ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第76章 上野ショックと第三回緊急事態宣言のダブルパンチ の巻

                          

                                         

 2021年4月14日(水)のシアター上野への警察ガサ入れのショックはストリップ業界全体に波紋を呼んでいる。ここしばらくガサ入れがなかったせいだ。

 劇場関係者や踊り子はかなりショックを受け神経質になっている。

 劇場関係者に今回の件を話すと皆一様に「しばらくなかったことなので油断してた」と驚いている。聞けばストリップ劇場の摘発は2013年1月のTSミュージック以来8年ぶりとのこと。「オリンピック前なので何らかの制限の指示はあるかなと思っていたが、まさか、このコロナ禍でガサ入れを実行するとは・・・」

 踊り子に、長い「ストリップは違法なのか」のレポートを読んでもらう。ある踊り子のコメント「上野の事はとてもショックでした。当事者ではないけれど、とてもメンタルをやられました。」みなさん同じ気持ちだと思う。中には「私は事件のちょうど一か月前の上野公演に乗ってました。しかもトップ。だから一か月前だったら私が被害に遭っていた。そう思うと背中が凍ります。私だったら、警察に逮捕されたら踊り子を即辞めます!」と話す踊り子もいた。8年ぶりということは、警察のガサ入れ自体を知らない踊り子も多くなってきている。特に、最近デビューした踊り子はそうだ。というか、デビュー時の面接で劇場スタッフからガサ入れの心配はないからと説明を受けて入った方もいる。彼女はSNSで「ガサ入れが無いなんて嘘じゃない!」とつぶやいている。劇場によっては警察と事前に調整して過激なエロボラを中止している劇場もあるが、その劇場自体は大丈夫かもしれないが、所属の踊り子が他の劇場に出演中にガサ入れされる懸念は残る。踊り子から、こうした話を聞いていると、大好きな踊り子を虐める警察が許せない気持ちでいっぱいになる。

 

 上野ショックの影響は全国に及んでいる。

 次々とスト仲間から連絡が入る。

 シアター上野が所属するTS系列の動きはどうか?

 ガサ入れのあった当日、同じTS系列の池袋ミカド劇場にも、目つきの鋭い数人の客が入っていて、彼らは私服警官ではないかと疑われたらしい。こうなれば疑心暗鬼の状態になる。翌日、ミカドは早々に「今週は都合により休館にする」と掲示された。

 ミカドは翌週21日から営業再開したが、パンツ興行(ポラ撮影でパンツを履くのはもちろん、ステージでもパンツを脱がないで演ずる)なのに客は驚く。万一、警察のガサ入れがあったとしてもパンツを履いていれば「公然わいせつ罪」にはならないから。苦肉の策とは言え、ストリップでパンツ興行というのは情けない話だ。いい香盤にもかかわらず客足は激減した。

 大和ミュージックも一回目ステージはパンツ興行だった。二回目からは通常に戻す。

ちなみに、シアター上野は5/1から営業再開したが、もちろんパンツ興行。

 TS系列は当然ながらかなり神経質になっている模様。

 

 また、遠く広島第一劇場にも警察のガサ入れが入ったとの連絡がスト仲間から入った。これには驚かされた。ただ、よく確認すると、広島の場合は警官がちょくちょく劇場に立ち寄っているらしく、とくに今回については5月20日付でもうすぐ閉館することもあり厳重注意扱いに留まった。そのためエロポラは取り止めになったらしい。せっかくの閉館記念興行にケチがついてしまったな。ストリップ・ファンとしては情けない話だ。

 

 他の劇場の状況はどうか。

 いち早く反応したのは大阪晃生ショー劇場。晃生では4/14の上野ショックを受け、翌日からすぐに過激なエロポラを禁止した。大阪遠征していたストリップ太郎はこれに驚いた。

もうすぐGW興行が始まる。当然に劇場側は客入りを期待している。しかしエロポラ無しとなると確実にポラ収入が減るので、劇場側としては痛いだろうな。

 とくにオリンピックの影響で東京都所在の劇場が神経質になっている。渋谷道頓堀劇場もエロポラは中止した。これで東京都内でエロポラ撮影できる劇場はなくなった。

ロック系の新宿ニューアートでは東京オリンピックを見据え、既に昨年の第一回コロナ緊急事態宣言前後からエロポラを禁止している。他にも既にエロポラを禁止している劇場は、全国的に見てみると、大阪東洋ショー劇場や岐阜まさご座などもある。こうした劇場は事前に警察対応をしており、それでも客入りはいい。こうした状況を鑑みると、従来はストリップと言えばエロボラであったが、いずれエロボラはなくなる可能性があるな。

 いずれにせよ、エロポラが無くなれば、劇場としてはポラ売り上げが減り収入減になることは確か。しかし、背に腹は代えられないということになるだろう。

 

 コロナ禍の中、ストリップ業界は他の娯楽・観光業と同じく、客入りが大きく減少している。経営的にかなり厳しくなっている。エロポラだけの問題ではない。

 最初にギブアップ宣言を出したのが小倉A級劇場であった。2021年6月末で閉館すると発表。畳みかけるように、広島第一劇場が5月20日をもって閉館を発表。広島は営業的には好調だったものの、当初から都市再開発計画があり、その立ち退き時期が正式に決定されたわけだ。こうして西日本のストリップは壊滅状態になる。なお、直近情報によると、小倉A級については事業後継者が現れ閉館を取り止めることになったのは救いである。

 

 さらに追い打ちをかけるように、4月25日(日)より5月11日までの二週間、東京都、大阪府、京都府、兵庫県の四都府県に限定して、第三回緊急事態宣言が出た。(後にこれは5月末まで延期となる。)

 大阪に遠征していたストリップ太郎は慌てた。劇場の営業はどうなるか? 宿泊はどうなるか? 交通機関はどうなるか? これによりストリップ観劇に大きく影響する。DVD試写室も営業自粛の対象になっている。しかし、いつも定宿にしているDVD試写室は運よく営業していた。さらに、劇場は休業要請の対象から外れた。ただ、営業時間短縮、酒類の提供禁止、場内での食事禁止などが打ち出される。このくらいは我慢するしかないね。

 どの劇場も高齢者や遠征客などを中心にして客足が激減している。

 上野ショックと第三回緊急事態宣言のダブルパンチで、ストリップ業界は瀕死の状態となっている。

 

 

 最後に、余談になるが、4月29日30日の二日間、池袋ミカド劇場に行ったときの様子を報告する。

この週は最後までパンツ興行だった。客入りが少ないかと心配されたが、GW初日ということもあり朝からほぼ満席だった。本来だったら、これだけいい香盤なら激混みなんだろうな。平日は客が少なかったこともあり、踊り子たちはこの客入りに喜んでいた。「パンツ興行でも、踊れるから嬉しい」と話している踊り子もいた。

 パンツ興行とわかっているのに、これだけの人が劇場に集まっている事実。

 私個人としては、パンツ興行だろうと普通の興行とそんなに違和感はない。おそらく、私と同様に、踊り子との触れ合い、ダンスパフォーマンスだけを求めて、みんな集まってきたのだ。我々のストリップ愛はそうした域に達している。

「性器の露出が問題だってー、何を言っているんだ、バカヤロー。それがなくったって我々のストリップ愛は負けないんだ!」 そう叫びたくなった。

 ただ、一般客は、やはりストリップといえば本来見られない陰部を見られると思ってやってくるのだろう。そうした人の客足が減ると劇場としては収益的に困る。そう思うと、パンツ興行ではなく、一刻も早く通常の興行に戻ってほしい気持ちでいっぱいになる。

 

                                     つづく