今回は、ロックの新人、水沢美波さんについて「演劇とストリップ」と題して語ります。

 

 

 

まずは、彼女のポラ館初の出し物「Ophelia(オフィーリア)」を紹介する。

最初に、薄いベージュ(肌色)の質素な衣装姿で登場。肩までの黒いストレートヘアが彼女の若々しい清潔感あふれる清楚さの象徴。左側に白い髪飾りを付けている。白いシューズを履いて、華麗にかつ軽快に踊る。

感情を込めて踊っているのが指先の繊細な動きから分かる。バレエの資質があるのかなと思って彼女に尋ねたら、踊りは浅草に出演してから練習を始めたとのこと。おそらく演劇で鍛えられた賜物だろう。彼女のダンスセンスの良さを観ていて、浅草でデビューしたのが納得できた。

一回目の最初にステージに現れたときは、かなり緊張しているのが表情から伝わってきた。新人だから当然である。そう思っていたら、出し物の内容から、そういうシリアスな表情なのだと分かってきた。彼女の真剣な目がそう語っていた。

次の場面が圧巻。たくさんの花を抱えながら舞台の中央に駆け込む。先ほどの衣装のスカート部分が泥で汚れたようになっている。そして盆周りの客に向かって語り掛ける。

ひとつひとつの花を掲げ、ローズマリーの花言葉は「記憶」、パンジーの花言葉は「想い」・・・と説明しながら、最後に、ひなぎくを差し出す。本当は、すみれの花にしたかったのだけど、お父さんが亡くなったときに枯れてしまったの。お父さんは立派な最後だった・・・という話をする。

まさに、演劇の台詞である。これまでのストリップには言葉はなく、すべて身体で表現するものと思っていたので、台詞の登場は驚きであり新鮮だった。

最後に、場面が変わって、「アヴェマリア」の曲にのって登場。きれいな花の冠を頭にのせ、青いベールを身体に巻き付けて、裸足で演技し、そしてベッドショーへ。音響になぜか水の音が聞こえてくる。

ベッドでは、若くて色白で、B85 W59 H85という均整のとれたプロポーション、きれいなヌードにうっとり♡ ストリップファンとしては、これだけで涎垂の喜びである。

 

最初に述べたが、これだけ普通のお嬢さんがなぜストリップの世界に飛び込んで、お客さんの目の前で堂々とヌードを披露できるのか。それは演劇の延長にあるからだろう。たくさんの観客の前で堂々と演じ台詞が言える。表現のひとつと思えば、ヌードを披露することに抵抗感はないのだろうと察せられる。我々ストリップファンとしては、こんな可愛い娘のストリップを拝めるだけでファン冥利に尽きる。

ただ、演劇の世界から来たために、これまでの踊り子とタイプが違う。いや、次元が違うと言ったほうがいい。これまでの新人さんは、笑顔を振りまいて踊り観客を楽しませる。ところが美波さんは、シリアスな表情と演技そして台詞でもって観客に迫る。観ている側としては、これまでのストリップに無い新鮮味があると同時に、違和感を覚える。それは彼女がステージでなにを演じているのか理解できないジレンマ。なかなか彼女の世界に浸れないのである。特に私はステージ感想を書きたいと思っているため、それを上手に表現できずに苦悶し出した。演劇を通しての表現者としての美波さんと、それを物書きとして表したい表現者としての私の葛藤。私は彼女のステージに囚われの身となった。目の前に大きな壁を感じるも、それを乗り越えて美波ワールドに飛び込みたい願望に駆られる。それができないと彼女の本当のファンにはなれないと感じられた。私は彼女のシリアスな表情に負けないほど、真剣な面持ちで彼女のステージを食い入るように眺めた。

 

ストリップと演劇・・・

おそらく、この二つには共通点と相違点があるのだろう。だからこそ、私は美波さんのステージにたまらない新鮮味と違和感を覚えたのだろう。

そして、この違う二つの世界を融合させ調和させる試みを美波さんはしているんだ!

既に、ストリップ界には、TSミュージックの鏡乃有栖さんと渋谷道劇の一宮紗頼さんが演劇の世界から飛び込んで、いまだに二つの草鞋を履いている。美波さんは今は演劇をやっていないと話してくれた。これからストリップに専念してくれるものと思う。彼女の世界を受け入れて、微力ながらアドバイスしていきたいと願う。そして、一緒に素敵なストリップを楽しみたい!!

