ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第36章 コロナ対策 妖怪アマビエの巻

                                 ~KAERAさん&春野いちじくさん(TS所属)に捧げる~

 

 

 新型コロナウイルスがストリップ業界にも暗い影を落とし始めた。

 最初は営業時間短縮から始まった。次に、都知事の要請などで短期間の休館を実施。ストリップ客の立場としても時に難民のごとく振り回されるわけだが、とりわけ踊り子さんの方のダメージは大きい。時間短縮や休館によりギャラがカットされるわけだから死活問題である。

 ステージに立つと、コロナのことをなにも考えていない客を目の当たりにする。「あんたたち、こんな状況でよくストリップなんか観てられるわね!」

マスクもしないで平然と観劇している客もいる。正直、ポラ撮影なんてやってられない。お客は手の消毒をやっているのか。怖くて握手なんかできない。飛沫が飛ぶから話したくない。熱のある奴までいるではないか・・・あーダメダメダメー!!!

 しかし、踊り子はステージの上で踊ってなんぼの世界。私たちはステージの上ではマスクはできない。マスクどころか、パンツだって付けられないのよ。

コロナは密集を避ける必要があるが、お客が入らないと困るというジレンマがある。

踊り子はいろんなストレスや覚悟をもって仕事を続けている。

 

 そんな中、ある踊り子が異様な格好でステージに登場した。踊り子の名前は伏せてある。

 今SNSで話題になっている妖怪アマビエのコスプレである。長い髪に、菱形の目と耳、鳥のような口ばし、身体は鱗でおおわれ、足は三本。

 彼女はきっと「もうコロナは許せない!」と爆発したのであろう。アマビエを‘女冷え’と置き換えてストリップの危機を主張しているようだ。

 

 ちんぽ三兄弟は物珍し気にステージの妖怪アマビエを眺めていた。

 ずいぶん凝った衣装だな、きっと特注だな。こんなに衣装にこだわっているのだから、きっとKAERAちゃんがコスプレしているんじゃないかな。いや、いつもユニークなステージをやる春野いちじくちゃんかもしれないな。・・・

 早く衣装を脱いでもらってヌードを眺めたいなぁ~

 そんなことを考えながら、アマビエの目をじーっと見る。すると鋭い刺すような視線が返ってきて、ちんぽ三兄弟の背筋がぞっとした。

「もしかしたら、これは本物の妖怪かもしれない・・・」そう思ったときには彼らの足は釘付けになっていて動けなかった。

 それでも、ちんぽ三兄弟は「アマビエは三本足だから、お股は二つあるのかな。いったいあそこの形はどうなっているんだろうか?」とよからぬことを考えた。

 ちんぽ三兄弟のエロエロ視線はアマビエの怖い視線を凌駕した。するとアマビエは頬を赤らめ恥ずかしそうにしてステージからふっと姿を消した。

 ちんぽ三兄弟たちはステージの周りをきょろきょろ見渡した。アマビエはどこにも見当たらない。「きっと妖怪アマビエが、俺たちストリップファンに踊り子さんとストリップのことを守ってくれるように警告しに現れたんだな」と納得した。

 

 

【追記】

 事後的になったが、妖怪アマビエのことを説明しよう。

新型コロナウイルス感染拡大を受け、江戸時代の瓦版に掲載された半人半魚の妖怪「アマビエ」の絵を会員制交流サイト(SNS)に投稿する人が相次いでいる。「病がはやったら私の写し絵を人々に見せよ」と告げて海に消えたとの言い伝えがあり、終息への願いが広がりを見せている。

 長い髪にくちばし、うろこに覆われた胴体。3月に入り、ツイッター上には、瓦版のアマビエを現代風にアレンジした絵がじわじわと増えた。粘土細工や刺しゅう、切り絵、漫画などさまざまな作品の写真も「疫病退散」「早く終息しますように」などの言葉を添えて投稿され続けている。(以上、4/2付け東京新聞より)

 

