ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第52章 コロナ第二波襲来の巻

                                         

 

  コロナが少し収まりかけて漸く経済が再稼働を始めた。政府は経済再生の起爆剤として

観光業へのテコ入れとして「GO TO トラベル」のキャンペーンを企画した。これは、旅行代金を割り引く形や、観光施設や土産物店、それに飲食店や交通機関などで使えるクーポンを発行する形で実施され、7月22日から先行して、旅行代金の割り引きが始まる。特に、7月23~26日の四連休を利用して人の動きを活発化させようと目論んでいた。

 ところが、それを嘲笑うかのごとく、コロナ感染者が急増を始めた。特に東京都の数字が凄く高い水準で推移している。四連休が始まった初日7月23日の数字は366人という過去最悪の数字で、初めて300人を超えた。東京都で100人を超えるのは15日連続で、200人超えは三日連続。それに引きずられ全国各地の感染者数も上がり、一日の感染者が全国では981人に達する。大阪も102人で二日連続で100人超え。日本は東京を中心にして人の往来が発生するので地方に飛び火するのは当然である。菅官房長官は「東京問題」と言っている。こうしたことから「GO TO トラベル」のキャンペーンは「東京都を目的地とする旅行」と「東京都内に住む人の旅行」は対象外となった。

 政府としては、経済を活性化させたいのが本音だが、感染者が急増している現状に、対応が右往左往している。また東京都と政府で対応がちぐはぐになっているのが気になる。

 さて、この影響によりストリップはどうなるのか?

 

 ちんぽ三兄弟が今回の「GO TO トラベル」のキャンペーンについて騒いでいた。

「漸くストリップ劇場も通常の営業を始めた。もちろんコロナ対策を行っての前提条件付きであり、中には出演タレントが減ったり営業時間の短縮などもあるが、いずれにせよ元のように営業が行われてきて、ストリップファンとしては喜ばしいところだ。」

「俺たちは以前のように遠征も始めた。一部の高齢者常連はまだコロナ感染を怖がって遠征には慎重になっているようだが、だいぶ劇場にも活気が戻ってきたな。」

「ボクも前から、ストリップは遠征があるからこそ盛り上がると思ってきた。地方にたくさんの劇場があり、踊り子を追いかけて全国を駆け巡る。人の往来が多くなることで地方の経済は活性化する。だから地方にストリップ劇場があることの意義はすごく大きいんだね。地方の観光業もストリップと提携して盛り上がれる。温泉場にストリップ劇場があることは娯楽として最高の組み合わせだと感ずる。政府が企画した『GO TO トラベル』のキャンペーンはとっても意義があると感じたよ。」

「この『GO TO トラベル』キャンペーンをストリップの遠征に利用できないかなと期待していたんだ。ところが、急遽、東京が対象外になってしまった。なにせ都内に劇場が多いから、これだと制約が大きいな。このキャンペーンを利用するのは難しいかもな。」

「オレは夜行バスで遠征しているんだが、漸く便が以前のように増えて喜んでいたんだ。お盆興行なども発表されて、それに合わせて夜行バスの予約もとっていたんだ。ところが、ここにきてコロナ感染者の急増を受け、夜行バスの便が7月27日から激減する変更となる。予約していた安い四列シートは無くなってしまった。今や夜行バスの予約変更に大慌てという状況さ。」

 そこに、ちん吉くんが口を挟んできた。

「ボクは毎年のように夏は田舎の秋田に帰省しているので、今年も田舎の母親に電話で事前に話しておいて、夜行バスの切符を購入しておいたんだ。ところが、折り返し母親から電話が入り、今回は帰省を取り止めてくれ!と言われた。なぜなら、秋田では東京からの帰省者を拒むよう指導されているようだ。どうも東京からの帰省者が秋田に住む高齢者に感染させた等の事故が多発して非常に警戒しているようだ。万一、私が帰省するとなると、弟が会社を二週間も休まなければならなくなるという。それくらい厳しく規制しているんだな。状況はすぐのみ込めたので快く了解した。母親は残念がっていたが、コロナが収まってから、ゆっくり帰省してほしいと付け加えてくれたよ。

 ボクも一瞬がっかりしたが、これだけは仕方ないね。だから帰省できなくなった期間は、これ幸いと劇場通いしようと思っているんだ。」

「ちん吉くんは気持ちの切り替えが早いね。」

 

「しかし、まさにコロナ第二波は余談を許さない状況だな。政府としても、せっかく経済再生に舵を取り始めていたので、いまさら自宅での自粛生活に戻れとは言えないようだ。どうにか最低限のコロナ対策をしながらも、このまま乗り切っていきたいところだろう。小池都知事も、この四連休もできるだけ外出を控えるよう、お願いベースで報道している。ただ以前に比べれば、ずいぶん弱腰感があるな。」

「劇場としては、お盆興行に向かい、お客の呼び込みに力を入れ始めている。その矢先、こうしたコロナ第二波の影響が営業にどう影響してくるのか、ものすごく心配だ。」

「TS系のミカド劇場では、7月結の興行から香盤数を六人から五人に減らし、更に公演回数を三回に減らし始めた。他の劇場も追随しそうだな。シアター上野では前からずっと三回公演にしている。このくらいなら、まだ我慢できる。ようやく7月に入って、シアター上野では悪評だったかぶり席でのフェイスシールドの使用を止め、池袋ミカドも距離を開けてのポラ撮影を止めたところだったのにな。」

「なんとか、持ちこたえて、このままコロナを乗り切ってほしいと切実に思うよ。」

 

                                    おしまい

2020年7月24日朝に作成