ロックの踊り子・星崎琴音さんの、2019年9月結の大阪東洋ショー劇場における公演模様を、演目「君に恋してる」を題材にして、「恋の形」という題名で語ります。
さっそく、新作「君に恋してる」のステージ内容をおさらいしてみよう。
盆の上からスタート。
ライトが点いた瞬間、鮮やかなお花の衣装にびっくり! 上下セパレートの衣装で、上半身はたくさんのお花に彩られた大きなブラ、下半身はスカートで、そのスカート上部にブラと同じお花が飾られる。スカート下部は黄色・ピンク・緑・紫とレインボー色の布になっている。背中には大きな白い羽根がある。花の精をイメージしているのかな。
頭には、白い真珠玉の入った金のヘアバンドがキラキラ。
両手首には黄緑のバンドを付ける。
右足には黄緑の紐をクロス状に巻く。足元は金のハイヒール。
ピンクに光るハート型のステッキを持って、音楽に合わせて楽しく踊る。
途中、ハート形のピンクのクッションを四つ持ってきて、三つを観客に渡す。客は琴音さんと同じ動作でクッションを操る。琴音さんが観客と一緒に恋を楽しむ。
一曲目は、TRUSTRICKの「未来形Answer」。ノリノリの楽しい曲だ。誰が歌っているのか思ったら、松田聖子の娘の神田沙也加だ。
ここで、一旦暗転し、音楽が変わり、着替える。
二曲目は、木村秀彬のインスト曲「さやかの妄想」。
今度は、黄緑の上下セパレートの衣装。よく見たら、オレンジの布の上に、黄緑の布がふわふわ付いている。黄緑の衣装には中央に金線が入っている。
すぐに音楽が、名曲「Singin in the Rain」(Cinema Screen Singers)に変わり、大きなふきの葉を傘代わりに持って、裸足で楽しく踊る。
音楽が変わり、袖で着替える。
花柄のピンクのロングドレス。肩出しで、肩から吊るしている。銀線が入っている胸元の大きなリボンがワンポイント。スカート部は前上がり後ろ下がり。
音楽は、ailkoの「恋をしたのは」。
そのまま、ベッドショーへ。ピンクのパンティを脱いで左手首に巻く。透き通るような色白の素肌と豊かな肉感に魅入らされる♡
近くに来たので、アクセサリーを目で追う。ガラスのネックレス。左手首に純金のブレスレット。左手小指に純金のリング。指先にはピンクのマニキュア。
立ち上がり曲は、TWICEの「STAY BY MY SIDE」。一転ノリノリで盛り上げる。
演目名は「君に恋してる」。ロマンチックな題名である。テーマは「恋」と教えてもらう。
最初に、お花に包まれた衣装を着て、ハートマークのクッションを持ってきて観客と戯れる。お花もハートも恋のシンボル。
さらに、名曲「雨に唄えば(Singin in the Rain)」に合わせて、大きなふきの葉を傘代わりにして楽しく踊る。恋をしていれば雨だって楽しいと言わんばかり。
さっそく曲名を教えてもらい、ネットで検索していて、ベッド入りで作品全体のメイン曲となる四曲目にailkoが歌う「恋をしたのは」が入る。これがアニメーション映画『映画 聲の形』主題歌と知り、私はすぐにこの映画をレンタルして観た。感動して何度も泣けた。今回の星崎琴音さんの作品は、私にこの映画と出会わせる縁になった。
映画では、主人公の石田将也が、小学6年生のとき、転校してきた先天性の聴覚障害を持つ少女・西宮硝子を苛める。そのことがきっかけになり、逆に将也はクラス全員からのけ者にされることになる。自己嫌悪に陥った将也はその後、誰とも心を閉ざしてしまう。
高校三年生になった将也は、自殺しようと決意し、その前に西宮硝子に謝ろうと考える。
そうして再会した将也と硝子はお互いに恋心を抱くようになる。しかし、お互いに想いがうまく伝わらない。特に、硝子は聴覚障害のため、「好き」と訴えたのに、将也には「月」と聞こえるありさまだった。不器用だけどお互い純粋である。
映画のタイトルは「聲(こえ)の形」だが、私には「こんな愛の形もあるんだな」と思えた。琴音さんも当然、この映画を観ていることだろう。だから、メイン曲にこの主題歌を選んだのだろう。「君に恋してる」というタイトル名は、この二人のことを暗に示しているのだと強く感じられた。
