これまで、ステージのテーマについて何度か語りましたが、今回、ステージのテーマはいかに踊り子さんの生き方やポリシー、趣味嗜好を反映するか、つまり踊り子さん自身を知らないとステージは理解できないことを痛感したので話してみたい。

 

 H21年6月中に神山杏奈さんがデビューした。ロック系にしては珍しく、DX歌舞伎からのデビューとなった。「ロック前の先行デビューでDX歌舞伎でのデビューみたいな感じ」と事務所から言われたようだ。

 スト仲間から、バストの大きな子という情報も入り、さっそく足を運んだ。「今回DXKでのデビューが実は急に決まって2日しか練習日がなかったので、本当に不安で胸がいっぱいです。」と言いながらも、元気いっぱいのステージ。なによりも私の手紙に対する反応が良くて、すぐに気に入った。叩けば響くという感じで、仲良くなれる予感がした。

 私が仙台ロックのリクエスト・カードに名前を書いた途端、なんと一ヵ月後の7月中に仙台ロック出演が決まった(もちろん既に決まっていたのだろうが)。

 連日仙台ロックに通いながら、杏奈さんは毎回お手紙を書いてくれたので話(手紙)が弾んだ。

 話の中で、杏奈さんがDIR EN GREY(ディル・アン・グレイ)というバンドの大ファンであることが分かった。残念ながら私はそのバンドを知らなかった。オープンとポラ時のバック・ミュージックになっていると聞いて、注意して聴いてみたが全く知らなかった。彼女が熱く語ってくれたので、私は帰宅してインターネットでそのバンドを調べ、そのことを手紙に書いてみた。興味をもってくれたことに彼女は歓喜。お陰で、その週は楽しい文通ができた。

 

 杏奈さんの次の公演がまたその一ヵ月後の8月中、浜劇。お盆休みに応援に行った。

 ステージが始まった瞬間、私は驚いた。なんと新作! まだデビュー3週目にして新作を披露している。しかも、後で杏奈さんに聞いたのだが、今回の作品は「振りも選曲も衣装も自分で考えてやりました」とのこと。

 杏奈さんの作品にかける熱い想いを感じ、さっそく感想を書いてあげようと思った。また、杏奈さんからも「感想を聞かせてほしい」と熱望され、「太郎さんなら感じてくれるはず」と期待される。

 彼女の期待に叶えるべく、作品を真剣に観ていたのだが、最も大切なストーリー、テーマ(コンセプト)がよく分からない。正直、かなり悩んでしまった。

 

 観たままを述べてみる。

 最初の曲では、ピンクのドレスに身を包んだお姫様が登場。オルゴール人形に扮し、機械的な動きを披露。このパントマイム調の動きが鮮明な印象として残り、作品全体を通して客の心象を捉えている。これだけでも成功。曲が変わると、オルゴール人形はまるで魔法が解けたように人間のお姫様に戻る。

 次の場面は、黒い革ジャン風の上着をまとい、まさに今風ギャルの装い。軽快に踊る。バンド追っかけがイメージされ青春を謳歌している感じ。

 最後のベッドでは、白い縦じまのワイシャツに黒いネクタイで登場。しっとりとベッド・ショーを演じる。

 この三つの構成から、どういうストーリー、テーマを捉えればいいのだろうか?

 私は「杏奈さんの憧れ、夢の世界」というテーマを思いついた。お姫様は女の子の憧れ、また今風に遊びたい欲求、最後に好きな異性に抱かれたい願望、という感じかな。ちょっと無理やりの理屈かなとも感じたが、これ以上は思い浮かばなかった。

 この感想文を渡す直前のステージを観ていて、ハッと気づくものがあった。曲である。杏奈さんの好きなDIR EN GREYの曲がたくさん使われている。先にこのバンドのことを話したが、私はインターネットで知識として調べたものの、肝心の彼らの曲を聴いていないため、今回の作品がDIR EN GREYの曲がベースになって作られていることを見落としていた。

