2021.2

ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第65章 ストリップは鬼ごっこ!? の巻

               

                                   

 さて、豆まきの話を契機にして、いつものように、ちんぽ三兄弟の妖怪談義が始まった。

「鬼は外、福は内」と言うけど、なんで鬼は外に出ていかなければならないんだ?

 そもそも鬼ってなんだ?

 

「そういえば、日本の妖怪の中で、鬼の存在感は断トツだよな!」

「日本の昔話ですぐ思いつくだけでも『桃太郎』『一寸法師』『こぶとりじいさん』『おむすびころりん』等と三歳の子供でも知っている有名な童話には必ずと言っていいほどに鬼が登場しているよな。」

「昔話だけじゃなく、漫画にも悪役として鬼がよく登場する。古典的には手塚治虫の漫画『どろろ』が好きだが、最近の漫画では石田スイ原作の『東京喰種トーキョーグール』あたりから鬼の存在が一味違ってきた感じがしていた。そして昨年、私を夢中にさせた漫画に、吾峠呼世晴原作の『鬼滅の刃』と、白井カイウ(原作)・出水ぽすか(作画)の『約束のネバーランド』があり、どちらも鬼を退治する漫画だった。前者の『鬼滅の刃』は、家族を鬼に皆殺しにされた主人公が、たった一人生き残ったものの鬼と化してしまった妹を人間に戻そうと鬼に挑んでいくストーリー。後者の『約束のネバーランド』は、鬼が人間を食べるために特別な施設で飼育していたが、そこの人間たちが施設を逃げ出して鬼と戦う内容。両方とも人気が高くてTVアニメ化された。とくに『鬼滅の刃』の方は2020年10月26日に公開された劇場版「鬼滅の刃」無限列車編は爆発的ヒットを記録し、社会現象化したほどだ。」

「この映画は公開から10日間で興行収入100億円を突破し、興行収入ランキングでは13週連続で1位を獲得。11週目には興行収入324億円を超え、これまで国内興行ランキング歴代1位だった『千と千尋の神隠し』(316億8000万円)の記録を破る快進撃となった。」

「あの名作映画『千と千尋の神隠し』の記録が破られるとは信じられないよなー」

「踊り子さんも次々に『鬼滅の刃』をモチーフにした演目を出しているよ。天羽夏月さん、kuuさん、JUNさん、京はるなさん、栗鳥巣さん等々。またTVアニメ『鬼滅の刃』主題歌『紅蓮華』を歌うLiSAさんの曲を使っている踊り子さんはほんと多いよね。」

 

 

「たしかに、日本には昔から鬼の伝承が多いよね。人間の想像力が生み出した妖怪は数多いが、『おに』ほど日本のことわざや昔話に頻繁に出てくるものはない。」

「日本の鬼の姿かたちって、すごくユニークだと思わないか。頭に1本か2本の角が生え、髪はパーマを掛けたように縮れている。上半身は裸で虎柄のふんどしか腰布、パンツを履いている。そして金棒を片手に担いだ大男の姿を想像しちゃう。あれは何を意味しているのかな?」

「鬼というのは、どうやら日本で進化したもので日本独特な妖怪らしい。

中国にも鬼という言葉が出てくるが、鬼は死んだ人の魂そのもので、姿かたちのないものとされていた。日本もこの影響を受けて、当初は姿の見えないものとして伝わり、‘死への恐怖や恐れ’から鬼は怖いもの、人に悪さをするものというイメージがついたと考えられている。ともあれ、中国の鬼というのは、実態は幽霊であり、具体的なイメージ像はなかったわけだ。」

「現在日本でイメージされている姿かたちのある『鬼』は、仏教が由来になっている。餓鬼道にいる『餓鬼』や『地獄の獄卒』などの事とされている。

餓鬼とはその名の通り、仏教の中にある六道(6つの世界)のうちのひとつ『餓鬼道』にて、飢えに苦しみ食べ物や水を手にしても火に変わってしまい、決して満たされることのない鬼のことだ。地獄の獄卒とは、生前に悪事を働いて地獄に落ちた亡者たちを拷問し、苦しみを与え罪の償いをさせる鬼のことを呼ぶ。