ステージ前半では、恋の楽しさをめいっぱい演じ、反面、このailkoの曲「恋をしたのは」を入れることにより、恋の難しさみたいなものを表現したかったのではないかと感じられた。人により、「愛の形」はいろいろなんだね。
2019年9月 大阪東洋ショーにて
ストリップ童話『おもいでぽろぽろ -心の中のボクが泣いている- 』
~京アニ映画「聲の形」を観て~
しょうちゃんは足の悪い子だった。赤ん坊の頃に小児麻痺を患って左足が不自由になった。歩けるけど、びっこをひいていた。
小さいころはよく虐められてもいた。それでも、しょうちゃんが明るい性格なのは、大家族で愛情がたっぷりだったのと、人数は少なくても仲良しの友達がいたからだった。また、しょうちゃの家はお店をやっていたので、近所のお客さんがしょうちゃんのことを可愛いがってくれたのが大きい。
しょうちゃんは周りの子供たちのように運動クラブに入れなかったので、勉強を頑張った。だから成績は良かった。成績がいいと誰も虐めなくなる。しょうちゃんの趣味は、主にTVアニメと漫画。そして読書で、たくさんの本を読んだ。
中学に入って、しょうちゃんに好きな女の子ができた。それがしょうちゃんの初恋だった。でも、足の悪いしょうちゃんは、自分が相手にされるとは思わなかった。それでも、しょうちゃんは彼女に自分の想いを告げずにいられなかった。抑えられない気持ちを手紙に託した。あえなく初恋は散った。
しょうちゃんは「自分は足が悪いからふられたんだな」そう思った。
しょうちゃんは一生懸命に勉強した。運動も恋愛もできないのだから彼には勉強しかなかった。お陰で、成績はいつもトップで、志望大学にストレートで合格した。
しょうちゃんは大学に入り、同じサークルの女の子を好きになった。想いが募り、告白せずにいられなかった。サークルの名簿から電話番号を調べ、直接彼女に電話した。胸が張り裂けるほど高鳴った。結果はまた失恋。彼女から「あなたには私なんかよりもっと相応しい相手がいるわ」という言葉が返ってきたが、しょうちゃんは「自分には君しかいないと思って告白したんだ」と心の中でつぶやいた。
結局、しょうちゃんは「自分は足が悪いから相手にされなかったんだ」そう思った。
しょうちゃんは大学で、ある同い年の男友達ができた。彼とは同郷だったこともあり仲良くなり、偶然住んでいる場所も近かった。彼のアパートは、しょうちゃんの下宿から近く、しょうちゃんは毎日のように彼のアパートに遊びに行く。
大学三年生になった春のある日の夜、いつものように友人のアパートに遊びに行ったら、たまたま彼の妹を含め三人の女の子が来ていた。三人ともとても可愛いらしい。しょうちゃんから数えて三歳年下の高校生仲良しグループで、予備校の春期講習で滞在していた。彼の妹が「みんなで私のお兄ちゃんのアパートに遊びに行こう」とやってきていたのだった。高校生の彼女たちにとって我々大学生は憧れであり興味津々。夜通し話は盛り上がる。ちなみに友人はよく喋るので、無口なしょうちゃんは相づちを打っていればよかった。そんな中、三人の女の子の中でも一番無口な女の子がしょうちゃんとよく目が合った。しょうちゃんは彼女の視線を感じるたびにニコッと微笑み返した。すると彼女は恥ずかしそうに下を向く。そんなことが一晩の中で何度か繰り返された。しょうちゃんはその子をかわいい娘だなと思った。しかし、彼女とどうこうなるとは夢にも思わなかった。
翌日、しょうちゃんがまたその友人のアパートに遊びに行ったら、彼が笑顔で迎えてくれた。そして「昨日来ていた彼女、おまえのことが気に入ったようだよ。会いたいらしいから、明日またアパートに来いや。」と話してくれた。これには驚いた。初めて女性から想われ、しかも相手があんなに可愛い娘だったことにしょうちゃんは有頂天になった。