ポラ・タイムで、この感想文を渡すときに「衣裳にばかり気をとられていたけど、ポイントは曲なんだね」と杏奈さんに話したら、嬉しそうに頷いてくれた。

 次の回に杏奈さんから丁寧なお返事がきた。

「感想ありがとうございました。さすが太郎さん。素敵な解説です。だいたい合ってますよ。オルゴール人形はある国のお姫様の心の中で、2曲目は何不自由なく生きてきたお姫様の現在の気持ち~・・・3曲目はもう1人の自分・・・4曲目のベッドはそのお姫様が会えない彼を想って苦しみもがく様・・・みたいな感じです・・・。結局彼に会えないまま・・・彼の訃報だけを聞いてしまった、悲しい結末でした。きっと誰もが憧れるお姫様だって、人から見たら幸せに見えてもいろんな感情になったり、苦しんだりするって事を表現したかったんです・・・HAPPY ENDだけが結末じゃない・・・きっとそんな事のが多いような気がして・・・たまにそんなステージがあってもどうだろうと思って、振りも選曲も衣装も自分で考えてやりました。いかがでしょうか?? 」

 これを読んだ瞬間、これはDIR EN GREY(ディル・アン・グレイ)のボーカル京の思想を強く反映していると直感。今回の選曲の歌詞までは分析していないが、おそらく歌詞を反映した内容になっているはず。

 杏奈さんは以前、DIR EN GREYについて、こう語ってくれた。

「彼らのやりたい音楽っていうのは、ハッピーエンドだったり、楽しく愉快な音楽とはかけ離れていて、人の痛み、苦しみ、汚なさを全力で表現するもの」「そういうアンダーグラウンドな人の隠したがる部分をあえて表現する人間がいてもイイんじゃないかっていう事で作られたバンドなんです。」

 まさに、DIR EN GREY(ディル・アン・グレイ)の世界をステージ作品に昇華させたかった杏奈さんの気持ちがストレートに伝わってきた。

 

 今さらながら、ステージというのは、その踊り子さんの生き方やポリシー、趣味嗜好を理解しないことには本当の真意は掴めないことを痛感した。

 以前、お気に入りで応援している相馬ルイさんの新作を観て、感想を書いてあげようと思ったが全く理解できなかったことを思い出した。三つの構成がバラバラで、ストーリーやテーマが理解できなかった。正直言って、こういう作品構成にしたルイさんの思考回路を疑ったほど、私は悩んだ。あきらめた私は、ルイさんに確認した。その作品はパチスロのキャラクターを三つ演じているとのこと。ようやく、絡み合っていた紐が一つの線でつながった。もやもやしていた霧が晴れる思いだった。

 ルイさんはパチスロの名手。踊り子をやる以前はパチスロで食べてたというほどの腕。パチスロをやるストリッパーとして有名な彼女ならではの発想である。パチスロ好きにはルイさんの作品はたまらないだろうな。私はパチスロをやらないので、その喜びを共有できないのが残念なところ。

 

 ストリップというのは、踊り子さんが作ったステージを客がただ観て楽しめばいいという考え方もあろう。しかし、本当にステージを楽しむためには、そのステージを創り演じている踊り子さんの真意を知ることが必要だと思う。それにより、ステージを何倍も楽しめる。

 だからこそ、踊り子さんとのコミュニケーションを大事にしたい、と私は思っている。

 

平成21年8月                                浜劇にて

 

 

 

