ロックの踊り子・misakiさんについて、二周年作「PURE」を題材に、白雪姫の魔女について語ります。
H29年11月中のライブシアター栗橋の開館記念ロック大会で、misakiさんの二周年作「PURE」を拝見して感動した。引き続き、12月頭の大阪東洋ショー劇場でも拝見させて頂き、機が熟したところで今回レポートさせて頂きます。
今回のmisakiさんの演目は、白雪姫の魔女を演じている。白雪姫を演じている作品はこれまで沢山観てきたが、白雪姫の魔女をテーマにしたのは初めて。すごく新鮮で強いインパクトがあった。
本人から「ディズニーの白雪姫がモチーフ」と教えてもらう。最近では2012年公開のディズニー映画『白雪姫と鏡の女王』が記憶に新しいところ。名女優ジュリア・ロバーツが邪悪な女王にふんし、キャリア初の悪女を憎々しげに演じ切っている。
ただ、白雪姫ではなく魔女を演じているのに演目名が‘純粋に’という意味の「PURE」であることが不自然・不可思議に思えた。あえて反意語を使ったのか。以下その点を考えながら観ていきたい。
ステージ模様は次の通り。
最初に、東京ディズニーシーのショー「The Villains’World(ザ・ヴィランズ・ワールド)」のおどろおどろしい音楽が流れる。
狭い栗橋では盆の上からスタートしたが、広い東洋では花道の途中からスタート。できるだけ観客に近いところで最初に斬新な衣装を強くアピールしたい意図だろう。また広い東洋では、最初に舞台の上に置かれている椅子に括り付けられた鏡(垂れ幕されてる)とテーブルの上の毒りんごが舞台背景として映えている。
黒いマントを羽織って登場。黒いマントは刺繍入りの薄い生地なので、その下にある上下セパレートの黒地の衣装が透けて見える。頭にもフードをかぶる。黒地の衣装というものの、金銀の線に縁どられ、金の装飾が施され、豪華な渋みを漂わす。
裸足で踊る。
音楽がハードロックに変わる。VAMPS の曲「B.Y.O.B.」。VAMPS(ヴァンプス)は、私の好きなL'Arc〜en〜Cielのボーカリスト・hydeと、Oblivion Dustのギタリスト・K.A.Zにより結成された和製ロックユニット。この曲は最新アルバム「UNDERWORLD」に収録されており、このアルバムのコンセプトは、目に見える物質的な“表の世界"ではなく、ダークサイドとも言える“裏の世界"にこそVAMPSの本質がある、というもの。まさしく魔女に相応しい選曲である。
黒色と金色に毒付けられた怪しい赤い林檎を手に持っている。
マントを脱ぐと、下の衣装が現れる。上半身は、左肩からの黒い布と、右肩からの金と黒が混じった布とが、胸下でクロスして、その先は腰部に繋がりスカートを吊るしている。スカートには、黒地に金のポチポチ斑点と金の葉っぱが華やかに散りばめられている。
頭部はフードを取り、髪を後ろに結び、華やかなピンで留めている。羽付きの黒い花飾りを付けている。
アイラインがくっきり、魔女のごとく鋭い眼差し。
赤いライトが舞台を照らすと、同じくVAMPSの曲「BREAK FREE」に変わる。この曲も最新アルバム「UNDERWORLD」から。
椅子に座って、衣装を着替える。
パープル花柄のラグジュアリードレス。襟が銀線。胸元の黒いリボンと黒い裾。
暗転。
ここで音楽が、Lana Del Rey の「This Is What Makes Us Girls」に変わる。Lana Del Rey(ラナ・デル・レイ、1985年6月2日生 - 現在32歳) は、米ニューヨーク出身のシンガーソングライターである。本名はエリザベス・グラント。新たなファッションアイコンとしても注目されている。選曲が渋いね。