その翌日、彼女は友人の妹と一緒に再び彼のアパートにやってきた。友人兄妹がしょうちゃんと彼女に気を遣って、席を外して二人っきりにしてくれた。しょうちゃんは情けないことに女性と二人きりで話したことがなかった。お互い無口だったこともあって話は弾まない。ただ、残り少なくなった春期講習期間中に一度だけデートさせてもらうことができた。
二度目のデートはなかった。せっかく相手の方から好意を寄せてくれたのに、恋は実らなかった。しょうちゃんは「やっぱり足の悪いボクとは一緒に歩きたくないんだな」そう思った。
しょうちゃんは、しょんぼりした。「ボクは足が悪いから彼女ができない。もしかしたら一生結婚もできないかもしれない。」しょうちゃんは深く落ち込み、自殺まで頭を過るほどだった。
でも、時間が経つと、失恋の痛みを忘れ、まるで持病の再発のようにまた恋をした。
しょうちゃんはふつうに女好きかもしれないが、遊びで女性と付き合うつもりはなかった。恋愛に対してはいつも真摯だった。結婚したい思うほどに相手を好きになっていた。
残りの大学時代、そして就職してからと、いくつかの失恋を繰り返した。間違いなく、それがしょうちゃんの青春時代だった。失恋ばかりの悲しい青春だった。
しょうちゃんは、いつしか笑いながらこんなことを話すようになった。「ボクは失恋ばかりの青春だった。でも相手に告白しないで終わった恋は一度もなかった。必ず告白し、そして見事に砕け散った。それが自慢かな。」と。
26歳になったとき、両親から「今度、田舎に帰ってくるときにお見合いしないか」と相手の写真が送られてきた。両親は足の悪いしょうちゃんのことを心配していた。それで見合い話を一生懸命に探してくれていたのだ。付き合っている相手もいないしょうちゃんは、言われるままにお見合いした。
しょうちゃんは一流の大学を出て、一流の会社に就職していた。だから相手もお見合いにのってくれたのだろう。しょうちゃんも一目で相手が気に入る。両親の段取りが良かったので、あっという間に結婚までの日取りが決まった。長距離恋愛なのでデートすることもままならず、お見合いも含めて10回目のデートが結婚式という感じだった。
しょうちゃんは結婚するにあたって、相手に尋ねた。「ボクは見ての通り、足が悪い。こんなボクでも結婚してくれるの?」すると、彼女は「私は足が悪いことなんて気にならない。」と返答してくれた。しょうちゃんは「この娘を必ず幸せにしてあげなければいけない」と心に誓った。
結婚生活は順調だった。転勤は頻繁にあったものの、会社の社宅制度は完備していたし、転勤のたびに昇進し給料は上がっていき、マイホームも持てた。
子宝三人に恵まれた。しょうちゃんは子供たちにたくさんの童話を読んであげた。そのうち、「これならボクにも童話が作れそう」と思って、日常の家庭生活を元ネタにして、子供たちを主人公にした童話を創り、毎晩布団の中で子供たちに語ってあげた。子供たちには大好評。自分が主人公なのだから興味津々。「お父さんのお話を聞かないと寝ない」「ねぇねぇ、それからどうなるの」と子供たちに毎晩せかされる。毎晩二つずつ寝物語を語ってあげた。しょうちゃんは筆まめだったので、話した童話をワープロでしっかり日記に記し、最後は童話エッセイ集「お父さん、お話して! 」にまとめた。いま読み返しても、楽しい家庭生活だったと思う。
子供たちも、父親の童話を栄養にして立派に成長した。絵に描いたような幸せな生活だった。自分が足の悪い身障者であることなんて忘れるほどに、人並み以上の幸せであった。しょうちゃんは、それで満足しなければいけなかった。
ところが、単身赴任がきっかけで人生の歯車が狂い始めた。
ふつうのサラリーマンなら、赴任先でホームシックにかかったりして淋しくなったらスナックやキャバクラなどに通ったりするもの。ところがしょうちゃんの場合、たまたまストリップにはまってしまった。
最初のうちは、ストリップは欲求不満解消のための、風俗のひとつと考えていた。ところが劇場通いしながら、踊り子さんと仲良くなり、一種の疑似恋愛を楽しむようになっていった。
どうして、失恋ばかりのしょうちゃんがこれほど踊り子さんと仲良くなれたのか?
