今回は、DX歌舞伎の踊り子・葉月凛さんについて、H30年お正月のDX歌舞伎公演の模様を、演目「釣りキチ凜平」を題材に、「釣りとストリップ」という題名で語ります。

 

 

 

 

この作品「釣りキチ凜平」は昨年九月頃に初出しされたもの。凜さんが釣りキチなのは彼女から以前ポラ時に頂いたニュースペーパーで知っていた。今回、その自分の趣味を見事に演目に昇華させたことに感動した。またアニメ好きの私の童心に火が点いた。小さい頃、少年マガジンを愛読していたので「釣りキチ三平」は知っていた。ただ子供時分は釣りに興味がなかったので漫画そのものにはのめり込まなかった。大人になって、周りに釣りキチが多く、釣りの楽しさに興味を抱くようになる。男性の休日はゴルフが圧倒的に多いが、二番目は釣りだろう。何度も誘われたが残念ながら今のところ実現していない。どうしても足がストリップの方に行ってしまうので(笑)。

今回、釣りキチ達からの話や漫画「釣りキチ三平」を再読したことを踏まえて、観劇レポートと童話を仕上げてみた。

 

まずは、葉月凛さんの演目「釣りキチ凜平」を紹介する。

最初の衣装がインパクト十分。大漁旗をイメージした着物がいい。上半身は長い振袖の付いた法被(はっぴ)形。青地に賑やかな魚の絵が描かれる。背中と片振袖に祝大漁という文字が大きく書いてある。面白いのは両振袖部分に‘でらかぶ丸’‘葉月丸’とある。首のところにある赤い魚の模型がワンポイント。下半身は膝丈のスカート状になっていて、大漁旗と合わせて鮮やかな赤・青・黄色の生地が交互に並ぶ。足元は青いストッキング、青いズックを履く。頭には青と白のリボンで髪をひとつ結び。

最近の女性アイドルグループの曲に乗って賑やかに踊る。今回、曲名は聞いていないが、全て最近のアイドル曲で釣りや魚に関するものばかり並べている。よく集めたね~。

次に、着替えて軽装になる。黄色いTシャツの胸元に‘釣りキチ凜平’と書いてある。きらきらした銀のショートパンツ。青いストッキングをオレンジの紐でクロス。足元はきらきらした青・オレンジ斑なズック。水色のリュックを背負って、釣り気分で踊る。長い釣り竿を出して先端に魚を描いた紙を付ける。その紙二枚を客に配る。

一旦袖に入り、今度は全裸で登場。手に大きなスケッチブックを持つ。その中には魚の絵・写真がびっしり。人気タレントのさかなクン流の解説が始まる。例えば「高級魚の鯛は昔から養殖されている。天然と養殖の区別は?」答えは「養殖は鼻の穴がひとつ。天然は二つ。」等

最後に青いネグリジェでベッドショーへ。

 

これまで、人魚姫のステージはたくさん拝見したが、釣りや魚をテーマにした演目は初めて拝見した。

ストリップと釣りを絡ませるのは極めて斬新である。

面白いので「ストリップと釣り」について徒然に考えてみた。

私の知っている釣りキチが言うには「釣りというのは魚との長―い会話だ」という。彼の言う釣りの魅力を少し紹介する。

まず、山間部の渓流釣りにしろ、海上の磯釣りにせよ、喧噪の日常生活から解放されて、大自然の中に自分を置くことが何よりも気分がいい。空気がうまい。魚が釣れようが釣れまいが構わない。それだけで十分気持ちがいいと言う。

とは言いながら、当然に魚が釣れた方が楽しいので、気持ちは釣りに向かう。釣り道具を揃えるだけでも楽しい。それを持って、どこに向かうかで毎回心がときめく。朝早くから出かけるが早起きが楽しい。

魚を釣るために、一匹一匹の魚と会話をすることが大切。まずは魚がいるところを見つけて、そこに釣り道具をキャスティングして、餌をあげて釣り上げる。釣れるまでじっくり待つ。焦らず、のんびり待つ。それが至福の時間。また渓流釣りでは、あたりで釣ることも大事だね。小さい魚は川に返す。だから釣り針を飲み込まれないように、唇に掛けて取る。くるりと逆さに返しの付いていない釣り針で釣るわけだから、釣り針がすっと外れて逃げられることもある。そんなとき、自分の腕のなさを素直に認めて、逃げる魚はどうぞ逃げて下さいと言う。私を釣ってもいいですよ!という魚だけ釣らしてもらい、それを持ち帰り、大事に食べる。だから美味しいと言う。

