「コクリコ坂から」がやってくる  

                    ~キャッチコピー「上を向いて歩こう」~

 

 

森のストリップ劇場に、映画「コクリコ坂から」の面々がやって来ることになりました。主人公の松崎海は猛勉強の末、本人の希望通り医者になるべく医学部の大学にめでたく合格しました。彼氏の風間俊も、高校卒業後は水産学部のある大学に入り最終的に父親と同じく海上の仕事に就く予定です。二人ともステキな青春を謳歌しながら人生の目標に向かって懸命に生きていました。今回は、二人の合格祝いを兼ねて、森のストリップ劇場にやってきたのでした。一緒に、海の妹の空と弟の陸も同行しました。

彼らがやってくることが事前に分かっていたカメさんは、映画「コクリコ坂から」を観て勉強し、劇場側と相談して歓迎の準備をしていました。

それが劇場の屋根の上に国際信号旗を掲げることでした。旗の意味は大歓迎。しかも汽笛の音まで流しました。海と俊は劇場側の心遣いにとても感激していました。

 

海と俊のエスコート役として、カメさんとうさぎちゃんが付きました。

カメさんは映画の感想として次のような話をしました。

「ボクは二人の旗のやりとりに感銘したんだ。海さんは、小さい頃から亡くなった父親に戻ってきてほしくて‘航海の安全を祈る’という意味の信号旗を毎朝外に上げる。それに対して、俊くんが海に浮かんだボートの上から‘ありがとう’の意味の旗を返している。しかし、俊くんの旗を海さんは気付いていない。海さんからは見えなかったんだな。それを二階に下宿していた画学生が見ていて、その風景を絵に描いていた。海さんがその絵を通して気づくというシチュエーションも素敵でした。」

うさぎちゃんが付け加えました。

「また、俊さんが毎朝旗を上げている海さんのことを想い、校内新聞の週刊カルチュラタンに『少女よ君は旗をあげる なぜ』という詩にして掲載していましたね。俊さんが先に海さんのことを想っていたんですね。私、この詩にズキュンときました。

 そして、最後の方で、血のつながった兄ではないかと思いながらも、俊さんに向かって『私が毎日旗をあげてお父さんを呼んでいたから、お父さんが自分の代わりに風間さんを贈ってくれたんだと思うことにしたの』『私、風間さんが好き』と言う場面にやられました。はっきりと自己主張できる海さんがとても眩しく感じました。」

 カメさんが更に言う。「今の人たちは、簡単に電話やメールで直接自分の意思を伝えてしまう。しかし、昔の人は自分の想いを旗や詩に託した。汽笛の音にも心を震わせた。風情というか、それがとても趣きがあるなぁ。」

 

 カメさんは話を変えた。「この映画の柱は二つあり、お二人の恋愛話と、もうひとつ文化部の活動をする学生たちの巣窟であるカルチュラタンの存続運動でした。この古くなった建物を取り壊すことに最初は八割の学生が賛同する。しかし、歴史を残すべきと主張する俊さん達の活動、そしてカルチュラタンを大掃除しようと提案した海さんの活躍などで存続が決まった。もともと反対の多数を占めていた女性陣がこの建物の大掃除に参加することで、この建物の意味を理解し、存続する方に意見を変えたことが大きい。女性の力って凄いと思った。

 同じように、今ストリップは存続の危機に立っている。ストリップは単なる男性のエロスの捌け口と考えられてきたところに、最近はストリップ女子がどんどん進出してきている。そして、ストリップの魅力や真意を理解するようになってきた。ボクはこの動きが素晴らしいと感じているんだ。ストリップの未来は彼女たちの力にかかっているかもしれない。」

 海と俊は、カメさんやうさぎちゃんの話を嬉しそうに聞いていた。

 

 横で聞いていたゴリくんが「そういえば、カメくんはいつも手紙や詩や絵画にして、うさぎちゃんにプレゼントしている。早い話が『ぼくはうさぎちゃんが好きだ!』ということだよね。回りくどいことをしないで、はっきりそう言ったらどうなの?」と口を挟んできた。

「おまえは風情もなにもない奴だな。それがいいんだよ。」とシマリスくんがゴリくんを一喝した。カメさんはにやりと笑っていた。

「うさぎちゃんも、それでいいのかぁ~」とゴリくんは呟いた。

 

「コクリコ坂から」の面々が帰った翌朝、劇場にやってきたみんなは上を向いて驚いた。

 劇場の屋根いっぱいに、紐で吊るされたピンクのハンカチが風になびいていた。「これは映画『幸せの黄色いハンカチ』をイメージしているなー。うさぎちゃんの強い意志の表れだー!」とシマリスくんが叫んだ。

 ときには上を向いて歩くことも必要だね。(笑)

 

 劇場の周りにはヒナゲシの花が咲き乱れていた。コクリコというのはフランス語でヒナゲシを意味する。花言葉は「いたわる、思いやり」という。

 

                                   おしまい