これからファンとして応援してあげたいと心から思った。

 

平成26年2月                           仙台ロックにて   

 

 

〔参考〕   

 初日に終日、美波さんのステージを観劇して、すぐにホテルで「Ophelia(オフィーリア)」について調べてみた。 

 「Ophelia」は、あの有名なシェイクピアの四大悲劇のひとつ「ハムレット」に登場する美少女のことだった。常識的な演劇の知識がなくて恥ずかしい限りである。

 インターネットで調べたことをそのまま掲載させて頂く。  

 

 オフィーリアは、主人公であるデンマークの王子ハムレットの恋人であり、国王の顧問官であるボローニアスの娘でした。

 ハムレットは国王である父を突然に亡くし、王位は父の弟であるクローディアスが継ぎ、ハムレットの母であるガートルードと結婚しました。

 王位も母も叔父に奪われた形のハムレットの前に、父である先王の亡霊が現れ、弟に毒殺されたことを告げます。そのことを確かめるために、ハムレットは気の狂ったふりをします。何も知らないオフィーリアは、ハムレットに冷たくされ、涙にくれます。

 宮廷で劇が催されます。劇の内容はハムレットの計画で、父の亡霊に聞いたまま、その殺害を再現したものでした。劇を見るクローディアスはただならぬ様子で、結局最後まで見続けることができず去っていき、ハムレットは父の殺害が真実だと確信しました。

 そして父を殺害した男と再婚した母ガートルードを責めます。その部屋には壁掛けに隠れた顧問官ボローニアスがいました。会話を盗み聞きされたと、ハムレットは相手も確かめず切り付け、ボローニアスは死にました。

 父ボローニアスの死を聞き、オフィーリアは悲しみのあまり、ついに正気を失います。そして、花をいっぱい抱えながら、宮廷や野原をふらふらと彷徨います。

 そして間もなく、オフィーリアは川で溺れ、死んでしまいます。誤って落ちたのか、それとも自殺か、その様子は王妃ガートルードの言葉によって語られます。

 

 私は、この哀れなオフィーリアの物語を知り、漸く美波さんのステージが理解できました。改めて美波さんの凄さを認識できましたよ。

 私のような無知な観客に、いかにステージの内容をうまく理解させ、美波ワールドに引き込むかがこれからの美波さんの課題でしょうね。

〔事後談〕

 先ほどのハムレットの物語を読むことで、二日目の美波さんのステージは全く違う景色に見えてきた。

 最初の場面で、長い時間をかけ、美波さんがいろんな表情や演技をするが、そのひとつひとつに物語の意味があることが分かってきた。初日は何も分からずに眺めていた。へたすると退屈に感じられるこの場面が最も味わい深いものだと漸く理解できた。

 そして、次に、泥のついたスカートはまさに野原を彷徨って汚れたもの。正気を失ったオフィーリアの悲壮感が漂う。

 最後の衣装、青いベールはまさしく川で溺れることを象徴している。調べてみたら、哀れなオフェーリアの物語は、多くの画家の心を動かし、絵の題材になっている。私もいくつかの絵を見たことがあった。

 オフィーリアの物語を知ることで、美波さんのステージは改めてじーんとした感動を与えてくれた。

 

 私のレポートを読んで、次のようなコメントを頂いた。「みなみのレポートいっぱい書いてくれてありがとう。言葉で伝えてもらえるのって嬉しいですね。私は、ストリップを通して、この演目でハムレットや演劇、シェイクスピアの台詞の魅力が伝わってくれたらいいなぁって思っていたので、とっても嬉しいです。」

 やはり、美波さんはストリップのステージを通して、観客に演劇やシェイクスピアの台詞の魅力を伝えたがっている。美波さんがいかに伝えるかも大事だが、観客自身も美波さんのステージを理解するためにオフィーリアの物語を知らなければならない。そうすることで私と同じ感動を味わえる。

 演劇やシェイクスピアに関心のある方であれば、自分のステージを理解してもらうためにポストカードなどに物語のあらすじを記載して渡したら効果的かもしれないね。ブログで紹介するのも手だね。いろいろ方法はありそう。

 問題は、演劇やシェイクスピアに関心のない人たちを、どう美波ファンにしていくか。これは美波さん自身の課題として取り組んでいく必要がある。衣装、小道具、曲、台詞、振付などなど、物語のストーリーをすーっと心に届けるのである。ストーリーものを得意とするお姐さんたちは実際に上手に表現している。これを上手く会得していったらいい。

 

 美波さんを初めて見たときに誰かに似ているなぁとずっと考えていて、あっ! 一昨年に引退した伝説の踊り子、篠崎ひめさん(大阪東洋ショー所属)だ!と気付いた。ひめさんはデビューから引退までファンの心を捉えて離さなかった。美波さんもひめさんを目標に是非とも頑張ってほしい。