釣りのことを話す釣りキチの目は輝いている。

 

私がストリップのことを話すときも、きっと目が輝いていると思う。

今日はどこの劇場に行こうかな!と迷う。朝早く起きて、駅で切符を買うときに行き先が決まらずに困ったことが何度もある。そんなときが一番楽しい。

劇場に着いて場所取りをしたら、踊り子に渡す手紙を準備する。私の場合、これが観劇のキャスティングに当たり楽しいひとときになる。観劇はのんびり楽しむ。もちろん拍手はする。ヌードを有難く見せて頂く。そこは無の境地。だからストレスが無くなる。

人間は魚ではないから釣り上げるという表現はしないが、ストリップであえて使わせてもらうと次のようになる。踊り子は自分の魅力を餌にして客を釣り上げてポラを買わせる。またスト客は踊り子に気に入ってもらうためにポラを買い、プレゼントやチップを餌にして踊り子を釣り上げる。ストリップの場合、会話は殆どないが、そうしたやり取りの中に、踊り子と客の会話がある。私の場合はたくさん会話がしたくて手紙を使う。

 

考えてみれば、釣りもストリップも、日常のストレスから解放されたいという現実逃避。釣りは大自然の中に身を置くが、ストリップは自然のままの裸体の前に身を置く。男にとって最も美しいと感じる女体を前にして心を開放する。

釣りとストリップにはすごく共通したものを感じる。

 

 

平成30年1月                             DX歌舞伎にて

 

 

 

【参考】釣りキチ三平

 

『釣りキチ三平』(つりキチさんぺい)は、矢口高雄による日本の漫画作品。また、それを原作としたアニメ作品。1973年から10年間、『週刊少年マガジン』(講談社)に連載され、当時の看板作品のひとつであると共に、自然派漫画の代表的存在であった。

 

三平 三平(みひら さんぺい)物語の主人公。3月3日生まれ。11歳(時により9 - 15歳前後として描いているとのこと)。大きな麦わら帽子がトレードマーク。印象的な東北弁で喋り、素朴で明るい性格の少年。だが、釣りのこととなると目つきが変わる何よりも釣りが大好きな「釣りキチ」の少年。自然の残る秋田の山間の村に住み、あちこち出かけてはさまざまな釣りに挑戦する。経験こそまだ乏しいものの、釣りに関しては一流のセンスを発揮し、周囲の大人からも一目置かれている。時に幻の魚や、伝説の主(ぬし)と呼ばれる大魚などにも挑戦し、困難な問題には工夫をこらして対処し釣り上げてしまう。作中、さまざまなライバルや仲間にも出会いながら人間的にも成長していく。

 

 

 

 

『釣り場と森のストリップ劇場 ―うさかめver―』  

~葉月凛さん(DX歌舞伎所属) の演目「釣りキチ凜平」を記念して~

 

 

自然に囲まれた森のストリップ劇場の近くには、たくさんの沢があり渓流釣りにやってくる釣りファンがいました。朝早くから釣りを楽しみ、午後から森のストリップ劇場に寄ってくれる人もいます。

 

ある日、見たことのある顔の釣り客が何人か劇場にやってきました。

漫画(映画)『釣りバカ日記』に出てくるハマちゃん(浜崎伝助)とスーさん(鈴木一之助)がいます。楽しそうにストリップを観劇しています。

二人とも年配なのでお酒を呑みながら大人の雰囲気で談笑しています。でも真面目な話はしていませんよ。きっと話題は、釣りの穴場か、ストリップの穴場のことなんでしょうね。(笑)

 

もう一組、有名な方がいました。

トレードマークの大きな麦わら帽子をかぶっています。そうです、漫画『釣りキチ三平』で有名な三平 三平(みひら さんぺい)です。若いと思っていましたが、もうストリップを観れる年頃なんですね。印象的な東北弁で喋っています。

その相手をしているのが有名タレントのさかなクンです。二人は仲良しだったんですね。

 

