ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第57章 夏野菜と河童の巻

                          

                                         

「今年は、例年のように猛暑に加え、コロナ禍でダブルパンチだな。暑いのにマスクを着用しなければならないからたまらん!」

「マスクをしていると喉の渇きを忘れてしまう。水分補給は大切だよ。しかし、おまえのように炭酸飲料とアイスばかり食べていると胃腸が弱り身体がバテルぞ!」

「こういう暑い時こそ、旬の夏野菜や夏果物を食べたらいいんだよ。野菜や果物は水分がほとんどなんだ。特に夏野菜は水分率が高い。果物より高いのにはびっくりだ。例えば、夏の果物といえばスイカだが水分率は89%で果物の中でトップ。ところが、夏野菜はスイカよりもっと水分率が高いんだ。水分率の高い順に、キュウリ95%、セロリ95%、トマト94%、白菜93%、ナス93%…と並ぶが、キュウリ、トマト、ナスなどの夏野菜が目立つだろ。」

「夏野菜には、水分やカリウムを豊富に含んでいるものが多く、身体にこもった熱を身体の中からクールダウンしてくれる。トマトやキュウリなど生で食べられるものも多いので、夏に不足しがちな栄養素を簡単に補給できるのが夏野菜の長所だな。」

「代表的な夏野菜には、キュウリやトマト、ピーマン、ゴーヤ、ナス、トウモロコシ、カボチャ、枝豆などが挙げられる。濃い、ハッキリした色の野菜がその特徴。食欲も落ちるこの季節、カラフルなビタミンカラーは食欲を刺激する。栄養価が高いうえに、なにより値段が安いのがいい。」

「オレは野菜が嫌いだけど、ビールに枝豆は最高だな。枝豆にはカリウムとたんぱく質が多く含まれているから夏バテ予防にいい。」

「古いギリシアのことわざに『トマトが赤く実れば医者が青くなる』というのがあるの知っているか? トマトにはビタミン C、E、カロチンの三大抗酸化作用があり健康と美容の味方。赤色色素『リコピン』は老化防止、がん予防になるというから凄い旬の効果があるんだ。」

「でも、やはり夏野菜の王様はキュウリだな。キュウリには、夏場、汗をかいて不足しがちな水分とカリウムが多く含まれている。キュウリにはビタミンCを壊してしまう酵素が含まれているが、酢にその酵素の働きを抑える作用があるので、酢の物で食べれば効率よくビタミンCも取れるし。」

「キュウリと言えば、河童(カッパ)たな。お寿司でも、キュウリの細巻きを『カッパ巻き』と呼ぶほどだ。めっちゃ美味しい!!!」彼らはすぐに妖怪に結びつける癖がついている。

 ちんぽ三兄弟がそんな話をしていたところに、ストリップ童子こと・ちん吉くんが友達を背負ってやって来た。友達はこの猛暑でやられたらしい。マスクを外して気づいた。なんと、河童である。河童もこのご時世無理にマスクをしているせいか、完全に干上がっている。急いで頭の皿に水をかけてやり、キュウリを与えたら生き返った。やはりキュウリの効果は抜群である。

 

 ちん吉くんは友達の紹介がてら河童の話をし出した。・・・

河童(カッパ)と言えば、現代でもアニメやキャラクターなどで、かわいらしくユーモアに描かれることが多いが、実はその正体には悲しい言い伝えがたくさんある。今回は河童の正体や伝説を紹介する。

河童(かっぱ)は字の如く、河に現れること、童(こども)の姿をしていることから、その名前がついた。子どものような体格で、全身が緑色。背中に亀の甲羅のようなものを背負っていて、頭の上には丸い皿がある。この皿には常に水が張られていて、皿が乾いたり割れてしまうと、力が出なくなるとされる。

そして、河童の見た目のルーツになったとされる有名な説のひとつが、間引きされた子どもの水死体が河原にさらされている姿であるという説。他の子どもに間引きしていることを悟られないよう、大人が作った嘘が「河童」であったとされている。悲しいお話だが、江戸時代には子どもの間引きが頻繁に行われていた。座敷童子とルーツは同じなんだね。この話を聞くと、座敷童子と河童が友達なのもよく分かるなぁ~

悲しいルーツの一方、書物で描かれる河童の行動は、ひょうきんでおっちょこちょい。相撲といたずらが好きで、人間につかまえられて、こらしめられている姿も多く描かれている。また、一方で恩義に厚く、お礼の代わりに田植えを手伝ったり毎日魚を届ける姿も、数多く伝承されている。考えてみれば、そういう楽しい部分を強調しないと、間引きされた子どもが浮かばれなかったのかもしれないな。

