童話に他の踊り子さんの絵を添付した。「みんな、絵が上手だね~」と感心している。そこで、よかったら、ゆかなさんもお絵描きしない?と聞いてみる。すると、ゆかなさんが「太郎さんが見せてくれる絵はみんな上手すぎる。下手な人の絵が見てみたい!」と言うので、ゆかなさんと仲良しのタッキーの絵をこっそり見せた。

そうしたら絵を二つ描いてくれた。忘れもしない2018年8月24日の渋谷道頓堀劇場にて。一回目ポラ時に「何か書いておくねー! みんな上手だね。」とのポラコメに脈を感ずる。そして二回目ポラ時に「私の絵は下手くそだけどどうぞお収め下さい。みんなうますぎー! (笑)」とのポラコメと一緒に遂に絵を頂く。

そのときの絵が「スライム」と「おつかれサンバ」の二枚。初めて拝見した時、絵というよりは記号のような感じだった。「おつかれサンバ」は外枠だけだったので車の標識のように見えた。私はこの最初の絵を見て、ゆかなさんが絵が得意じゃないと思い込んだ。だから他の人に見せたら失礼かなと勝手に思った。

ところが、私はこの時に大いなる勘違いをしていた。私自身が彼女の絵を理解できるレベルになかったのだ。そのことは後になって気づいた。

まずひとつが「スライム」というキャラクターを私が全く知らなかったこと。だから変な絵だと勝手に思ってしまったのだ。その後、ちょうどタイミングよく晃生の望月きららさんがスライムの演目をやっていた。「あれっ⁉ ゆかなさんが描いてくれたものだ!」このとき、ゆかなさんが上手に描いていたことに気づいた。きららさんもスライムのお絵描きをしてくれたので、今度、スライムの童話を書くつもり。その時には、ゆかなさんときららさんの絵を童話に掲載させてもらうね。

もうひとつ、二度目のゆかなさんのお絵描き時に面白いことが起こる。2018年9月18日と20日の池袋ミカド劇場での出来事だ。

そのとき、ゆかなさんが「私の絵、採用してくれた?」と話しながら、続けざまに数枚の絵を描いてくれた。前に頂いた標識のような「おつかれサンバ」が人間の形をしてきた。顔が入り表情が分かるようになる。その絵がどんどん進化していき、最後は「おばサンバ」「おつかれサンマ」などユニークな変化形になっていく。これには私自身、興味がひかれた。そうしたら、一緒にのっていた道劇の桃歌さんが、ゆかなさんの絵に興味をもって、桃歌さんなりの別のタッチで「おつかれサンバ」と「おつかれサンマ」を描いてくれた。色付きだった。これには笑えた。楽屋での二人の盛り上がりが目に浮かぶ。私への絵の対応でこれだけ楽しんでもらえれば私も楽しい。

なによりも、絵というのはユニークさが大切。人を楽しい思いにさせられる絵は上手いに決まっている。私はそれから、ゆかなさんを見る目が変わった。

このミカドで、一気にゆかなさんの絵が全部で五枚貯まった。

お絵描きブームの私は、その後、「踊り子さんはどうして絵がうまいのか」というエッセイを書き、その中で、宮野ゆかなさんの絵五枚と桃歌さんの絵二枚を紹介した。(このエッセイは前に、ゆかなさんに渡している。)

ゆかなさんは、その後、会うたびに「私の絵はいつ採用してくれるの?」と聞いてくる。ほんんど挨拶言葉になっている。

2019年4月9日のミカドでは、さらに「いのしし」と「きりみちゃん」の絵も頂く。今や、ゆかなさんは私の専属マンガ家になってくれている。

そう思っていたら、他の踊り子さんから「楽屋で、ゆかなさんが『太郎さんが私の絵を採用してくれないのよ』と話していたわよ。ちゃんと採用してあげなさいよ」と言われる。私は慌てた。ゆかなさんの「私の絵はいつ採用してくれるの?」は冗談で言っている挨拶言葉だと思っていたので。

先日2019年6月12日のミカドで、ゆかなさんに「もう、とっくに採用しているよー」と話した。まだ疑心暗鬼のご様子だったので、今度このエッセイを見せようと思う。

 

踊り子さんと仲良くなるパターンはいろいろある。私の基本パターンは手紙だった。しかし、最近はこれにお絵描きが入ってきている。このことに凄く意義を感ずる今日この頃。

私が渡す手紙に興味をもって返事をたくさん書いてくれる人もいる。こういう人とはすぐ仲良くなれる。あまりコメントしてくれなくても、楽しく読んでいる方は分かる。ゆかなさんは後者のタイプ。ゆかなさんとはデビューから応援を続けているが、相性がいいのだと勝手に思っている。これだけキレイな方と仲良くなれるのは本当に幸せなことだ。

ゆかなさんは筆まめではないが、こと絵はすごくマメなのに正直驚いた。絵が好きなんだね。私としては、お付き合いの中に絵が入ってきたお陰で、ゆかなさんとのポラ対応が楽しくてたまらなくなってきている。(笑)

 

 

2019年6月