【参考】DIR EN GREY(ディル・アン・グレイ)についての交換文章

<杏奈さんからの手紙>

 突然ですが、私の好きなバンド「DIR EN GLEY(ディアングレイ)」について少し語らせて下さい。はじめて彼らの音楽に出会ったのは小学校の頃でした。YOSHIKIのプロデュースでシングル3曲リリースデビューでメジャーに進出してきました。インディーズの頃でも関西では大人気で念願のメジャーデビューで、しかもXJAPANのYOSHIKIプロデュースだったので一時期テレビでもかなり取り上げられました。でも、彼らのやりたい音楽っていうのは、ハッピーエンドだったり、楽しく愉快な音楽とはかけ離れていて、人の痛み、苦しみ、汚なさを全力で表現するものなので、一般には受けなくなりました。もちろん彼らも、売れたいとも思っていたわけではなく、そういうアンダーグラウンドな人の隠したがる部分をあえて表現する人間がいてもイイんじゃないかっていう事で作られたバンドなんです。自分達のやりたい事をやり続けて10数年。今では海外のツアーに行く程向こうでは大人気になりました。日本よりも表現の自由がきくし、認められやすい環境だったんですね。昔から知ってる私としては嬉しい限りです。

 

<杏奈さんへの私の手紙>

DIR EN GREY(ディル・アン・グレイ)についてたくさん書いてくれてありがとう。杏奈さんの熱い気持ちが伝わりましたよ。

 実は、ポラ時とオープン時に注意して曲を聴いていましたが、残念ながら聴いたことがありませんでした。名前も知りませんでした。私は学生時代にはよく音楽を聴いていましたが、最近はカラオケばかり。ただオリコントップ30位くらいまではいつもチェックしているつもりでしたが、私のカラオケ対象からは漏れてますね(申し訳ありません)。グレイとかラルクは好きでよく歌っていましたが・・。

 興味をもったのでインターネットで調べてみました。

 バンド名も変わっているよね。「Dir en greyの意は、「Dir」がドイツ語で「銀貨」、「en」はフランス語で「〜の」、「grey」は英語で「灰色」を合わせ、“灰色の銀貨”という意味であるとされている。言葉そのものの意味よりも、発音したときの響きが良かったからつけたというのが理由だと語っている。」

 杏奈さんが好きと言っていたボーカルは京という方なんですね。「京(きょう 1976年2月16日 - )Vocal京都府出身、血液型B型。身長・公称160cm」まだ33歳だ。

「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受ける様々な心の痛みを世に広める」という意志でこのバンドを結成。すごいポリシーだ。人間のもつ心の奥深い部分をえぐらないと表現できない。それには辛い作業が伴うはず。このポリシーを貫くことは本当にできるんだろうかと思ってしまった。歌詞は全て京さんが行っているということは、このバンドはまさに彼のポリシーそのものなんですね。

 彼の活動記事を読みながら、私の想像を絶するものがありました。

「京はバンドの活動を通して幾度も怪我や病気にかかっており『MACABRE』発売時のツアー中に突発性難聴を患いツアーを中断、左耳の聴力を失う。この事故からライヴ活動に復帰した後、ステージ上では以前にも増して過激なパフォーマンスを行うようになった(「リストカット」(鬼葬)「体中を引掻き血を流す」(鬼葬〜)「自ら頬を殴り吐血」(VULGAR)「歌いながら自慰的行為」(VULGAR)「口の中を引っ掻き吐血」(Withering to death.〜)など)。

また『MACABRE』以降はヘヴィロックハードコア・パンク、またオリエンタル民俗音楽など多くのテイストを取り入れていった。メジャーデビュー以降、メイクを落とし、曲調もポップな路線へと変化していくヴィジュアル系バンドが大勢を占める中で、彼らは更に自身のスタイルを追求し貫き続けた。近年は海外進出し海外でも注目されている。」

 この京という人に底知れぬ魅力を感じますね。存在そのものにセクシャル・アピールを覚えます。杏奈さんが憧れてずっと恋をしているのが理解できそうです。

合わせて、音楽性は全く違いますが、尾崎豊さんがもつ夭折の儚さを彷彿させられました。京さんにも生き急いでいる輝きを感じます。(気に障ったらゴメンね)。私が童話作家として憧れる宮沢賢治や詩人の金子みすず、中原中也もそうなんです。

今後、私なりにDIR EN GREYと京さんを注目していきたいと思いました。