ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第47章 妖怪「だっこちゃん」「ひざまくら」登場の巻

                                         

 

 劇場にめいぐるみを持ってくる客がいる。たいがいの踊り子はぬいぐるみが大好き。要は踊り子の気を引くための道具のようだ。持参してきたぬいぐるみを踊り子にプレゼントする人もいれば、プレゼントはせず、まさに自分のキャラクターのごとく踊り子とスリーショットを楽しむ人もいる。楽しみ方は人それぞれなので構わないが、客の間では目立つことは確かである。

 

 さて、劇場によく来る客に、だっこちゃんを持ってくる客がいる。もう一人、ガチャピンを持ってくる客もいる。この二人はやけに意気投合している。

 誰もが知っている有名な人形ではあるが、一応、それぞれの人形について説明する。

ダッコちゃん、だっこちゃんは、1960年(昭和35年)に発売されたビニール製の空気で膨らませる人形の愛称。後に製造元のタカラ(→タカラトミー)もこの名称を使うようになった(21世紀の復活版では正式な商品名として「だっこちゃん」が採用されている)。

だっこちゃんの誕生話をしよう。もともとは玩具の一種として、1960年(昭和35年)4月に発売された。当初は「木のぼりウィンキー」、「黒ん坊ブラちゃん」といった名前で売り出された。「ウィンキー」という商品名は目玉が閉じたり開いたりしてウィンクしているように見えることからつけられた。

当初の製造元は当時の宝ビニール工業所(後の株式会社タカラ→タカラトミー)。 真っ黒な人型をした本商品は両手足が輪状になっており、木にしがみつくコアラのようなポーズをとっている。「ダッコちゃん」の名前の通り、腕などに抱きつくようにぶら下げることが可能だった。発売当初の販売価格は180円。腰蓑をつけた黒人のように見えるその姿は極限までディフォルメされており、非常にシンプルな形状だった。 ダッコちゃん生みの親である大木紀元は、当時、武蔵野美術大学に通いながら社員として働いていた。現在は創造学園大学創造芸術学部の学科長兼教授である。

1960年6月ごろから、若い女性を中心にブームの兆しが起こった。日本における玩具としては、1958年(昭和33年)のフラフープに続くブームとなった。ぶら下がる機能を活かしてこの人形を腕にぶら下げて歩く女性が時折見られるようになる。マスコミが取材対象とする中で、この商品には「ダッコちゃん」(平仮名表記で「だっこちゃん」とも)という愛称が与えられた。

日本での人気を受け海外にも紹介される。ところが、その後、ダッコちゃんはアメリカから黒人蔑視との批判が出て、製造を中止することになる。

2000年(平成12年)にタカラ社長に就任した佐藤慶太は「ダッコちゃんの復活」を社命に掲げた。同年3月、佐藤慶太の呼びかけで社内にダッコちゃんの復活プロジェクトが立ち上がった。 そして、2001年(平成13年)に販売再開する際、もともとは愛称だった「だっこちゃん」を正式な商品名に採用した。その際には厚い唇、縮れ毛、腰みのといった人種差別的と指摘された要素を取り払い、代わりにとんがり頭としっぽがついた。設定も「くっつきたい、触れ合いたい、という人間本来の心から生まれた架空のキャラクター」というものに変わり、色も黒のほかピンクやブルーなどが用意された。こうして現在に至る。

 

もうひとつのガチャピンについて。

ガチャピンは、フジテレビ系の子供番組『ひらけ!ポンキッキ』を初めとする様々なフジテレビ系番組において、主として着ぐるみの形で登場するキャラクター。設定上、南国生まれのステゴザウルスの男の子で、年齢は永遠の5歳、身長は165cm、体重は80kg、座高は88cmとされる。特技はスポーツ全般。

誕生日である4月2日は『ひらけ!ポンキッキ』の放送が開始された1973年4月2日に由来する。

一人称は「僕」。全身緑色で丸い頭、半開きで眠そうな垂れ眼。口元からは前歯が2本飛び出している。背中には背鰭があり、お腹の部分だけが黄色とピンクの縞模様になっている。両手首にエネルギーボールが7個ずつあり、勇気と力の源とされている。ムック(雪男の子供)とコンビを組む。日本ソフト映像倶楽部社長の片桐襄二が原案・デザインを担当。当初はきちんとしたキャラクターデザインではなかったが、同番組を制作した日本テレワークの野田昌宏がモデルで、可愛げがあり、ふっくらとした顔から着想を得た。ビートルズのポール・マッカートニーがモデルだという説もあった(相方のムックのモデルがジョン・レノンであるという説と合わせて、これは都市伝説と化しているが、根拠はない。)

自己紹介の決まり文句は「ガチャガチャピンピン、ガチャピンで〜す」。

 

さて、このだっこちゃんとガチャピンのぬいぐるみを持つ二人組。大きな身体のだっこちゃんと小さい身体のガチャピン、変な組み合わせだが、やけに気が合う。だっこちゃんもガチャピンも南国生まれというのが共通点か。なにより、ぬいぐるみを使って踊り子さんとツーショットを撮るわけだから手段と目的が共通している。

よく見ると、巨体のだっこちゃんの方はムックに見えなくもない。ガチャピンとムックなら気が合うはずだ。

さて、それぞれの撮影状況を話そう。

だっこちゃんの方は撮影ポーズとして、踊り子にだっこちゃんを持たせ、その彼女をお姫様だっこしたり、または足を伸ばして座った彼の膝の上に座らせたりする。時に踊り子を肩車する。要は、ぬいぐるみを使って自然な形でお触りするのである。どうも、その本心は「肩車すると踊り子のあそこが首に触れてぞくぞくする。恥ずかしさや遠慮なんてしてられるかー。お金を払っているんだから堂々と触ってやれ!」と思っているようだ。

一方のガチャピンの方は、踊り子さんの膝の上に‘ひざまくら’する。ある時、自然に頭を乗せたら「きゃー! 重すぎるー!」と悲鳴をあげられた。驚いたガチャピンは、それからは頭を乗せないで、少し浮かせるようにしている。気さくな踊り子さんは彼の頭を優しく膝の上に乗せたりもしている。すると彼の下半身はガチャガチャピンピンになる♪

どうも二人とも、母親への甘え願望が抜けきらないように見える。しかし、他の客から見れば、彼らは単なるお触り魔である。お触り厳禁のストリップのルール違反である。

 

ちんぽ三兄弟は、この二人は妖怪ではないかと睨んでいる。彼らについて、毎日劇場に通ってくる小柄な常連の老人、こなきじじいに尋ねることにした。ちなみに、そのこなきじじいは、いつもかぶり席に座り、石のように硬くなっている。早朝からラストまでかぶり席をじっと動かない。オープン時には、にたぁーっと子供のような笑顔で笑うので、踊り子さんから可愛がられる。

こなきじじい曰く「あの二人はわしの遠い親戚じゃよ。ガチャピンが踊り子の膝の上に頭を乗せた瞬間、ずしんと重くなって驚いていただろ。あれは妖術(体重増加、岩石化)なんだ。わしも、相手におんぶすると石のように重くなる。それと同じ妖術だよ。わしは、そのことを知っているから踊り子には絶対に触らないように気を付けている。あの二人は踊り子に触りたがるところを見るとまだまだ若いんだなあ~困ったものじゃ」。

それからというもの、ちんぽ三兄弟は、彼らを「妖怪だっこちゃん」「妖怪ひざまくら」として警戒するようになった。

                                    おしまい