ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第45章 妖怪「貧乏神」とストリップ・リッチの巻

                                         

 

 ストリップわらしこと、ちん吉が顔色の悪い貧相な恰好をした奴を連れてきた。

 ちんぽ三兄弟の妖怪アンテナが激しく反応した。「おい、こいつはおまえの友人なのか?」とちん吉を問い質した。

 ちん吉は悪びれることなく「こいつは貧乏神だ!」と答えた。これに対して、ちんぽ三兄弟がいろいろ騒ぎ出した。

「たしかに貧乏神っていう妖怪は有名だ。鳥取県境港市・水木しげるロードに設置されているブロンズ像にも『貧乏神』がいるもんな。」

「テレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』に、座敷童子と貧乏神が一緒に出演していたのを観たことがあるよ。その内容では、貧乏神がけっこう良いことを言っていた記憶があるな。」

 ちん吉は、「座敷童子が住み着くとその家は裕福になると云う。一方、貧乏神が住み着くと金運が遠ざかると云われる。しかし、貧乏神はいつも金運を下げるだけでなく、金運を上げることもするんだ。悪い妖怪と決めつけるのは良くないね。」とフォローする。

 ともあれ、ちん吉の友達と聞いたからには劇場から追い出すわけにはいかない。ちんぽ三兄弟は貧乏神の様子をしばらく見ることにした。

 

 貧乏神は、劇場の様子を興味深く眺めていた。特に、お金の飛び交う様子を気にしていた。一般に、風俗やギャンブルというのは放蕩癖が付いてる客が多く、貧乏神の標的にされる。

 ストリップというのはお小遣い程度で遊べる庶民の憩いの場。入場料さえ払えば一日中だって楽しめる、すごくコストパフォーマンスのいい遊び場だ。

 最近はポラ撮影代もかかるがポラ購入を強制されるわけではない。ポラ撮影を通して踊り子と仲良くなりたくて買っているわけ。全く買わないで楽しんでいる人もたくさんいる。彼らは財布の紐が硬いんだね。みんなが節度を持って楽しんでいる。

 観客が熱狂的にお気に入りの踊り子さんにチップを渡す光景を注視した。チップの文化は本来は西洋のもので、タクシーやレストランでよく渡すシーンを見る。でも1ドル紙幣が多く日本円で100円ちょっとの程度。だから劇場で1000円のチップが飛び交うのを見て、ずいぶん景気がいいなと思ったようだ。

ストリップのチップは西洋のチップというより、日本の「おひねり」の文化を継承している。その昔、舞台が終わった際に役者に対してご祝儀としてお金を投げたのが始まりのいわゆる投げ銭。銭をそのまま裸で投げるのではなく、紙に包んでひとひねりして投げたので「おひねり」と呼ばれるようになる。だから、良かった演技に対しての心付け、祝儀と言い換えることができる。ただ最近のストリップのチップの状況は、芸に対してのものというより踊り子への単なる小遣いみたいな印象をうける。

 ともあれ、一般的にみて、チップを含めても、ストリップ劇場は節度を守って遊ぶ庶民の憩いの場であることは間違いない。

 

 貧乏神はもう少し、一人一人のお客の様子を注意深く眺めていた。お金に絡む人間ドラマがありそうだ。

 あるおじいちゃんが高価な貴金属をたくさんの踊り子にあげていた。踊り子側も嬉しいながらも怪訝にしていた。実は、その老人は末期がんの患者だった。身寄りがなく、財産を墓場に持っていくこともできず、踊り子にばら撒いていたわけだ。それも人生だね。

 ある中年男性は若い踊り子に夢中になり、毎日のように通っては、彼女に高価なプレゼントを与えまくっていた。最初のうちはプレゼントを喜び感謝していた彼女も次第に貰うのが当たり前になり金の亡者になる。終いにはそのおじさんは家族も仕事も失い、好きな踊り子にも見捨てられた。色呆けして貧乏神にとりつかれてしまった悲しいドラマである。

 

 ある若者が、ストリップにはまり毎日のように劇場に入り浸っていた。彼の口癖は「あー金が無い!金が無い!」。ちゃんと仕事をして、余暇として劇場に来ているうちは良かったが、いつしか仕事を辞めてしまった。

 貧乏神は言った。「ストリップというのは、しっかり仕事をして、自分の稼いだお金で楽しむからいいんだ。仕事をしない奴は観る資格がない。お金がないなら劇場に来なければいい。それだけの話だ。」「年金生活者もその範囲で楽しめばいい。」「ストリップは庶民の遊びであるからこそ、とにかく自分の身の丈に合った節度ある遊びをしなければならないものなのじゃ。」

 更に、貧乏神はお金だけでなく精神面を強く諫めた。

「お金がない、余裕がない、時間がないなど、とにかく『~がない』というマイナス思考の言葉を口癖にしている人には貧乏神が憑きやすい。」

「また、逆恨みする人ような人は貧乏神に憑かれやすい。踊り子に相手にされなかったからとか、自分は劇場に行けないのに毎日通う常連客が羨ましいなどといった理由でネットに悪口を書き込む輩が多い。こういう奴は絶対に貧乏神が許さない。」

「往々にして身の回りに、毒を吐く人、人を褒めない人、いつも人を見下すような人がいたら貧乏神が取り付いている。そもそも踊り子だって、こんな奴は相手にしない。とにかく、こういう輩には近づかないことだな。」

 

 ちんぽ三兄弟が「おいおい、貧乏神も本当にいいことを言っているな。やっぱり名前のとおり神様かもしれないな。」と感心していた。

 ストリップわらしのちん吉くんが言う。「要は、ストリップではふつうにしていればいいんだよ。庶民の遊びなんだから無理はせず楽しむ。そうすれば、ストリップ・リッチな気分になれる。お金をたくさん持っていなくても、ストリップでみんながハッピーになれるんだ。それが一番大切なことなんだよ。」

                                    おしまい