今回は、東洋の踊り子・伊吹千夏さんの五周年作「麗しの桜」について、「葵の上(源氏物語)とセクシャル・バイオレンス」という題名で観劇レポートさせて頂きます。変な題名と思うでしょうが、とりあえず読んでみて下さい。
H27年12月中の渋谷道頓堀劇場は、香坂玲来さんの引退週で盛り上がっている。玲来さんがこれまでの作品を次々と披露し、合わせて六花ましろさんとの最後のチームショー「ハモンセラーノ」も演ずる。今週の香盤は次の通り。①伊吹千夏(東洋)、②JUN(西川口)、③川中理紗子(道劇)、④浅葱アゲハ(フリー)、⑤六花ましろ(道劇)、⑥香坂玲来(道劇)〔敬称略〕。メンバーも良く、私は5日間通う。
H27年12月14日、渋谷道頓堀劇場で初めて千夏さんの五周年作を拝見。
先週、大阪東洋で五周年を迎えていたが行けなかったので、今週渋谷での再会を楽しみにしていた。「わぁ~久しぶりに会えて嬉しいな。怪我して三カ月もお休みしてしまった。なんとか戻ってこれたよ。」私とは約半年ぶりになった。
持病の首で長期間休養していたのを知っていたので心配していたが、無事復帰してくれて嬉しい。今回の作品は激しい踊りは無いのであまり首に負担がかからなさそう・・!?
さて、さっそく五周年作「麗しの桜」を紹介しよう。
最初に厳かな音楽とともに台詞が流れ、紫式部の源氏物語のことに触れる。場面が平安時代の貴族が背景であることが分かる。
舞台の上に、たくさんの鶴の絵が描かれた絢爛豪華な着物が簾のように掛けられている。まるで屏風絵のよう。
そこに白い貴族の衣装を着て登場。白地の衣装に、腰にキラキラした濃紺の帯を巻く。なにより髪飾りが豪華。輝く銀の王冠のような簪(かんざし)から後ろに長い銀の簾が流れる。耳の後ろに青い垂れ糸が揺れる。
桜の花を付けた長い枝を振りながら、白足袋で優雅に舞う。
次に、その白い衣装を脱ぐと、エナメル系の黒い着物姿に。黄緑の帯が鮮やか。着物の後ろはたくさんの鮮やかな色模様の布が縫い付けられている。片方の肩を曝け出しつつ演ずる。
最後に、華やかな白い着物姿になる。白地に、ピンク・赤・白・青・黒の花柄がきれいに散りばめられている。着物の裏地は鮮やかな青。
髪が驚くほどロングになっている。腰まであるかな。そのままベッドへ。
今回は、いつものように激しいダンスで押すのではなく、妖艶さに酔わせる。流し目が鋭い。
「葵の上(18)ヴァージンです。光源氏さまは今夜来てくれるかしら・・・」とのコメント。
正直、この作品には、女性の美しさというより、むしろ光源氏のもつ男性の凛々しさみたいなものを強く感じた。そして、何度も観ているうちにSMちっくなセクシャル・バイオレンスを意識するようになる。
実は、OPショーで、千夏さんがある客の顔になんども足の裏を押し付けるシーンを見た。その客は完全なM男くんで顔を歪ませながらも恍惚とした表情を浮かべた。周りの客が面白がる。私のスト仲間のHさんもOPショーでチップをあげて千夏さんに顔を叩いてもらって喜んでいる。私にはそういう気が無いので頼まないが、M気のある男性には千夏さんのような女王様タイプにかまってもらうのはたまらないのだろう。
千夏さんはどうやって客のM気を見つけるのかな? ポラ時や手紙なんかで客に直接お願いされるのかな?それともポラ時の雰囲気で自分から嗅ぎ分けるのかな? また、それに応えるところが凄いことだと思う。
前に、千夏さんはお尻で語れる踊り子さんだと評したことがある。たしかに、千夏さんの小股の切れ上がったお尻で頬をペンペンされると悶絶して失神するだろう(笑)。千夏さんには男たちをひれ伏させる妖艶さがある。それこそセクシャル・バイオレンスなのだ。
ステージの最後に糸リボンを投げるが、まるで蜘蛛の巣で男たちを絡めとるみたい(笑)。
話を源氏物語の「葵の上」に移す。
源氏物語の冒頭で、光源氏は12歳で元服をしてすぐに結婚する。その相手が四歳年上の「葵の上」。彼女は朝廷の重職にあった左大臣の娘。源氏より身分が上のせいか、すごくお高くとまった女。器量も良く、大切に育てられた上品な深窓の人でしたが、お互いに、何となくそりが合わない第一印象を抱いてしまい、その想いがずっと続いた。
紫式部は、葵の上を綺麗だが気の強いどちらかと云えば嫌な女と位置付けていたようだ。光源氏の女性放浪を物語として成立させるにも好都合だったのでしょう。
葵の上は光源氏の浮気性について当然知っていたでしょうが、嫌なことがあってもそれを表に出さないところに凛としたものを感ずる。先に私が、今回の周年作で女性の美しさより男性のような凛々しさを感ずるというところに通じます。
四歳年上の葵の上は、本当は自分より幼い光源氏を手のひらで転がすことができたはず。セクシャル・バイオレンスでもって光源氏をM男に導くことができたはず。若々しい端正な光源氏の顔を足で踏みつけ、ときに顔面騎乗してあげればどんなに喜んだことでしょう。千夏さんのステージを観ながら、ずっとそんな妄想をして楽しんでました。(笑、失礼!)
実際の物語では、光源氏に遊ばれ捨てられた六条御息所の女が正妻の座にいた葵の上に呪いをかけて、葵の上は病床に伏す。光源氏は自分のせいでやつれていく葵の上を愛おしく想い、二人のわだかまりは解け始める。そして葵の上は懐妊し光源氏の子/夕霧を産む。なんと結婚して10年後のこと。ところが産後様態が急変し帰らぬ人になる。葵の上にはもっと幸せになってほしかったなと思うのは私だけではないでしょう。
あぁ~葵の上にセクシャル・バイオレンスがあったなら・・・
平成27年12月 渋谷道劇にて