今回は、「落ちていく日々」(その1)と題して語ります。

 

 五月は最悪の日々が続いた。

 忘れもしない5月9日(木)から悪夢が始まった。当日は、東京の水道橋で講習会に参加する予定になっていた。私は前日も新宿TSミュージックで、お気に入りの立花さやさんのラスト・ステージを深夜24時過ぎまで観劇した。そして、そのまま近くの常宿のカプセルホテルはたご屋に宿泊した。翌朝は、総武線の水道橋まで10時までに行けばいいので、八時頃にゆっくり起床して一風呂浴びて向かおうと呑気に考えていた。

 朝風呂ですっきりしてロッカーに向かうと、キーが付いていた。えっ!昨日からロッカー・キーを指しっぱなしにしていたのだ。慌てて、ロッカーの中身を確認したら財布だけが盗られていた。茫然自失の状態。すぐにフロントに相談したが従業員も困惑。見つかったら教えて欲しいと連絡先のメモを渡し、私はホテルを出た。

まずは、今日の講習会に連絡し、キャンセルをお願いする。ドタキャンになるが快く受け付けてくれ代金も返すと言ってくれた。その旨を会社にも連絡し、今日は有給休暇にしてもらう。そして、すぐに交番に駆け込んだ。新宿ニューアートの近くのゴールデン街の花園交番が一番近いと思い入ったが、そこは四谷警察署管内だった。ホテルは新宿警察署管内なので、そちらの方が手続きが早いとは言っていたが、とりあえず花園交番で盗難届の受付をしてくれた。

 被害額と言われれば、現金が10万円ほど入っていた。もちろんキャッシュ・カードがたくさん入っていて、すぐに銀行のカード二枚とクレジット・カード三枚を紛失届に連絡し使用をストップしてもらう。三菱東京UFJ銀行は再発行手続きまで電話で済ませられたが、仙台で作った七十七銀行の方は銀行の窓口まで来てほしいと言われた。銀行によって対応がまちまちで、こういう困ったときは事務手続きを簡便にしてほしいものだ。クレジット・カードはスムースに対応してくれた。それにしても携帯電話があって助かった。携帯電話まで盗まれていたら大変だったな。

最初に困ったのは、財布の中に身分証明するものが全部入っていたこと。運転免許証、健康保険証、社員証。特にすぐに必要なのは運転免許証だ。これがないと通勤も何も出来ない。警官が親切に対応の仕方を指導してくれた。運転免許証の再発行には住民票の写しが必要になる。そこで家族に連絡する。午前中はパート勤務していた妻に事情を説明し、再発行にお金がかかるので二万円を用立ててもらう。一旦、千葉の自宅に戻り、住民票をもらってから、幕張の免許センターに向かい、運転免許証の再発行が完了した。

そうそう、財布を盗られて一番困るのは、なんと言っても、お金がないことだ。キャッシュ・カードが全部入っていたので、お金が引き出せない。銀行から預金をおろすには、キャッシュ・カード以外では、通帳と印鑑が必要になる。通帳は会社に置いてあるので当日は無理だった。クレジット・カードでもあればローンでもできたのに。これからは危険分散として、カードの一部を財布以外にも別々に保管しようと思う。遠征なんかしていて財布の盗難に遭ったら完全にアウトだからね!帰りの切符代を工面できなければ最悪のことになる。・・・ともあれ、今回は小銭が2500円ほどポケットに入っていたので、それで自宅まで帰り、妻に叱られながらも現金を用立ててもらえた。(最悪、帰る小銭も無ければ交番で5000円くらいまでは貸してくれるようだ)

無事、運転免許証の再発行ができた時点で、午後三時。まずはホッとしたら、足が勝手にストリップ劇場に向かった。ドタバタした一日だったが、疲労回復・精神安定剤にはやはりいつものようにストリップとなる。私はやっぱりストリップ病だね。

池袋ミカドで、仲良しの時咲さくらさんから「太郎さん、今日、なんか元気ないね。心配事でもあるの。」と顔を覗きこまれた。さくらさんには判るんだね~。さくらさんがますます愛おしくなる♡

 

 現金がたくさん入っていたので、お金をすられて、財布は捨てられることになるだろう。だから財布が戻ってくる公算はない。交番ではホテルに監視カメラが付いていたことを確認されたので、捜査してくれるものと期待していたが、後で確認しても捜査した形跡はない。警察は財布の盗難届くらいでは何もしてくれない。

 財布を無くすと、事務手続きがこれほど大変というのが身に沁みた。運転免許証に始まり、銀行カードやクレジット・カードの再発行、そして会社に紛失届を出して、健康保険証や社員証の再発行手続き、はては自宅と会社の合い鍵の手配。

 すぐには気づかなかったが、私は財布にストリップ観劇用のものがたくさん入っていた。まずは夜行バスの切符。一カ月先まで仙台往復の三回分を予約購入していた。予約切符は万一拾われて金券ショップに持っていかれる可能性もあり、再発行は効かないとのこと。そのため、再度、切符を購入するしかない。ただ、紛失した旨の証明書を書いてくれ、万一見つかった時には一年内なら返金してくれるようだ。しかし期待できそうにない。

 大きいのは前売り券。大阪晃生の回数券二枚分22,000円(一枚11,000円で四回入場可)、そして大阪東洋のプリペイド・カード五枚分(なんと額面六万円×5=30万円分、実際はその半額で購入したが)。安いからと先買いし、東洋はこの先2,3年間は入場料を買わなくても、これで間に合うと思っていた。金額的には圧倒的に痛い。しかし、嘆いても仕方ないので、(東洋は現在休館中でもあるが)もう閉館したものと諦めるしかない。他にも、渋谷道頓堀劇場の満券二枚を始め、各劇場のポイント・カードをたくさん無くしたのが、ストリップ通いするうえで結構大きい。

 

 これだけは後悔しても始まらない。

 キーの指しっぱなしという私の不注意であり、誰の責でもない。

 財布は戻ってこなかったが、すぐに何事もなかったかの如く普段の生活には戻った。確かに未だにいろいろと尾を引いているのも事実。ただ、お金はもちろん大事だが、お金で代替できるものならまだいいと考えるべきだろう。

 

 

平成25年5月