まず言えるのは、踊り子さんも商売だからかな。「また会いに来てね」「会いたかったのよ。また来てくれて嬉しいわ」 耳をくすぐる言葉は全て商売上の決まり文句である。そこはスナックやキャバクラと同じ。しかし、ストリップの場合はキャバクラのように客から金を巻き上げようという感覚はない。だから小遣いの範囲内で楽しめる。ご挨拶でポラを買うくらいで、それ以上の追加支出はない。
また、しょうちゃんもいつの間にか男として成長していた。女性に相手にされずにガツガツしていた昔のイメージはもうなくなり、立派に家庭を構え、仕事もばりばりしている一人前の社会人になっていた。家庭をもっている分だけ、踊り子さんから落ち着いて見えたことも一理あるだろう。
しょうちゃんはいつも嬉しそうに観劇していた。今まで女性に相手にされなかったから、大好きな女性のヌードを心置きなく見れて、しょうちゃんは幸せだった。だからいつもニコニコ笑顔になる。「あなたの笑顔は、私たち踊り子を元気にさせてくれる、とてもステキな笑顔だわ。」とよく褒められた。
一番効果的だったのは手紙だった。一般にストリップというのは単に見るだけのもの。会話はポラを買うときの挨拶程度しかできない。ところが、しょうちゃんは筆まめだったので、手紙で踊り子さんとコミュニケーションができた。ふつうのお客は面倒臭がって手紙なんか書かない。そのため踊り子はしょうちゃんの手紙を喜んだ。
しかも、しょうちゃんは童話創作というひとつの得意技をもっていた。踊り子さんのステージから得られたインスピレーションでファンタジーな童話に仕上げてプレゼントした。これには踊り子も驚き喜んだ。世界でたったひとつの自分のための童話だからね。しょうちゃんも創作の喜びに目覚め、得意満面だった。まさしく、童話を語る相手が、以前の自分の子供たちから踊り子さんに代わっていったのだった。しょうちゃんにとっては踊り子さんは自分の娘みたいなところがある。
いずれにせよ、しょうちゃんは今まで女の子と文通なんてやったことがなかったこともあり、手紙の楽しさにのめりこんだ。なにせ相手が絶世の美女なのだから猶更である。
ストリップというのは、目で楽しむ遊びである。だから、踊り子さんと仲良くなるためには、せっせと劇場通いしてたくさん会いに行くこと、そしてステージでニコニコ笑顔だったり、じっと見つめたりと目のコミュニケーションを図ること、あとはポラを買うことによるポラタイムでの短い会話でのコミュニケーション、とコミュニケーションの手段はこれだけに限られる。しょうちゃんの場合は、その上に手紙によるコミュニケーションを重ねたのだから、誰よりも踊り子さんとたくさんコミュニケーションができた。ポラ代は踊り子さんに手紙を渡す切手代。他のお客以上に、しょうちゃんが踊り子さんと仲良くできたのは当然であった。
しょうちゃんは好きな踊り子に会いたくて劇場に通い、そして手紙等で会話を楽しんだ。まさしくデート感覚だった。昔、好きになった女の子のことを想ったセピア色の情景と恋心が流れた。しょうちゃんにとって、ストリップでの踊り子とのお付き合いはまさに遅ればせながらの青春であった。しょうちゃんは有頂天になってストリップを楽しんだ。