椅子に括り付けている鏡を椅子ごと持って盆に移動。金に縁取りされた大きな鏡を覗き込む。「鏡に直接唱えてはないけど、心の中で問いかけてるかなー」とのコメント。さて何と問いかけているのかなと気になる(笑)。
ベッドショーが始まる。黒い紐パンを取る。
さりげなくもアクセサリーが散りばめられている。右耳のインダストリアルピアスがきれい。両耳のリングが揺れる。細長く垂れるガラスのネックレス。右手首にガラスのブレスレット。左太ももに黒いキラキラバンド。そして、指先にはピンクのマニキュアがてかてか輝く。
立上りは、日本のヴィジュアル系ロックバンドthe GazettE(ガゼット)の曲「UNTITLED」(無題) で締める。
盆の上の椅子を倒して去る。最後に、舞台の上で毒りんごを掴んで倒れる。
何度もステージを拝見し、渋めの音楽を聴いていると、misakiさんが演目名を「PURE」にした気持ちが伝わってくる気がする。人間の本性とは白雪姫ではなく魔女なのだ!と。
グリム童話の原作を再読したくなった。
我々が知っている白雪姫はかなりディズニーナイズされている。本当のグリム童話の白雪姫は、かなり残酷で猟奇的な内容である。以下に、相違点を列記してみる。
◆原作ではまず、継母ではなく、「実のお母さん」。
物語の設定は白雪姫がほんの7歳。だから、ディズニーの白雪姫では「継母」はけっこうな年増に描かれていますが、白雪姫の年齢を考えると、ヘタすると20歳代です。
なんと白雪姫は7歳にして実父と関係を持ってしまったのだ。近親者による性的虐待が物語の始まり。それを知った母(継母ではない)は白雪姫に嫉妬し猟師に殺すよう命ずるのである。
昔の人は、女性の嫉妬心がいかに恐ろしいかをこうした物語にしていたんだなー。
◆女王の狂気性。
原作では女王は白雪姫を殺し肝臓をとってくるように命じます。白雪姫を不憫に思った猟師は彼女を殺せず、代わりに森の中に置き去りにしイノシシの肝臓を代わりします。一般の白雪姫ではイノシシの肝臓ではなく豚の心臓になっています。
すると王妃はその肝臓を塩茹にして食べたのです!自分の娘のものを。白雪姫の美しさを自分のものにするためである。
◆7人の小人について
初版は白雪姫を助けるのは7人の人殺しだったが、二版以降は7人の小人に変わった。人を殺した…というよりそもそもいわゆる「ならず者」で、そのため街中に住めず森に住むようになった人たちなんだとか。森に住む人たちというのはヨーロッパの社会になじめずに差別されたという人が多い。
◆女王の執拗性。
白雪姫は、最初は黄と赤と青の絹で編まれた紐で絞殺されそうになり、次は毒の櫛を髪にさされて毒殺されそうになり、最後は毒りんごでやはり毒殺されそうになります。こうした度重なる殺人計画を鑑みると、女王の執拗性がよく分かりますね。
◆王子は死体愛好者。
初版のグリム童話では、なんでも「ネクロフィリア」(死体愛好)の性癖があったと書かれている。
白雪姫は10歳のときに毒りんごで死んでしまいます。王子様は10歳の少女の死体を見て一目ぼれをします。死体でもいいからと白雪姫をもらい受け、10歳の少女の死体にキスをします・・・・・ガラスの棺の白雪姫を王子が城に運んでも、ずっと眠ったままで、王子は四六時中、白雪姫を見つめていた期間があり、彼女が目覚めるまで時間がかかっている。
◆空恐ろしい原作のエンディング。
