ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第41章 コロナ禍からようやくストリップ再開だー!の巻

 

 

 ゴールデンウィーク中も一向にコロナ禍が収まらず、当初の緊急事態宣言では5/6までの期限だったが、GW中の5/4に5月末までの延長が発表された。それでもGW明けには通勤する人が徐々に増え始め、社会は少しずつ動き始めた。

 そして、ようやく新型コロナウイルス感染症も収まる兆しが見え始める。TV報道で流れる感染者数が顕著に減ってきた。経済もかなりダメージを受けている。しかし、ここで規制の手を緩めるとコロナ再燃 (いわゆるコロナ第二波) の惧れもある。政府は宣言解除の決断を迫られていた。

 最終的に、コロナ被害の状況に応じて、段階的に宣言解除を行うこととした。

まず5/14、東京都や大阪府などを除く39県で解除する。

次に5/20には、関西3府県も解除となり、残るは首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)と北海道のみが継続となる。(そして遂に5/25に前面解除となる。)

 

そんな中、ストリップ業界も再開に向け動き出した。

最初に営業再開に踏み出したのは渋谷道頓堀劇場だった。なんとGW明けの5/7(木)から営業を再開すると早々と発表した。当初の期限に合わせる方針のようだ。しかし、さすがにまだコロナ禍が収まっておらず、この時期の再開に驚いた。四人香盤で全員所属の踊り子のみを集めている。踊り子としても覚悟がいるだろう。お客もまだ怖いだろうな。実際、最初の週5/7-10までの客入りは少なく、せいぜい常時10名程度だったらしい。

そのときの劇場の様子を行った客に教えてもらう。

①   パンツ興行・・・ポラはもちろん、ステージでも一切パンツは脱がなかった。

②   一列目のかぶり席は座れない。二列目以降も一個ずつ空けて座る。座れないところに赤のテープで×印が貼ってある。

③コロナ対策として、入場時に検温とアルコール消毒。ポラ撮影前にアルコール消毒。

④フィナーレなしのサクサク進行。四人香盤なので20時には四公演終わる。

 ちなみに、四人香盤ということもあり入場時にスタンプ二個のサービスがあった。

引き続き、二週目からは通常に近い状態で興行が始まった。五人香盤となり、ステージ上でのパンツ興行はなくなる。但し、ポラはパンツを履いたまま撮影を継続する。それ以外のコロナ対応は続けられた。このままの状況で5月いっぱいは営業を継続する。

このときの客入りは平日は常時10人程度。しかし、土日は回数券販売もあり、トリプル・ダブル進行となるほどの客入り。座席数が少ないこともあり、たくさんの客が立ち見となる。

渋谷道劇に続き、次はTS系が動き出す。シアター上野が5/24(日)から、池袋ミカド劇場が5/26(火)から営業を再開する。関西では大阪晃生ショー劇場が5/28(木)からと追随する。

他の劇場は足並みをそろえて、6月1日からの通常営業となる。

無事、これまで通りの営業状態に戻ってくれて、ストリップ・ファンとしては心からホッとしている。

 

さて、ちんぽ三兄弟はじめ、ストリップ常連客はどうしていたのだろうか。

お互い、自宅で自粛している間にストリップ禁断症状の発作が出ていないかと心配になり、頻繁にメールで連絡を取り合っていた。不思議にも、みなさんお行儀よくやっていた。

AVの個人撮影などはやっていたようで、AV好きはそちらに食指を動かした人もいる。また、川崎ロックでは人数限定でライブ撮影会を実施していた模様。予約をとらないといけない。

人よってはお気に入りの踊り子さんのSNS配信で楽しんでいた模様。サービス精神旺盛な踊り子さんも多いんだね。

 

ずっと自宅にいるとどうなるか。

運動不足になるし、TVを観ながら、間食はするし、酒は飲むはで、絶対に太ってしまう。

コロナ明けで再会したら、みなさんコロコロとコロナ太りしていた。踊り子さんも例外ではない。早くステージ慣れして痩せなければと焦っている方を見かける。(笑) いや、笑いごとではない!

 

ストリップ太郎がやってきて、ちんぽ三兄弟に挨拶した。

ストリップ太郎はコロナ太りしている三人を見て笑っていた。そういうストリップ太郎はコロナ自粛期間中どんな生活をしていたのだろうか。

「ほくはね、コロナ期間中、趣味に没頭していたんだ。最初の頃は、これをいい機会にと、これまで未整理だったポラの整理をやった。それもすぐに終わった。

 次に、これまで手が付かなかった長編小説の執筆に挑戦してみた。実は、これまで書き散らしていたものはあったんだけど、どうしても目の前のステージのことを書きたくて手が回らなかった。観劇レポートや短編童話をすぐに踊り子さんに見せたいからね。ところがコロナ自粛中はステージが観れないから、長編小説に取り組む時間がたくさんある。二作品が完成し、いま三作目に取り組んでいる最中だ。長編ものはやはり短編ものと違ったずっしりとした達成感があるね。長年の夢がとうとう叶ったよ。

 ただ、一日中、そればかりに取り組むわけにはいかない。すぐ飽きたり疲れるんだね。趣味だから別に原稿の〆切があるわけでもないし、時間があるのでゆっくり取り組めばいいから、気分はのんびりしている。

そこで気晴らしに、本や漫画や映画を観ている。本は目が疲れるけど、漫画や映画は楽しいね。このコロナ期間中、めちゃくちゃ観たよ。映画はこれまでもたくさん観ている。今は年間200本以上は観ている。今回はとくに漫画にはまったよ。スト仲間に推薦してもらったものやネットで検索して人気のあるやつを片っ端から見たよ。