 美波さんの瞳はとても澄んでいて、眩しいくらいにキラキラしている。きっと先々のことを見据えているんだろうな。どんな作品で、美波ワールドを創り上げ、我々ファンを魅了してくれるのかと考えると、期待でウキウキになる。

 必ず応援するから、頑張ってほしいと心から願う。

 

 

 水沢美波さんのシェークスピア「ハムレット」をベースにした高尚な演劇ストリップを拝見し、それに見合う貴品ある童話を創り上げようと思っていたのだが、仙台ロックのラウンジで飼っているハムスターを見ているうちに、こんなストーリーが勝手に頭の中を駆け巡った。この童話は殆ど実話です。

 

 

『ハムスターのハムレットくん』 

~水沢美波さんの演目「オフェーリア」を記念して~

 

仙台ロックには、いつも小難しい顔をしているが、心優しい従業員のカワさんがいる。えっ! どのへんが心優しいかって!? 彼は動物好きなんですよ。動物好きに悪い人はいないって言うでしょ。

 

そのカワさんが、ゼニガメを買ってきた。大きな水槽だ。

カワさんは、カメが水の中から浮かんでこないと水が多すぎるからかなぁと心配したり、居心地が悪いかなぁと思っては岩場や藻など色んな小道具を買い増している。そのうち、一匹じゃかわいそうだからと番(つが)いにした。

 毎日、水槽の掃除を日課にして、カメを可愛がっていた。

 ある日、大変な事件が起こる。

 仙台の冬は寒いので、仙台ロックのラウンジには石油ストーブがあり、その上に置かれたヤカンの口から湯気が出ていた。ある酔っ払いが「カメさんも寒いだろうから温めてあげる」と言って、ヤカンの熱湯をカメの水槽に注いだ。すぐにカメは死んでしまった。

‘カメ殺人事件’・・・いや人ではないから「殺カメ事件」か・・・いずれにせよ、世にも惨たらしい事件である。

 従業員のカワさんは「人殺し~ いや、カメ殺し~!」と叫び「生類憐みの令(?)で訴えてやる~!」と息巻いていた。

 それからしばらくの間、心優しいカワさんは「もうカメは飼えない」と意気消沈していた。

 

その後、カワさんは一匹のハムスターを買ってきた。カメの水槽から一回り大きいカゴ (ケース)とともに。

ハムスターなので、ハムレットと名付けられた。

カワさんは一生懸命にエサを買ってきて与えた。ハムスターはひまわりの種が大好物。

ハムレットはあまり動き回らずに、寝床にくるまっていることが多かった。運動しないためか、どんどん太っていった。買ってきたときより、縦横に二倍以上大きくなった。

「そんなにぼくのことを太らせてどうするつもりだろう」とハムレットはふと思う。

 ラウンジに居る、もう一人の従業員ブッチャー(屠殺人)の目がキラリ☆

 ハムレットは少し怖くなってきた。それに輪をかけて、従業員やお客さんが前に飼っていたゼニガメの悲惨な最期を話すのを耳にしてしまった。

そのため、ハムレットは完全に巣から出れなくなってしまった。

 

 心優しいカワさんは、そんなハムレットを心配し、元気にさせようと恋人を与えてくれた。彼女の名前はオフェーリア。

 ハムレットは彼女に一目ぼれした。

 しかし、ハムレットは太り過ぎていたため、彼女に全く相手にされなかった。その様子を見ていた心優しいカワさんは、ハムレットに応援グッズを差し入れた。それはお花だった。ローズマリー、パンジー、ヘンルーダ、ひなぎく、すみれと次々に、彼女にプレゼントした。

 しかし、オフェーリアは花に見向きもしなかった。

 オフェーリアに相手にされなかったハムレットは、気がふれたようになり、捨てられた花を集めて花の冠にしてかぶり、カゴから脱出した。長い間、野原を駆け回った後、川に飛び込んだ。しかし、ハムレットは死にきれなかった。そして、ずぶ濡れの姿で仙台ロックに戻った。

 心優しいカワさんは、ハムレットの姿を見つけて心から喜んだ。そして、カゴの中に戻した。カゴの中のオフェーリアと目が合った。一瞬気まずく思ったが、彼女の彼を見る目付きが違っている。最初は同情の眼差しかと思ったら、そうではない。

ハムレットは恋患いして野原を駆け回ったため痩せてスマートになっていたのだ。オフェーリアは別人を見るようにハムレットに惚れ直したのだった。

 それから、ハムレットとオフェーリアは幸せに過ごしました。とさ

 

                                   おしまい