白雪姫は王子と結婚します。その結婚式場に招待した母に復讐として焼けた鉄の靴をはかせて死ぬまで踊らせ、さらに死体を骨まで粉々にする。「鉄でつくったうわぐつをのせておきましたのが、まっ赤にやけてきましたので、それを火ばしでへやの中に持ってきて、わるい女王さまの前におきました。そして、むりやり女王さまに、そのまっ赤にやけたくつをはかせて、たおれて死ぬまでおどらせました。」
原作に触れると、表現者であればあるほどに、白雪姫よりも魔女を演じたくなるmisakiさんの気持ちが伝わってくる。
平成29年12月 大阪東洋ショー劇場にて
【misakiさんのコメント】
レポートめちゃ濃い! うれしい~♡
割とPUREの中身、どう捉えるかはお任せしてるけど、だいたいそんな感じ。
『魔女コンテスト』
~misakiさんの演目「PURE」を記念して~
「鏡よ、鏡! この世で一番の魔女は誰だい?」
白雪姫の女王は大きな魔法の鏡に尋ねました。
そして「今度、魔女コンテストを開催したいと思っている。私の対抗馬になる相手はいるかしら?」と付け加えました。
魔法の鏡は、ディズニーの世界で考えられる候補を次々と並べました。・・・
ディズニーに登場する悪役はたくさんいます。ディズニーは悪役がよくないと話は成功しません。
悪役には男性もいます。すぐ思い浮かぶところでは、「アラジン」のジャファー、「ピーター・パン」のフック船長、「ヘラクレス」のハデス、「美女と野獣」のガストンかな。しかし、男性は悪役としての迫力が今ひとつ。ガストンなんか、ベルとどうしても結婚したいと願い、そのためならどんな卑怯な手でも使うという、ある意味一途な男。ベルに結婚を申し込んだが、あっさり断られ、かなり落ち込むという繊細な面を持つ一方、人々におだてられ、すぐ立ち直るという、単純な面も持つ。かわいいというか、情けない悪役だ。
悪役といえば、人間以外もいます。「ライオンキング」のスカーや、「カーズ」のチック・ヒックスなど車までいます。この辺は問題外ですね。(笑)
やはり、女性の魔女が最高です。迫力が違います。
すぐに挙げられるのが「眠れる森の美女」のマレフィセント。ディズニーでは、ディズニー・プリンセスに対抗しディズニー・ヴィランズ(悪役)軍団を売り出しているが、彼女はそこのオピニオンリーダーとされる魔女。あなたの考える魔女コンテストでは一番の対抗馬と言えましょう。しかし、「魔の山」の古城に住む彼女はあくまで幻想の世界に過ぎない。私が考える恐怖はもっと身近にある。
例えば「シンデレラ」のトレメイン夫人。彼女はシンデレラの継母で、自分の娘ドリゼラとアナスタシアと一緒になって、シンデレラの美しさを妬み、冷酷なまでに彼女を虐げる。
やはり、女性の嫉妬心は恐ろしい。それが身近な肉親であればあるほど恐怖は増す。
シンデレラも白雪姫も根強い人気があるのはプリンセスの相手が継母だから。いや「白雪姫」の母であるあなたは本当は実母ではありませんか。私は知ってますよ。わずか7歳で父親と性的関係をもった愛娘に対して、あなたは激しい嫉妬をもった。これが真実です。実の母親が実の娘を殺しにかかる。この世にこれほどの残虐な恐怖はありません。
しかも、最初は紐で絞殺しようとして失敗、次は毒の櫛で毒殺しようとして失敗、最後は毒りんごで毒殺しようとします。度重なる殺人計画を鑑みると、やはり女王の執拗性が際立っていますね。あなたこそが一番の魔女だと思います。
なお、相手が母親という点では「塔の上のラプンツェル」のマザー・ゴーテルも忘れてはいけません。彼女もラプンツェルの育ての親です。こちらも白雪姫やシンデレラと同じグリム童話ですね。昔の人は女性の嫉妬心がいかに恐ろしいかをたくさんの物語として残しています。