長編漫画の面白さは「伏線のはり方だ」と気づいて、自分の長編小説にも応用させてもらった。

また深夜まで漫画を読んで布団にパタンキューしていたので、お酒を呑まなくても寝れるようになった。お陰でずっと断酒していたので体調もいいよ。

総じて、すごく充実した期間になったんだ。」

ちんぽ三兄弟は感心して聞いていた。ストリップ太郎が続けて話した。

「正直、コロナ生活にも慣れ、楽しい生活サイクルを見つけたので、もう少しこのままの生活が続いてもいいかなと思っている。

 いずれ高齢になってストリップに行けなくなることを考えると、今回の生活パターンは理想的かもしれない。コロナ生活は、老後に向けた予行訓練だったのかなとも思える。

 ストリップ劇場が再開し出して思うのは、今の巣ごもり生活とストリップ漬けの生活のどちらが楽しいかなと思うことだ。コスト的には、今の生活はせいぜい映画と漫画のレンタル代だけだから安い。劇場通いだと入場料、ポラ代、遠征も含め交通費や宿泊代がかさむ。コスト・パフォーマンスだけ見たらストリップが負けちゃうかもしれない。

 しかし、ストリップが始まると、やっぱりストリップの方に目が向いて、身体が動いちゃうんだね。今回も渋谷の第二週に、お気に入りの踊り子さんがのっていたので我慢できずに、中日あたりから行っちゃった。久しぶりにお会いした踊り子さんから『コロナ明け、おめでとうございます』と言われる。また新人さんも綺麗でびっくり。この時期にデビューするなんて一生忘れないね。正直、劇場に来てコロナに罹って死んでも本望だなぁ~なんて考えたほど。笑

そして、一度ストリップ熱に火が付いたら連日通ってしまった。踊り子さんから『どうかストリップ熱が二度と冷めませんようにww』とポラコメに書かれちゃったよ。笑

 今はAVなど安い風俗などもあるけど、ストリップにはストリップしかない魅力がたくさんある。これらを踊り子さんと我々ストリップファンで守っていかなくてはならない。競う対象は他の風俗だけでなく、他にも娯楽などがたくさんあることに今回気づかされる。ストリップが負けてはいけない。」

「さっき長編小説にチャレンジした話をしたけど、やっぱ人間は自宅にこもってばかりいちゃダメだよね。身体はなまるし、刺激がなさすぎて頭も呆ける。ストリップは最高の気分転換と刺激になる。身体が動くうちは、ずっとストリップを楽しみたい。

 コロナ自粛期間中、いろんなことを教えてもらったよ。いい体験だった。」

 

 

 今回のコロナ自粛生活を総じてみよう。

 ここ20年間という私のストリップ歴の中で、一か月以上に亘り、これほど劇場に行かなかったことはない。10年以上前に、海外出張で上海に一週間ほどいたときに、中国にはストリップはないので、こんな生活に耐えられないなぁと思ったのが記憶に浮かぶ。

 コロナで緊急事態宣言が発令された時も、ほとんどの劇場が4/7で休館したが岐阜まさご座だけ4/10まで営業していたので、最後の二日間のみ遠征した。つまり最後の最後までストリップにしがみつくような生活だった。だから、ストリップのない生活はきっとストリップ禁断症状でも起こるのかなと不安にも感じていた。

 ところが蓋を開けると、すっかりストリップのない生活に慣れてしまった。ストリップが再開されて、むしろ今の慣れた生活を乱されると思えるような気分にもなる。

 

 このことから何が教訓として考えられるか?

 ひとつは気が紛れるもの、気晴らしできるもの、そんなものが見つかればストリップがなくてもなんとかなること。つまりストリップ依存症は治せる。

このことは依存症全般に言えるんだと思う。思えば、学生時代から一日も欠かさずお酒を飲んできた。寝る前にアルコールを飲まないと眠れないほどに。完全なアルコール依存症である。そんな私が全くアルコールを求めない生活ができた。不思議な達成感である。だからこそ、今の生活を維持したいと思えたわけだ。

 

 もうひとつは、ピンチはチャンスになること。

 新聞を見ていたら「かの有名な万有引力の法則は自粛生活から生まれた」という記事があった。英国でペストが猛威をふるった17世紀、若きニュートンはロンドンを離れて郷里の村に避難した。そこでの、わずか一年半の間に、引力のほか微積分と光学という画期的な発見をする。当時、ニュートンは学位を得たばかりで、大学が閉鎖されなければ、思考を深める時間もなかったわけだ。ニュートンのような天才と比べるわけにはいかないが、私もストリップが観れなくなったらどうしようと不安になっていたが、これを機に別のことをやる絶好のタイミングになった。私の場合は、長編小説に取り組むことでようやく長年の夢が叶えられた。内容はストリップ小説なので、ストリップから完全に離れたわけではないが(笑)。

 

「コロナ禍(か)」という言葉が今年の流行語大賞になるんだろうな。

「禍(わざわい)も三年経てば用に立つ」という諺がある。たとえ災害でも、ときが経てば何かの役に立つ。何事も役に立たないものはない。今回のコロナ禍も、経済活動が一時的に停止したことで大気汚染が改善した地域もあるという話だから、2020年はもしかしたら「地球温暖化をくいとめた年」になるかもしれない。また、リモートワークや時差通勤が進む「ワークスタイル変革年」になるかもしれない。

「禍(わざわい)を転じて福となす」になるといいな。

 とにかく、ストリップはもちこたえた。コロナに負けなかった。

 今回の経験をいいように活かしたい。

さあ、新しいストリップの幕開けとして頑張りたい。

 

                                   

2020年5月22日