ただ、しょうちゃんは家庭を壊すつもりは更々なかった。あくまでストリップは遊びであり、浮気という罪悪感もないし、ましてや本気の恋愛に発展させる気もなかった。踊り子さんの中には「あなたは不思議な人よね。私たちを口説きたくて毎日のように通ってはプレゼントまでしてくれる客はたくさんいる。でも、あなたはせっせと手紙をくれるだけ。変わっているけど、それがステキよ。あなたの手紙、楽しいもの。」と言ってくれた。また中には「あなたを気に入ったから、私の連絡先を教えるわ。食事にでも行きましょうよ。」と誘ってくれる人もいた。しかし、しょうちゃんは誘いには一度ものらなかった。ストリップというものは踊り子と客が適度の距離をもって楽しむものであると割り切っていた。そして単身赴任生活が終わったらストリップ通いも終わらせようと考えていた。
単身赴任生活の4年間があっという間に過ぎ去った。
ところが、しょうちゃんは家族の元に帰っても、ストリップ通いがやめられなかった。仲良しの踊り子さんが出演していると会いたくて身体がウズウズする。単にヌードを観たいのでなく、会いたくて会いたくてたまらないのだ。しょうちゃんは疑似恋愛といっているけど、これはもう完全に恋愛の域である。
家族に嘘をついては劇場通いをする。「今日も残業で遅くなる」「土日は休日出勤になる」「今度の休みはゴルフになった」などなど。しかし嘘はいずれバレる。
しょうちゃんは妻を愛していた。浮気をしているつもりもなかった。妻から「ストリップにはもう行かないと約束して」と何度も釘を刺されたが、しょうちゃんは劇場通いをやめられなかった。しょうちゃんがいくら「ストリップは単なる遊びだ」と言い訳しても、彼の妻は許してくれなかった。こうして家庭は崩壊した。
しょうちゃんはどうして大切な家庭を壊してしまったのだろう。ストリップなんかで大切な家庭を壊すことなんて絶対に無い!といつも自分に言い聞かせていたのに・・・
妻や子供たちに申し訳ない気分でいっぱいなる。罪悪感がしょうちゃんを責めたてる。最後の妻の言葉がずしりと重かった。「あなたは馬鹿よ。踊り子さんなんて誰もあんたのことは相手にしないのよ。あなたは、身体の自由がきく今のうちはストリップ通いもできるでしょうが、いずれ足の悪いあなたは自由がきかなくなるわ。そうなった時に、わたしと別れたことを後悔するはずよ。さようなら。」その言葉がしょうちゃんの脳裏を反芻する。しょうちゃんは「女房には本当にすまないことをした。幸せにしてあげると誓ったのに約束をやぶってしまった。」と心から思った。子供たちは全員、立派に社会に巣立っていたことがせめてもの救いだった。
しょうちゃんは‘新たな業’を背負ってしまったと痛感した。と同時に、心の奥底に別の‘深い業’が宿っていることに気づいていた。失恋ばかりだった若い頃の自分が泣いているのだった。・・・
そう、しょうちゃんは、青春の残り香をストリップで穴埋めしたかったのだ。しょうちゃんは踊り子さんと疑似恋愛を楽しむことで「ボクだって、ふつうに恋愛ができたんだ」と思いたいのだった。
ストリップは座って観劇する。だから踊り子さんはしょうちゃんが足が悪いことに気付かない。単にしょうちゃんの笑顔と手紙に基づいて、彼のことを判断する。足が悪い身障者としてのコンプレックスを排除して、ある意味、健常者としての自分を好きになってくれるかどうか、それは一種のラブ・ゲームだった。疑似恋愛と言いながら、彼はラブ・ゲームを楽しんでいたのだ。その快感が、心の中で泣いているしょうちゃんの悲しみを癒してくれていたのだ。
しょうちゃんは泣いていた。思い出ぽろぽろ流れる涙が、青春の残り香の涙なのか、家庭を壊してしまった悔悛の涙なのか、それは分からない。
おしまい