 もうひとつ、鬼の姿は風水などで登場する「鬼門(きもん)」が由来と言われている。節分の起源とされている中国の宮中行事「追儺」(ついな)」は、陰陽五行と呼ばれる風水の基礎に基づいて行われていた。陰陽五行では鬼門(鬼の出入りする方角)は北東とされている。昔の十二支は子(ね)を北に時計回りに配置していたので、北東は丑寅(うしとら)の方角となる。鬼門は牛と虎ということから、「頭が牛で、下が虎」、つまり頭に牛の角、下は虎縞パンツが鬼の姿になったわけ。また、牙も虎だね。

 だから、昔の日本人が当時の中国や仏教の知識に基づいて、あの鬼のイメージ像を作り上げたんだね。日本人のセンスもなかなかだよね。」

 

「そもそも、鬼って何なんだ?」

『おに』の語源は、目に見えない「隠形(おんぎょう)」の『隠(おぬ)』が転じたものと言われている。先ほども述べたように、「鬼(キ)」という漢字の原義は中国から入ったもので、その内容は「死者の魂」。なるほど字体を見ると分かるように、「魂」=「鬼」なんだな。その中国の鬼が6世紀後半に日本に入り、日本に固有で古来の『隠(おぬ)』と重なって鬼(おに)になったという。

だから、元来は姿の見えないもの、この世ならざるものであることを意味するわけだ。そこから人の力を超えたものの意となり、後に、人に災いをもたらす伝説上のヒューマノイドのイメージが定着し、さらに陰陽思想や浄土思想と習合し、地獄における十王配下の獄卒であるとされた、とも考えられている。」

「先ほどあげた鬼の登場する有名な日本の童話はほとんど平安の頃に出来上がっている。

 平安時代に書かれた有名な『源氏物語』にも鬼が出てくる。その中に出てくるある女性は、ふだんは教養もあり知的で冷静だが、光源氏の浮気に激しい嫉妬心を燃やして、ついに鬼となる。そして、光源氏の正妻の葵上(あおいのうえ)にとりついて命を奪う。さらに、光源氏から愛された夕顔も殺す。この女の嫉妬心、怨み呪いの執念が鬼となったという。

 どうも、最初のころの鬼は、女が多いらしい。百鬼夜行の話もそうだったな。平安時代は夜這いが盛んだったから、男たちは帰り道で正妻の怨念にとりつかれ、それを恐れた。結局、男の浮気心が女の鬼を作ったんだとも思える。」

「今でも『鬼嫁』という言葉がよく使われる。世の男どもは‘この世にかみさんほど怖い存在はいない’と言う。たしかにそれは当たっている。しかし、この世にかみさんほどかわいい存在はいないとも言っている。男というのはそんなもんだね。」(笑)

『鬼ごっこ』という遊びも、‘鬼さんこちら、手のなるほうへ’と言われて、鬼が追いかけてくる。そして鬼につかまった人も鬼になってしまう。鬼ごっこの鬼は、どこまでも追いかける人間の怨念や執念を表したものなんだね。」

 

 

「そう考えたら、ストリップって踊り子と客の『鬼ごっこ』に思えてきたなぁ。

 踊り子は鬼で、客に向かって‘鬼さんこちら、手のなるほうへ’と言って手招く。客はほいほいと喜んで踊り子を追いかける。どこまでもどこまでも、全国津々浦々まで遠征するわけだ。

 踊り子は客に追いつかれたら、本来隠しておかなければならない秘部を客に見せる。そこは鏡になっている。客はそれを見て、自分の心の奥に隠しておいたスケベの本性を露にする。踊り子は客がスケベ鬼に変貌する様を楽し気に見ている。これも鬼の本性である。鬼なる踊り子は客が他の娘に目移りすることなんて絶対に許さない。

 ときに踊り子は鬼の本性を表す。男を狂わせ、男は喜んで鬼の魅力の虜となり、最後に男は身も心も食いつくされる。

ストリップ劇場は現実の世界とは一線を画した異界の地なんだな。

 そこには本能である性欲をはじめとして、浮気心、嫉妬心、金銭欲などの我慾が渦巻いている。本当は恐ろしいところなんだ。」

「でも、ストリップは、おれにとっては最高の『鬼ごっこ』遊びだな~。

 美しき女鬼たちと戯れることができるなら、やっぱり劇場は男の天国だ。仮に、ここが天国でなく地獄であったとしてもおれは満足だ。

おれは、喜んで大好きな踊り子さんに食い殺されたいな! おれの肉は脂肪がのって美味しいはずだ! なのに誰も食べてくれないなぁ~」そう言って、お腹をさする。

「そりゃ、おまえのビールっ腹は絶対に美味しくないと思うよ。」(笑)

 

                                   おしまい