ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第33章 コロナウイルスに負けるな!の巻

 

 

 2020年は新型コロナウイルス感染から始まった。中国の武漢から発生した新型コロナウイルスは瞬く間に世界に広まった。当初は隣の国のこととして他人事のように感じていたが、人の往来の多い現代は一気に感染が拡大し身近に迫ってきた。

 3月に入り、学校の休校に始まり、人が集まるイベントがどんどん中止や延期となる。ことはそれだけに留まらず日本全体が自粛ムードになり、不採算からお店が閉まりだし経済にも大きなダメージとなる。実際に生活面がどんどん不便になってきているのを感ずる。

 ストリップにもじわじわと影響が始まる。2月の後半から渋谷道頓堀劇場は感染予防から、踊り子は客と握手を交わさなくなった。その動きは踊り子を通じ全国の劇場に広まる。全く気にしない踊り子も中にはいるが殆どの踊り子は握手をしないようになる。

 握手どころの話ではない。劇場の観客が軒並み減少している。特に感染すると体力のない高齢者は死亡率も高いため、シルバーを中心に観客が激減している。ストリップに行って死んでもいいと思っている常連客は別にして、それ以外のシルバーは劇場に足を運ばなくなっている。

 

 朝、劇場前に、いつものおじいちゃん連中が屯(たむろ)して雑談が聞こえてくる。

「わしらが行くところがどんどん無くなっている。スポーツジム、フィットネスクラブ、ヨガ、サウナ等どんどん営業を止め出した。カラオケまで閉まってきている。寄席や吉本といった娯楽まで行けなくなってしまった。もう行けるのはストリップ劇場ぐらいだよ。」

「ストリップだってどうなるか分からんぞ。今のところは、感染者が出た施設が中心になり閉まっている。警察が感染者に行った場所を詳しく調査するらしいからね。ところが、感染者もさすがにストリップに行ったとは言いづらくて話さないらしい。が、実際には感染者の中にはストリップに行った者がいるらしいと、ストリップ常連の間で噂になっているようだ。」

「今のところ、新型コロナウイルスで休館にする劇場はない。ただ、シアター上野は3月頭のラスト三日間だけ休館にしたのと、今後もしばらく三回公演にするらしい。それにならって平日の公演数を減らす劇場が増えてきているようだ。客が減っているのでこの先もどうなるか分からない。ストリップ界にも夏のオリンピック前に一波乱ありそうで怖いなぁー。」

 

 ちんぽ三兄弟は相変わらず元気いっぱい。お姐さんたちも「あんたたちは別ね。抵抗力が強そうだわ。」とあきれているほど。

「おれたちは絶対にコロナには罹らない。なんせ、もうストリップ中毒になっているから、他の黴菌が入ってくる余地はないんだ。」そうだそうだと頷く。

「劇場も空いているから、まったりしていて遊びやすい。いつものようなポラ行列もない。劇場側も保健所からの指導があり、こまめに換気しているので空気もいい。だからストリップ劇場内は快適空間になっている。

 遠征もらくちん。電車・新幹線、夜行バス、がらがらだ。みんな接触を避けているから乗り物に乗らない。本来3月は繁忙期で夜行バスは満杯なのだが、今年は違う。東京ディズニーランドと大阪ユニバーサルスタジオジャパンが休園している影響が大きく、春休みなのに学生も外国人も全く移動していない。がらがらなはずだ。逆に客が少なくて間引き運転や運休になる懸念があって困るほど。」

「その点、ストリップは、死んでもいいと思っている濃い客のお陰でなんとか成り立っている(笑)。ただ感染予防からマスクをしている客は多いな。

 一方、踊り子の方はマスクをして踊るわけにはいかない。覚悟をもってステージに立つしかない。なお毎年この時期はインフルエンザで休む踊り子が出ているが、今年は感染予防の意識が高いのか、そうした踊り子の話は聞かないね。」

 

 新型コロナウイルスは迷惑なことばかり。少しはいいこともないのかな。

「最近、思うんだ。日本人全員がずいぶん手洗いをしっかりやるようになったな。従来、男性の二割近くがトイレ後に手を洗わないという統計値がある。信じられない話だ。そう考えたら、ストリップでの握手も不潔だよね。これを機に、全員が手洗いをするようになったらいいね。

 他にも、人の手が触れるところは徹底的に拭いたり、アルコール消毒したりしている。

 新型コロナウイルスが収まる頃には日本全体が衛生的で清潔な国になってオリンピックを迎えたいものだな。」

早くコロナ騒動が収まることを祈る。

 

                                    おしまい