今回は突然ですが「クマのプーさん」についてお話します。
いつもはストリップの話ばかりしているので急に「クマのプーさん」の話というのも意外に思われるかもしれませんね。ただエッセイを見ていただければ分かるように、私は一時童話に凝って趣味でいろいろ研究していました。特に宮沢賢治と「クマのプーさん」にはまり、「クマのプーさん」については本を書くつもりで二年間ほど原稿を書き溜めていました。出版社にもっていったら自費出版を薦められましたが、お金が無くいまだ実現していませんが・・・。
さて、女性の方はクマのぬいぐるみが好きですよね。代表はテディ・ベアです。
なぜテディ・ベアというか知っていますか? テディとは第一次世界大戦のときのアメリカ大統領ルーズベルトの愛称です。彼がハンティングに行ったとき、熊があまりに可愛くみえて撃つことができなかったというエピソードからきています。その話を聞いたドイツの車椅子の女性がクマのぬいぐるみを作り、叔父の工場で販売したところ爆発的に売れました。
そのクマのぬいぐるみのひとつが、イギリスのクリストファー・ロビンという幼い男の子の部屋にありました。彼のお父さんA・A・ミルンはそのクマを主人公に童話を書きました。それが「クマのプーさん」です。ミルンさんは出版社に勤める記者であり、劇作家でもありました。その本は爆発的に売れ、その本のお陰でミルンは有名作家となったわけです。
プー・シリーズは、第一作「クマのプーさん」と第二作「プー横丁にたった家」だけで、その中にそれぞれ10話があるので、合計20話しかありません。第一作目の最初の一二話に、あの有名なシーンである、真っ黒い雲になったつもりで風船に乗り蜂蜜を取りに行くプーさん、蜂蜜を食べ過ぎてウサギの穴から抜けられなくなったプーさんが描かれています。それ以外の話はあまり知られていません。ディズニー映画ではこの二つのシーンは取り上げましたが、それ以外は取り上げなかったので、今ビデオなどで見られているのはディズニー独自の作品です。
プーの絵を描いたのはミルンと同じ出版社に勤めるシェパード。彼の描いたプーさんは今のディズニーのプーさんとは少し趣が違います。ディズニーではプーさんの目はくりくりと丸く描いていますが、原作は単なる点でした。しかも、鼻先の方に小さくふたつちょこんと描かれていました。原作でも話が進むにつれ目の位置がどんどん鼻先に進んでいるのが微妙に分かります。また原作では赤いベストも着ていません。特筆すべきはクリストファー・ロビンが幼い息子そっくりに描かれていたことです。当時の写真を見るとまさに瓜二つです。
シェパードはミルンが亡くなった後に、ディズニーにプーの映像権を売りました。私のようなプー・ファンにはディズニーのプーさんは偽物に見えてしまいますが、これはいたし方ありませんね。
さて、面白い話があります。
父ミルンがプー作品を発表し売れ出すと、息子ロビンは大喜びしました。なにせ自分が主人公なのですから。ロビンの子供部屋にあったぬいぐるみは、プー以外に、コブタのピグレット、ロバのイーヨー、カンガルー親子のカンガとルーも登場人物として描かれました。これらはアメリカの博物館に今も現存します。トラのトラーやふくろうのオウル、ウサギなどは想像上で物語に登場しています。
最初のうちは喜んでいたロビンですが、どこに行ってもクマのプーのロビンと言われ出します。物心が付きだす小学校高学年から中学生ころにはロビンはそう言われるのがすごく嫌になっていきます。あまりにもそっくりに描きすぎたせいもあるのでしょうね。
それを感じた父ミルンはロビンの教育上よろしくないと考え、当時すごく人気があったにもかかわらず、プー作品は二度と書かなくなりました。プー作品が二冊、20話しかないのはそのためです。プー・ファンにとっては本当に残念なことです。
さて、このプー作品はそれからのロビンの人生を大きく狂わせます。学校を卒業したロビンはお父さんと同じ作家を目指します。ところが全く売れません。その間、仕事も転々としました。そのうち、自分を題材に有名になった父を逆恨みするようになります。親子の確執はミルンが死ぬまで続きました。ロビンのエッセイを読みましたが、父への恨みを赤裸々に書いています。彼のエッセイを読んでロビンもそれなりの文章家であったことは分かります。ただ全く売れなかったので、最終的には本屋になりました。その本屋の一コーナーにプー作品が置かれたようですが、周囲の人は父親のお陰で本屋が出せたと噂していましたし、ロビンはそう言われるのがまた辛かったようです。子供を題材にしたほのぼのとしたプー作品にはこうした隠れた親子の確執があったというのには驚かされました。
ミルンの他の作品やいろんなプー作品の書物を読み漁り、かなりの原稿を書き溜めたので、いずれ本にして出版したいなぁというのが私の長年の密やかな夢なんです。
今回は全くストリップに関係ない話をしてしまいました。退屈してしまったら、お許しください。