ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第35章 みんなでコロナウイルスからストリップを守ろう!の巻

 

 

 いっこうに新型コロナウイルスの拡大が収まらない。4月に入り、全世界で感染者が100万人を超え、それによる死者が5万人となる。ヨーロッパでは都市封鎖が実施されている。上からの命令で外出禁止となり人の往来が厳しく制限され始めた。

 それに対し、日本では都市封鎖までは至っておらず、どうにかギリギリのところで留まっている状態。外出禁止も権力による強制でなく要請レベルに留まり、あくまで国民の‘自粛’を呼び掛けているに過ぎない。国民性もあり、現状はけっこう真面目に従っている。

 こうした中、ストリップはどうなっているか。

 

 ちんぽ三兄弟たち劇場常連が話し合っている。

「夜はお酒を呑んで、劇場に来たらアルコール消毒。朝から晩までアルコール漬けの気分だ。」

「冗談はともあれ、こりゃ大変なことになってきたな。最初のうちは他人事のように思っていたが、芸能界やスポーツ界の有名人が連日『まさか自分がコロナに罹るなんて!』と報道されているとゾクッとするな。中でも喜劇王・志村けんさんの死亡がショックだった。まだ70歳だもんな。」

「お陰で劇場はお客が来なくてスカスカだよ。これだと劇場の経営はもたないぞ。」

「こういう時こそ、劇場に行って、お金を落とすようにするのが本当のスト客だよな。踊り子さんも淋しがっているだろう。」

「そうかな。踊り子さんの対応もいろいろだよ。あまりにも客が少なくて唖然としている人もいるけど、客がたくさん入っていると『あなたたち、こんな状況の中、よくストリップに来る気になったわね』と呆れた目で訴えてくる踊り子さんもいるよ。」

「要は、若者が外出の自粛を守らず、平気で動き回り、ウイルスを拡散させていると非難されているのと同じだと言うわけだ。若者は、コロナは持病持ちや体力のない高齢者だけ重症になり、自分たち若者は罹っても軽症で済むと思い込んでいる。だから平気で夜中も遊びまわっている。外でウイルスに感染し仮にその若者が発症しなくても、そのウイルスを家族や職場に持ち込むと高齢者が感染してしまうことを見逃している。自分がウイルスの運搬車になっていることが分かっていない。人の迷惑を全く考えていないことになる。これと同じように、スト客が全国を遠征することは若者と同じことだと捉えられるよ。外出自粛を守らないということは不謹慎を通り越して非国民と思われても仕方ない。」

 一体どうしたらいいのかと悩む。

 そこに、物知りのおじいさんが口を挟んできた。

「いまはストリップ始まって以来の危機だと感ずる。一人でもスト客から感染者が発生したら全国すべての劇場が閉まることになる。一旦閉まると劇場は潰れ、踊り子は仕事を失い、もうストリップの再開はできなくなる。そうなるとストリップはお終いじゃ。」

「スト仲間同士、万一コロナに感染しても絶対にストリップ劇場に行ったなんて言わないようにしようなと話している。」とちんぽ三兄弟はフォローする。

「そんなことは期待できない。中にはポロリと話してしまう奴もいるだろう。」

「そう言えば、つい先日、スト常連のおじいちゃんが朝早くから劇場に来ていて、いつものようにかぶり正面の席に座るのかと思っていたら、舞台最前列の端席に座っていた。どうしたのかなと思っていたら、おじいちゃんと馴染みのお姐さんとの会話が聞こえてきた。『おとうさん、熱があるんだったら劇場に来ちゃダメでしょ。万一、コロナに感染したら大変よ。』と話していた。おじいちゃんは70歳をゆうに越えている。万一コロナに罹ったら命の危険となる。そうした本人の問題もあるが、周りから見ていると気持ちが悪くなる。あぁ~たまらん。」

「この時期に熱があるのに劇場に来る人の気が知れないな。コロナじゃなくても、そもそも感染予防の観点から風邪をひいたら劇場に来ないのがルール(マナー)だろう。困ったもんだ。そんな奴もいるんだから、今や入場前に検温もやるべきだね。蕨ミニ劇場は既に検温を実施している。蕨ミニは劇場が狭いので密着せざるを得ないからだろうが、今や他の劇場でも、入場前にアルコール消毒をシュッシュッとやるだけでは足りない。やれることは徹底的にやるべきだね。」

「まだまだ自覚が足りない人がいるんだね。情けないことだ。毎日のようにストリップを観ないでいられない病気の人も多いからなぁ。。。」

「劇場側や踊り子さんもかなり目の色が変わってきた。マスク着用しないと観劇できないと決めた劇場も出てきた。音響を小さくして、窓や扉を解放したまま上演したり。ある踊り子さんは『どうせ場内は空いているんだから、かぶりにかたまらないで離れて座ってよ』とまで言っていた。そういえば、かぶりド真ん中の席が使用禁止になっていたな。」

「あ、それは椅子が故障していて修理していないだけだよ。」(笑)

「いずれ座席もコロナ・シフトになっていくのかな~!?」

 

 物知りのおじいさんが襟を正すように続けて話しだした。

「わしは、今回の新型コロナウイルスは自然による人類に対する報復だと思っている。

考えてみろ、コロナはそもそも自然災害だが今や人災になっている。もともと中国の武漢地区で起こったが、みるみる世界全体に広がった。これはインターナショナルな人の往来によりウイルスを人間が世界中に運んだからだ。

 東日本大震災のときに津波だけに留まらず、人間が原発事故という人災を起こしてしまった。人間のエゴが被害を拡大させたんだ。それと同じだ。

 今回のコロナは、人間の傲慢さに対して自然がしっぺ返しをしていると感ずるんだ。コロナは本来動物がもつ病気だ。人間が自然破壊して動物に近づき過ぎたために感染してしまった。人間の身勝手な都市開発で動物たちも生存場所がなくなってきたので、人里に近づき、そして未知のウイルスが人間を襲うようになったのだ。ましてや地球温暖化で自然環境が狂い始めている。今後もこうした現象は続いていくことだろう。

 過去、ペストは19世紀前半ヨーロッパの人口の三分の一を死に追いやった。第一次世界大戦中の1918年に始まったスペイン風邪も5000万人もの死者を出した。最近でも2003年のSARSや2012年のMERSなどウイルス感染が頻繁に起こりだした。今回のコロナ対策に人間がどう対処するかを自然が試しているように感じてならない。コロナは自然の人間に対する警告なんだ。あー怖い!怖い!」

 続けて「わしはしばらくストリップ観劇を控えようと思っている。高齢だしね。」

「ぼくらは劇場が潰れないようにスト通いを続けるよ。」とちんぽ三兄弟は言う。

 人それぞれにSTRIP LOVEの形は違う。家族がいる人は家族の手前もあり、ストリップ観劇で外出するのは避けた方がいいね。人によって立場・環境が異なるだろう。でも、なんとかストリップを守っていきたいと思う気持ちは皆一緒だ。

ある踊り子さんが「世界中が大変な状況の中でも、こうして劇場で踊ることができて幸せなんです。みんなで乗り越えようね!!」とポラのコメントで書いてくれた。

ストファンみんなで協力して、この危機を乗り越え、ストリップを守っていきたい。

 

 

                                    おしまい