なお、「リトル・マーメイド」のアースラも有名。しかし、彼女は半分タコ。なにより、アリエルの人魚の尾ひれと美しい声とを交換条件に人間の足を与えた。あくまでGive&Take。本当の魔女ならGiveはない。徹底的に奪うのみ。まだまだ甘い。
また、「101匹わんちゃん」のクルエラ・ド・ヴィルも悪女。彼女はディズニー・ヴィランズの中でも、特に抜群のファッションセンスの持ち主として注目株。
ざっと、こんなところですかね。・・・
白雪姫の女王は魔法の鏡の話を満足気に聞いていました。
その後、魔法の鏡はひとりごとのようにつぶやいた。
ストリップの世界には魔女はいるのかなぁ・・・
踊り子はみな、自分の魅力で男性客を惑わそうとする。しかし騙そうとはしない。勝手に身を亡ぼす客もいるがそれは客の方が馬鹿なだけ。
踊り子は小悪魔に過ぎない。本当の魔女には美貌とともに凛とした気品がある。さらに優しさがあるから男は狂う。ストリップ界では引退したロックの灘ジュンさんが一番悪魔に近かったかな。現役ではロックの伊沢千夏さんが一番近いかな。やはりピュアな美魔女を目指してほしいところ。
先ほども話したが、嫉妬心ほど醜く恐ろしいものはないなぁ・・・
嫉妬心といえば、ついつい女性の方を考えてしまう。たしかに嫁姑問題など男性には考えられない領域。男性にとっては、自分の生涯の伴侶である嫁も、自分を産んでくれた母親も、どちらも大事なのは言うまでもなく、そのどちらかを選べなんてナンセンスな問題なのである。
ただ、男性の嫉妬心ほど情けないものもない。自分を高めることを放っておいて他人の悪口を述べる男は最低な輩。男として風上に置けない。ストリップでもネットなどで踊り子や他の客の悪口ばかり書く奴は最低の屑である。ストリップの楽しみ方を知らない奴らが今のストリップをダメにしている。
いつの世も、嫉妬心から自分の子供を手に掛ける母親は鬼・・・
自分の子供を虐待する親がいるという報道を聞くたびに身震いする。弱い者いじめは人間として最低の行為。しかも、その対象が我が子とは信じられない。親というのは自分を犠牲にしても子供を護るように作られているもの。それなのに、生まれてきた子供が自分の親から虐められたら、その子は誰を頼って生きていけばいいのか、生きた心地がしないだろう、この世の地獄である。
嫉妬心だけでなく、今や感情の高ぶりだけで簡単に子供を虐待したり殺害したりする母親がいるという話を聞くと、魔女コンテストで優勝できる候補者がたくさんいる気がしてきた。ぞっとする。
思えば、清純無垢というイメージの強い白雪姫も、この女王の遺伝子を引き継いでいるわけだから、いつ何時、魔女に化けるか分からない。
実際に、白雪姫の原文のラストシーンを思い出してみよう。
白雪姫と王子は結婚式をあげる。白雪姫はてっきり死んだと思い込んでいる悪い女王は、魔法の鏡に「若い女王様は、千倍も美しい」と言われ、その正体を確かめるために結婚式に参列する。
悪い女王は、その若い女王様が白雪姫であることに気づき、恐ろしさで立ち尽くす。人々は鉄でつくって火であぶった上靴を悪い女王に履かせて、倒れて死ぬまで踊らせる。
さて、この「悪い女王に火であぶった靴を履かせよう」という恐ろしい提案したのは誰だったんでしょう?
女王暗殺の黒幕は白雪姫と考えるのが自然でしょうね。もしかしたら王子との共謀かも。
なぜなら、王子と白雪姫は、その後退屈しのぎに、家臣を火あぶりにして楽しんだという事後談もあるくらいですからね。人の心とは分からないものです。
誰の心の中にも魔女になる資質があることを知ったうえで、自分を律していかなければならないということなのでしょう。
おしまい