●. 踊り子の絵に疲れが吹っ飛ぶ!

 

 次は、南美光(みなみひかり)さん(元きよ葉さん、TS所属)の話をする。

 光さんはとても頭の回転の速い賢い娘だと前から感じていた。私が毎回渡す手紙をささーっと読みこなし、核心をとらえたコメントをポラに書いてくる。私の手紙は長いので読むのが大変と思うが、それを全く苦に感じないようだ。それだけでも感心していた。

 

 最近、お絵描きブームの私は次々と踊り子さんにお絵描きをお願いするようになった。光さんは他のお姐さんの絵を感心して面白がっていたが「みんな、上手すぎるー」と言っていたので光さん自身からお絵描きはしてもらえそうにはないなと思っていた。正直、デビューから長い付き合いをしているが、光さんがお絵描きをするイメージが湧かなかった。

 そんな折、2019年1月8日の大和ミュージックに新年の挨拶に伺い、私がジブリの童話を光さんに渡した。もちろん童話の感想が的確にポラコメントになって返ってくる。私はそれだけで十分満足していた。しかし最近は以前のように沢山ポラを買うこともなくなって、挨拶程度に応援しているようになっていた。光さんは途中で長い休業もあったりで、きよ葉から玉菊きよ葉に、そして休業明けに南美光に改名して頑張っていたが、私自身、応援の頻度は確実に落ちていた。そんな中で、私のジブリの童話に興味を示してくれて、「私はラピュタとカリオストロの城が好きなので、今度は是非その話を。」とポラにコメントしてくれた。私はそのことをしっかり記憶していた。

 ちょうどジブリに嵌っていた私はすぐに天空の城ラピュタとカリオストロの城の童話を準備していた。あとは光さんと劇場で会うだけだった。

 その機会は、三か月後2019年4月8日にやってきた。場所はシアター上野。私は一回目のポラ時に「天空の城ラピュタを基にした童話を書いてきたよー」と言って渡した。光さんは「えっ!」て驚いていた。

 そして、とうとう念願の光さんの絵と初対面。あまりの絵の上手さに腰が抜けそうになった。これだけ描ける踊り子はいない!驚いた。「コピーして他の踊り子さんに配ってもいいわよー」と言ってくれる。光さんとしても会心の絵なのだろう。私は心から満足した。

 一日あけて4月10日にも顔を出す。また楽日に来るからと約束していた。そして、その日に猪の絵と(眠そうな)メーテルの絵の二枚を頂く。今回はさらりと描いた感じ。でも私は大満足。これから光さんは私の専属漫画家の一人になってくれそうな予感。

 絵の追っかけが始まる。

 そして、今回お絵描き三回目の5月8日がやってきた。場所は同じくシアター上野。

 一回目のポラ時、私は「かぐや姫」の童話を渡した。平日だが客入りもよくトリの光さんはポラも売れていた。時間がなければお絵描きがなくても構わないと伝えてある。ところが、力作が返ってきた。なによりも感心したのが、単にかぐや姫を描いているわけではなく、私の童話の細かい背景まで読み込んで膨大な情報量のお絵描きをしている点。こりゃ大変だわ。でも、その分すごくインパクトがある。私は大満足。光さんに感謝でいっぱいになる。

 二回目のポラ時、私は‘すみっこぐらし’の童話と、最近書き始めた‘ちんぽ三兄弟’第一章を同封した。後者はおまけのつもり。榎本らんさんのイラストも入れて今踊り子さんに受けている旨を付け加えた。内容が内容だけに無視される可能性もあった。

 ところが、三回目のポラ時に、大変な力作が出来上がってきた。私はすぐに‘かぐや姫’のお礼を言ったが、彼女から「また描いたわよ。もうへろへろに疲れちゃった!」と言われる。すぐに内容を確認したら「エロザイルダンス」という題名。まさしく‘ちんぽ三兄弟’の踊るエグザイルのダンスである。これまた童話をよく読んでおり、一番面白いポイントを押さえていることに感心させられる。その上、‘ちんぽ三兄弟’のキャラクターがたまらなくユニークである。相当に絵心がなければ、こんな絵はなかなか描けるものではない。本当に絵心のある人は絵にユーモアがある。私はこの絵を見るたびに笑いが込み上げてくる。それほどの傑作である。

 

 話はそれるが、当日、私は朝六時過ぎに起きて劇場の場所取りに来た。睡眠時間も不足。

 そして朝、劇場前に並び、一回目から三回目まで観劇した。当然に疲れる。最近は、三回目まで観ると本当に疲れる。私も歳をとったんだろうな。昔は朝から四回目ラストまで平気で観劇していたが・・・若かったんだね。

 途中で眠くなることもたびたび。眠気と格闘しながら三回目のラスト、光さんのステージまで頑張って応援していた。

 そして最後に「エロザイルダンス」の絵を見た瞬間に疲れが吹き飛んだ。

 踊り子さんの絵は真心だと先に話したが、まさしく全身を光さんの真心が包んでくれた。これを描くのに光さんがどれほど疲れたことだろうと思う。その労力と真心が私の疲れを吹き飛ばし、私を幸福感で満たした。これが踊り子と客の交流、その真骨頂なのだと思った。

 

 しかも、この傑作の絵が‘ちんぽ三兄弟’の童話で頂けたことが嬉しい。この童話‘ちんぽ三兄弟’は発想が面白かったので私としても調子に乗って書き始めた。ただ内容が下品なためどんなものかなと思っていたが、この絵を見た瞬間、この童話は間違いなく「いける!」といった自信が漲ってきた。

 もの書きというのは常に刺激と励ましがないと仕事が捗らないところがある。今の私は踊り子さんを読者にして反応を見て、そして気分を良くして執筆を続けている。この20年間ずっとそうだった。この1~2年の間に私がお絵描きブームになり、更に踊り子さんから童話に絵を添えてもらい、それを刺激にして童話に勤しんでいる。そのせいか確実に童話のレベルが上がってきているのを実感している。それこそが私と踊り子さんの真のコラボなのである。

 今回の光さんの絵「エロザイルダンス」はまさしくその真骨頂である。最高だー!!!

 

 光さんも水咲カレンさんと同じく長い休業から戻ってくれたが、私は、彼女たちは私にお絵描きをしてくれるために復帰してくれたんだなと勝手に思っています。(笑)

 

 

2019年5月