2021.4

ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第75章 シアター上野への警察のガサ入れの巻

 

 

ストリップ太郎が血相を変え息を切らしやってきた。

ちんぽ三兄弟は心配して「どうしたんだ?」と尋ねた。

「実は、さっきシアター上野に行ってきたんだ。すると入口のところに、5~6人の男たちがたむろしていた。私が劇場の中に入ろうとしたら『お客さんですか。残念ながら、今日は警察が立ち入りしているので入場できません。』と言う。彼らは私服警官のようだ。私はすぐにその場を立ち去り、近くからシアター上野に電話を入れた。案の定、電話は通じなかった。」

「ぼくは今週のシアター上野にお目当ての踊り子さんがいて、初日、二日目と通っていた。三日目は行かなかったが、今日の四日目は行くつもりでいた。たまたま来る途中で、修理を依頼していたノートパソコンを取りに行くためヤマダ電機に寄った。そのため劇場に到着するのが遅れ、トップの踊り子のステージが終わった12時半頃に到着したんだ。

 いつものように朝一から観ていたら警察のガサ入れに遭遇することになった。運が良かったといえるけど、劇場や踊り子さんたちのことが心配でしょうがない。」

 

 しばらくすると、シアター上野に朝一から行っていたという顔見知りのスト仲間二人がやってきた。神妙な顔をしている。

「朝からひどい目に遭ってしまった。ついに警察のガサ入れを実体験してしまったよ。調書をとられるやら、、、もちろん入場料はパーだし。さんざんな話だ。」

 彼らがそのときの状況を詳しく話してくれた。・・・

 平日(水曜日)なので朝一から客は10名ほどしか居なかった。当日はパンプレ企画があったものの平日としては少ない。トップの踊り子がステージで踊り、ボラを撮り、OPショーまで、一通り終わったところで、後ろの方で見ていた50代くらいの客がおもむろに立ち上がり前に出て「みなさん、そのまま動かないように。いまから公然わいせつ罪の現行犯として捜査します。」と警察手帳を掲げた。私服警官だった。

 外に待機していた私服警官30名ほどがどかどかと中に入ってくる。後の報道によると警官は全部で50人も動員されてたらしい。

 劇場スタッフ5名が舞台に上げられ一列になり手錠・腰縄をかけられた。トップの踊り子は別の警官と楽屋に入り取り調べをうけているようだ。客は全員、調書を取られる。調書の内容は、住所、氏名、生年月日、年齢、連絡先(電話番号)、職業(勤務先)などの基本的個人情報から始まる。所持品検査はなかった。今回ボラは一切捜査の対象ではなかった。(まだプリントもされていないのでボラの回収は無理かな!?)

 今回はあくまで公然わいせつ罪の立証が対象であり、「踊り子が陰部をさらし、それを見た」という証言を必要としていた。

 お客の中には女性客もいて、「ストリップがなんで悪いんですか」と反論していたらしい。

 そのままシアター上野の社長たちは警察に連行された。報道陣が事前に連絡を受けていた模様でその様を撮影している。お客らは全員、13時15分頃には劇場から解放された。

 

 以上が彼らからの聞き取り内容である。

 その後、TVや新聞にて報道される。そのまま転載する。・・・

警視庁保安課は16日、東京都台東区上野2のストリップ劇場「シアター上野」を摘発し、経営者の容疑者と女性ダンサー1人、40~60代の男性従業員5人の計6人を公然わいせつ容疑で逮捕したと発表した。

 逮捕容疑は4月14日(水)午後0時半ごろ、劇場に設置されたステージ上でダンサーが下半身を露出し、客15人に観覧させたとしている。照明を下半身に当てるなどの演出をして客を楽しませていたという。

 同課によると、容疑者は「取り締まりを受ける覚悟で営業していた」と供述。ダンサーら5人も「生活のためだった」などと全員容疑を認めているという。

 同劇場は上野地域で唯一のストリップ劇場として知られ、1回約2時間半の公演で5人のダンサーが出演し、入場料は5000円。1995年ごろから営業を始め、容疑者は2005年ごろから経営を引き継いでいた。約2年前から警視庁に苦情が寄せられ、同課が捜査を進めていた。・・・

 

 ストリップ太郎は、警察に連行された踊り子をすごく心配していた。彼女のことを応援していたこともあり、彼女への扱いが酷い!と憤慨していた。

 とくに彼女の場合、実名と実年齢に合わせ、顔写真までTVや新聞に報道された。これまでも実名と実年齢まで報道されることはあっても、顔写真まで出るのは初めて。ずいぶんひどい扱いじゃないかと彼は憤慨した。スト仲間が「彼女は複数回の検挙になるからじゃないか」と言う。本当に運が悪いとしか言いようがない。「そんなに心配しなくても、彼女ぐらいのベテランになったら肝が据わっているよ。」とスト仲間が慰める。それにしても、最長で二週間、これまでの例から、早くて2日から長い人で10日程度は抑留される可能性がある。しばらく会えないので心配が続く。

 

 

 ちんぽ三兄弟とストリップ太郎をはじめ、ストリップ・ファンは皆、こうした警察の対応に憤慨した。

「あるスト仲間からの情報によると、警視庁初の女性警視正(上野署長)が2/16に誕生し、そのご祝儀にガサ入れしたのではないか、と連絡が入った。そういえば、たしかに2月頃、女性署長就任の時、いろいろと憶測が出ていたな」と言う。

「警察のガサ入れについては、脱税や踊り子の麻薬所持などの要因もあるが、定期的に実績作り(点数稼ぎ)をやっているという話がある。今回は‘公然わいせつ容疑’と明言しているから完全な実績作りとなる。」

「今はコロナ禍でストリップ客が激減し、どこの劇場も経営が非常に厳しい。そんな中で実績作りなんかするか!? ストリップ関係者に死ねと言っているようなものだ。警察がそんな理不尽なことをするなんて信じられない。」

「これは弱い者虐めじゃないか。だいたい女性の警察署長が女性である踊り子を虐めてどうするんだ!」

「実績づくりなんて、スト客としては迷惑千万だ!警察は他にすることがたくさんあるだろう。こんなことにたくさんの警官をつぎ込んで、ほんとうに税金の無駄遣いだ。」

「ストリップは法律で認められているはずではないのか。これではストリップ業界全体が営業できなくなる。」

「オリンピック前だからかな。これだと関東の劇場は他も危ないぞ。」

 

 こうした意見を踏まえ、ストリップ太郎は「ストリップは違法なのか」について持論を展開し始めた。

                                    つづく