カメさんが三平くんとさかなクンに挨拶に行きました。

実は、カメさんも釣りが大好きでした。そうか、カメさんが投げるリボンは釣り竿を投げるイメージだったんですね。

三人は意気投合し、釣り談議に花が咲きました。・・・

渓流釣りの魅力は、喧噪とした日常生活から解放されて、大自然の中に自分を置くことが何よりも気分がいい。自然の音がいいね。水のせせらぎ、鳥の鳴く声。そして空気がうまい。都会とは全然違うよ。

沢の周りは雪解け水に倒された枯れ木が多く、すごく歩きづらい。でも、この辺りは人があまり踏み込んでいないという点がいいね。すごく自然のまま。ふと出会う小さい花がきれいだなぁと心が和む。

魚が釣れようが釣れまいが構わない。ここに一人立っているだけで幸せな気分になれる。

とは言いながら、当然に魚が釣れた方が楽しいので、気持ちは釣りに向かう。

魚を釣るためには、一匹一匹の魚と会話をすることが大切だね。まずは魚がいるところを見つけて、そこに釣り道具をキャスティングして、餌をあげて釣り上げる。釣れるまでじっくり待つ。焦らず、のんびり待つ。それが至福の時間。

また、あたりで釣ることも大事だね。やみくもに釣り上げようとはせず、あたりをつけて釣ること。小さい魚は川に返してあげる。だから釣り針を飲み込まれないように、唇に掛けて取る。くるりと逆さに返しの付いていない釣り針で釣るわけだから、釣り針からすーっと外れて逃げられることもある。そんなときは、自分の腕のなさを素直に認めて、逃げる魚はどうぞ逃げて下さいと言う。私を釣ってもいいですよ!という魚だけ釣らしてもらう。そう、魚と友達になった感覚かな。釣った魚は、私を待っていた友達と会った気分。自然と一体になっているとどこに魚がいるか分かるんだ。

水がとってもきれいなので、その水の中で泳ぐ魚が天使に見えることもあるんだ。きれいな水は全ての生き物の心まできれいにしてくれるよね。

魚は自分で食べる分しか釣らない。釣った魚は持ち帰り、大事に食べる。だから美味しい。晩酌が最高だ。まさに魚は美味しい酒を飲むために山から頂いたんだね。・・・

カメさんは、三平くんが「釣りというのは魚との長―い会話だ」という言葉がとても気に入りました。それを知らないと釣りをする資格がないし、釣りの意味がないんだね。

ところで、三平くんとさかなクンは、この森の奥に大きな滝があり、そこに巨大魚がいるという噂を聞いてやってきたようです。しかし、カメさんもそれは知りませんでした。

 

そうこうするうちにストリップの開演時間となりました。

何人かのステージの後、舞台に山のくまちゃんが登場したとき、三平くんは渓流釣りで獲ってきた魚をくまちゃんに差し入れしました。くまちゃんは大感激。

魚は、ここの上流地域に多く生息するヤマメ。ヤマメは渓流の女王と呼ばれ、体側に鮮やかなパーマークがあり、大きさが30~40㎝もあります。5月から9月がベストシーズンなんですね。もうひとつの魚はイワナ。イワナも上流域で冷水を好んで生息します。背中は褐色を帯びた暗緑色。体側に白紋が入り、腹部の黄色がかっています。その魚を見ているだけでくまちゃんの喉がごくんと鳴りました。

そこで、三平くんとさかなクンとカメさんの三人は、熊の話に言及しました。

山に釣りに入り、沢で水を飲みに魚を捕りにやってきた熊と出会うことが一番怖い。万一の場合に備えて熊スプレーを持参している。これは強烈です。さすがの熊もこれで退散します。

でも本来、山の中では熊が住人ですから、人間の方が熊に礼を尽くす必要がある。だから「今日はここで釣りをさせて下さいね。よろしくお願いします。熊さんも出てこないで下さいね。」と頼むわけです。挨拶みたいなものです。

人間はよく熊が出たと騒ぎますが、たいがいは人間が悪く、熊は悪くない。人間が食べ残しなどを置いていくから熊が出るわけです。自然を壊さないことが一番大切です。

三人の話を聞いていた山のくまちゃんは感激しました。

山のくまちゃんは、さかなのプレゼントの御礼に、三平が探している森の奥の滝まで案内する約束をしました。くまちゃんは知っていたのです。

三平くんとさかなクンは、森のストリップ劇場に寄ったことで、カメさんや山のくまちゃん達と仲良くなり、交友関係が広がったことで新たな楽しみが増えたことを喜びました。

 

                                                                      おしまい