「アマビエ」は、日本で昔から、天災の前などに現れたとされる妖怪です。

江戸時代、1846年に肥後(現在の熊本)に現れたという時の様子は、かわら版となり、江戸にもその様子は伝えられ、挿絵入りで紹介されました。そのときの資料が、現在も京都大学附属図書館に残っており、今回のコロナの件でアマビエが話題になる中、Twitterで京大附属図書館自らその挿絵を置いていくとツイートしたことも話題となりました。

資料によると、毎夜、海中に光る物体が出没していたため、役人が赴いたところ、それが姿を現した。その者は、役人に対して「私は海中に住むアマビエと申す者なり」と名乗り、「当年より6ヶ年の諸国で豊作が続くが疫病も流行する。私の姿を描いた絵を人々に早々に見せよ」と予言めいたことを告げ、海の中へと帰って行った。というものです。

その姿形は、人魚のようでもあり、ウロコがある胴体、足は無く尾びれがあり、長い髪をして目は赤くひし形、鳥のような口ばしのような口があり、耳は人間のようと言われています。

実は、この妖怪が「アマビエ」として出現したのは、1846年、皇女和宮が誕生した年でありますが、その他にも、九州地方を中心として、新潟や長野などでも出現したという記録があるようで、出現したのちに疫病が流行るので、自分の姿を書き写して人に見せるように言う点など共通点が見受けられます。

その時の名称は「アマビコ」で、「アマビエ」も元々はアマビヱと書いていたので、「アマビコ」の「コ」を書き写す際に歴史的仮名遣いの「ヱ」に間違えたのかもしれないという説があるようです。

また、その姿から「アマビエ」は深海魚の「リュウグウノツカイ」ではないかともいわれているようです。(以上、3/26付けネット記事より)

 

  コロナ騒動で気が滅入る中、神頼みならぬ‘妖怪頼み’といったところだろう。

 妖怪アマビエは妖怪好きには知られているが一般には知られていない妖怪である。なお、人気アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』にも『地獄先生ぬ~べ~』にも登場している。

 一般に妖怪というのは人間の怨念や情念から発生したものと思いがちだが、そもそも妖怪は神様が化けたものだ。日本には八百万(やおろず)の神がいて、大きいものでは山にも川にもたとえられ、小さいものでは家具や小道具にまで神はいて、同時にそこに妖怪もいる。これらの妖怪は、極めて日本の風土に根付いており、人間は自然と共生していかなければ生きていけないことを意味している。

 人類は自然から恵みを受けて生きている。ところが人類が傲慢になると自然は牙をむきだして襲いかかる。地震、津波、台風、日照り、竜巻、雷など・・・

 人間は馬鹿だから戦争をしてお互いに殺し合うことまでするが、これまで人類が被った死亡者数では戦争による数はそれほど大きくなく、自然災害の破壊力は桁違いに大きい。そして自然災害で最も脅威なのはウイルス感染なのである。

 

 治療薬のない昔は、人は神頼みするしかなかった。妖怪は人を怖がらせ時に襲うこともあるが、それは神として人間に警告を与えることとの裏表でもある。つまり、神は表面から人間を救おうとし、妖怪は裏面から人間を救おうとしているのだ。

 妖怪アマビエの警告は、こうして現在まで語り継がれた。今回のコロナ騒動で、そのご利益にすがろうとする人々は昔と全く変わらない。

 我々人間はもっと謙虚に妖怪の声に耳を傾けるべきだ。ホラー映画も単に怖がるのではなく、妖怪が訴えている真意をもっと味わうべき。最近はアニメの世界でも、水木しげる作品「ゲゲゲの鬼太郎」を先駆として、「地獄先生ぬ~べ~」「妖怪ウオッチ」など子供たちが妖怪に親しめるものが多く出てきていて、とてもいいことだと思う。とくに表現者を目指す人は妖怪により霊感を高めなければならない。

 かくいう本作品「ちんぽ三兄弟」シリーズでもただいま妖怪ブームになっている。笑

 それにしても、この「アマビエチャレンジ」「アマビエ祭り」なる盛り上がりがお絵描きを伴うところが面白いな。ますます踊り子さんにお絵描きをおねだりしたくなる。

 

                                    おしまい