また、九州地方には古くから「河童は人間に取り憑く」という言い伝えがある。例えば、熊本県では河童が若い女性に取り憑く言い伝えがあり「河童が棲む水辺ではふしだらな様を見せないように」と戒められ、河童に取り憑かれると、甘ったるい声で言い寄るようになると言われていた。これも間引きした子どもの霊なのだと感ずるな。

 

では、メインテーマである「なぜ河童はキュウリが好きなの?」に入ります。

一説によると、カッパはかつて水神だったと言われている。その理由のひとつが相撲だ。カッパは相撲を取るのが好きだ。相撲と言えば神に捧げる神事のひとつである。そしてキュウリは水神への捧げものと考えられていた。つまり、カッパはもとをたどれば神であり、キュウリはその神に供えられるものだったのだ。それゆえに、河童はキュウリ好きと言われるようになった。

また、京都の方では、夏になり水遊びが盛んな時期になると決まって『祇園祭りより前に川で遊ぶと河童に尻子玉を抜かれるぞ』とか、『6月15日に川に入ると、河童にさらわれる』といった言い伝えを子供達に語って聞かせる風習があった。

尻子玉(しりこだま)とは、人間の尻の近くにあると言われている『魂の塊』を言う。または肝臓とも言われている。そして、これを抜かれるとただの抜け殻になってしまう。溺死した人はこれを河童に抜かれたのが原因だと噂された事によりこのような伝承が伝わったようだ。まぁ、これは水遊びがしたい子供達が調子にのって事故を起こさないための方便だと言われている。

しかし、それでも子供達ははしゃぐ。いくら入ってはダメだと言われても、入る。そこで、各地では旧暦6月16日に『河童祭り』が行われた。各地の河童祭りで共通して言える事は、川や池、沼などにキュウリを投げ入れる事だ。

では、なぜキュウリを投げ入れるのか?

尻子玉(しりこだま)は人間のお尻にあるとされている架空の臓器だと話したが、要は河童は人間が好物なんだ。尻子玉や川へ引きずり込む話を見ると、人間を獲物として見ている。きっと人間は河童にとって歯ごたえがあってみずみずしい獲物なのでしょう。そこで出てきたのがキュウリだ。キュウリが人間の味に似ているとされ、「川に入る前にキュウリを投げ入れれば、河童に引きずり込まれない」という俗信が生まれた。つまり『キュウリの味は河童の好物である人間の味に似ているので、キュウリを水に投げてから水に入れば河童に襲われずにすむ』といった俗信が、各地の河童祭りでキュウリを投げ入れる行為の背景になっているようだ。

こうして「河童=キュウリ好き」という方程式ができあがったのだ。まさに「本当は怖いキュウリ好きの理由」といったところだろうか。やはり河童も妖怪。そういった恐怖から、河童にキュウリを捧げるようになったのだろう。

 

同じような話で、ザクロも人間の味に似ているという話がある。結構有名な話なので、知っている人もいるかもしれない。

ザクロが人間の味に似ているというのは、仏教の話から来ている。仏教の世界に、鬼子母神(きしもじん)という女の鬼神(きじん)がいた。

彼女は子だくさんの母親で、子育ての栄養を付けるために、なんと人間の子供をさらって食べていたのだ。それを見かねて対処したのが、お釈迦様。何をしたのかというと、鬼子母神の子供の1人を隠した。もちろん半狂乱になって探し回る鬼子母神。なかなか見つからず、ついにお釈迦様に助けを求めてきた。そして、助けを求めた彼女にお釈迦様はこう言う。

「あなたにはたくさんの子供がいるけど、1人を失っただけでもこうやって嘆き悲しんでいる。それでは、あなたよりもっと少ない、ただ1人の子供を持つ人間の母親の悲しみはいかほどだろうか。」

鬼子母神がお釈迦様に教えを乞うと、さらにお釈迦様はこう続けた。

「私の教えに帰依(きえ=拠り所)して、人々を襲うのをやめなさい。そうしたら子供に会えますよ。」

そうして鬼子母神は仏教に帰依して、子供に会うことができた。今では仏教を守護する鬼神の1人となっている。そして、このときお釈迦様が鬼子母神に人間の代わりに与えたのがザクロだった。そのため、鬼子母神の像はザクロを持っていることが多い。

 

 

 ちん吉くんの話を聞いて、ちんぽ三兄弟がふうーとため息をつき、ぽつりと呟いた。

「この河童の話を知ってから、河童のことを単にユニークなキャラクターと思えなくなったな。カッパ巻きを食べると、なんか悲しくも、しょっぱい味がするよ!」

 

                                   おしまい