今回は、西園寺瞳さん(ロック所属)について、H30年11月頭のDX歌舞伎での公演模様を、演目「Still doll」を題材に語りたい。

 

 

 

 

 今週は六日間通えて、とても楽しかったです。毎回、私の手紙を読んで感想を書いて頂き、いつもながら楽しい文通ができました。今回は、16周年作「真田丸」を観ていて最初の語りに胸がときめき、ついつい先に童話「西園寺瞳物語」を書いてしまいました。というかストリップの神様から書きなさいと言われた気がしました(笑)。この話には私がふだん感じている西園寺瞳の魅力をぎゅっぎゅっと詰め込みました。瞳さんから「照れちゃうので他の踊り子さんには見せないでね」と言われましたが、もちろん見せませんよ。瞳たんに私の想いが伝われば十分です。

 また、最近は、童話と一緒に他の踊り子さんから頂いた絵を同封しています。瞳たんが喜んでくれて嬉しいです。今回、瞳たんから‘きりみちゃん’の童話をリクエストされたので、次回は是非とも瞳たんの絵も私の秘蔵コレクションにさせて頂きたいと心から思っております。よろしくです。

 

今週の出し物は、1,3回目は16周年作「真田丸」、2,4回目が演目「Still doll」。

 

 

 

平成30年11月                           DX歌舞伎にて 

 

 

 

                      H30年11月

『西園寺瞳物語』

  ~西園寺瞳さん(ロック所属)の16周年作「真田丸」を記念して~

 

 

 2006年6月に川崎ロックで一人の少女がストリップ・デビューした。

 サワティ王子は彼女のデビュー初日の模様を観ていた。ステージに現れたとき、ロリちっくで、かわいくて、なによりヌードがとても綺麗な子だと感激した。透き通るほどの白い肌が彼女の魅力のひとつであることは間違いない。

 ステージは無事終わったが、問題はポラ対応にあった。これだけ可愛い女の子だから、普通だったら客が我先と並ぶはず・・・ところが誰も並ばない。

 少女は首からぬいぐるみをぶら下げていた。ゲゲゲの鬼太郎に登場する目玉おやじだ。それがロリちっくな少女にどうも不釣り合い。しかも、そのぬいぐるみときたら、すごく薄汚れている。

 彼女はお客さんが並ばないのでどうしていいか分からない状態になる。おろおろし出した。その様子も普通の女の子っぽくない。まるでよその星から来た異星人みたいな感じ。その雰囲気にお客が引いてしまった。

 その中で一人、サワティ王子が立上り、ポラを買いに行った。彼女はすごく嬉しそうな表情でサワティ王子の顔を見て、ペコリと頭を下げた。こちらが恥ずかしくなるくらい、馬鹿丁寧にも見える。が、それが客に対する彼女の心からの誠意なのだと感じた。

 それを見ていたスト仲間たちが「おまえ、よく気持ち悪くないなぁ~」とからかった。サワティ王子は新人の踊り子を外見や何かで差別するつもりはなかった。自分がストリップを楽しむための相性を確かめたくて、ポラを買い、そして手紙を差し入れた。

 彼女はまたサワティ王子の手紙にも丁寧に反応してきた。しっかり感想を書いている。とても感性がいい。サワティ王子を一番喜ばせたのは、手紙にお絵描きが入っていること。サワティ王子の創作童話に対して、女の子らしいメルヘンちっくな可愛いイラストを描いてきたのだ。簡単な絵だったがサワティ王子の気持ちは和んだ。すぐにこの娘の応援をしよう心に決めた。

 

 ちょうど、彼女がデビューした後ぐらいに、AV界から灘ジュンさんという超大物スターが鳴り物入りでデビューした。誰もがジュンさんの美しさの虜になり夢中で追いかけた。それからストリップ界には灘ジュン黄金時代が到来した。

 そんな中、彼女は必至でステージを務めた。ポラが売れずに営業成績は振るわなかったが、彼女はどんな出演にも選り好みしなかった。どこの劇場からでもオファーがあれば絶対に断らないで全国各地を回った。

ふつうの踊り子は「その劇場は遠いし、交通手段が不便だから」「連投はきつい」「体調が悪い」などと言って、オファーを断ることが往々にしてある。その点、彼女は一切オファーを断らなかった。この「劇場のオファーを断らない」という評判は、劇場側にとって極めて重要なことで、彼女のお陰で香盤に穴を開けずに済んだことが度々あった。それが彼女に対しての借りとなり、劇場側はどんな時でも優先的にオファーを出してくれるようになる。

こうした彼女の地道な努力が効を奏し、彼女の人気はじわりじわりと高まっていった。地方劇場に乗ることがファンを全国区にし、結果的に根強い固定ファンの獲得に繋がっていったのだ。

サワティ王子は、彼女を追いかけて全国を遠征したりはしなかったが、都合のつく範囲で彼女を応援し続けた。

 

そして10年もの年月が経った。

サワティ王子がびっくりしたのは、彼女が歳をとらないことだった。ビックスターの灘ジュンさんもさすがに年齢には逆らえずに美貌が衰え始めたところ、彼女の方はむしろ歳とともに綺麗になっていった。そして美しさでは灘ジュンさんを上回ってきた。

彼女のデビュー当時を知らない新しい客がどんどん美しい彼女のファンになっていった。人気は既に灘ジュンさんを追い抜いてきた。

サワティ王子は確信した。

「彼女はやはり妖精なんだ。メルヘンの世界からやってきた妖精だったんだ。」 

彼女には普通の女の子にはない不思議な雰囲気をもっていたが、きっとそのせいなんだ。鬼太郎の目玉おやじを大事にもっていたが、あれは妖精として妖怪とも交流があったせいだ。彼女自身、歳をとらない半妖怪と言えるのかもしれない。

 

一世を風靡した灘ジュンさんも既に引退した。

彼女は17年目に入ったが、その美貌はますます磨かれ更に綺麗になっている。人気は不動だ。

相変わらず、多くの劇場に引っ張りだこ。つい先月も、小倉A級から大坂東洋へ、次に広島へ、そして関東の蕨ミニへと、全国縦断の四連投というハード・スケジュールぶり。

なお、以前は、メルヘンの世界にばかり興味があるのかと思い気や、今では戦国武将に興味を持ち全国のお城巡りをしているようだ。まるで男の子のような趣味だ。ステージの演目でも戦国武将を演じ、年配のストリップ客を唸らせている。不思議な魅力に満ちていることはデビュー当時と変わっていない。

 

 サワティ王子はストリップの神様に尋ねた。

「踊り子の価値を決めるのは誰ですか? やはり、お客ですか?」

 ストリップの神様は言った。「いや、お客は気まぐれだ。それは‘時’が決めるのだ!」と。

  16年という長い時間が静かに流れていた。

 今やストリップ芸歴17年目。つねに第一線の現役として活躍している。

 その踊り子の名前は西園寺瞳という。

 

                                    おしまい