さて最初から変な質問で恐縮ですが、 ステージの上ではどこに目線を置くようにしていますか?

 先日、ある新人の踊り子Hさんのデビュー・ステージを観ていて、ベッド時の視線に違和感を覚えました。ずっと天井の方に視線をもっていってるのです。

 新人だから、どこを見ながらベッドをすればいいのか分からないだろうし、お客の視線が怖かったり恥ずかしかったりするのは当然だと思います。ただ、それにしても、これまでの新人さんにはない不自然さを感じてしまいました。早速お手紙にその旨をコメントしたのですが、よく考えてみたら、指摘するにしても次にどうアドバイスしていいか私自身わからない。単に「不自然に感じるけど、今は仕方ないし、そのうち慣れてくるさ。先輩のお姐さんに訊いてみたらいいよ」と述べるにとどまりました。

 

 だいたい踊り子さんによって、目の置きどころは決まっているようです。おそらくこれについて正解というのはなく、ある意味それが踊り子さんの個性にもなっています。

 立ちダンスの時は、ステージ正面、特にライトアップしているときはそのライト周辺を見ています。足元が気になっても、下を向いてはダンスが死んでしまいます。気が散らないように正面だけ見ている人もいますが、お客さんの顔をときどき見ながら笑顔をふりまいてくれる人の方が感じがいいですね。後者にはそれなりの精神的余裕がないとできないのかな。先の新人Hさんも、お客の顔を見る余裕なんかなく、ひたすら正面を見て踊っていました。

 問題はベッド・ショーのとき。

 ある踊り子さんは、出し物に専念することでお客に一切視線を合わせない。うつろな眼差しで、ときに目を瞑って、まさに自分の世界に没頭している感じ。

 ある踊り子さんは、うつぶせになって顔を上げ、盆の動きに合わせて、お客の顔を一人一人眺める。新人さんでもやる方がいるがけっこう度胸がいるのだろうな。踊り子さんと目が合って下を向いてしまう恥ずかしがり屋のお客もいるが、たいがいのお客は踊り子さんの美しさに見とれ、かつ微笑んだりする。一気に踊り子さんの魅力にはまる効果があり、ルックスに自信のある方にはお勧め。

私は新人の踊り子さんに、お客のハートを射止めるひとつのアドバイスとして「目で殺す」という話をよくする。目は口ほどにものを言うので、一瞬で相手の心をつかむことができる。最もポピュラーなのは笑顔であり、ときに目でセクシーに挑発することもできる。もう引退してしまったが、デビューしたての椎名実果さん(H18引退)にその話をしたら、次のステージのとき盆の上で私の視線からじっと目を離さなかった。私も言った手前、目をそらすわけにはいかない。その時間がやけに長く感じた。私のアドバイスを素直に実行してくれたのだが、これではまるで睨めっこ状態。でも私個人としては凄く嬉しかった記憶がある。これだけ可愛い女の子と見つめ合えるなんて、なかなか経験できませんもんね(笑)

 やはりベッド・ショーの中でお客さんの方にさりげなく微笑めるようになれば本物かなと私としては思います。自然にお客と目があっても動揺しない、そのためにはある程度の精神的余裕が必要になりますね。

 

 もう少し話を進めます。

 人と話すときには相手の目を見て話しなさい、とよく云いますよね。これは自分の話したことを相手がどう感じたかが相手の表情で分かるからです。相手の顔を見ないで一方的に話してもそれは会話とは云いませんよね。

 ステージにも通じるものがあるように私には感じられます。ステージとは客を無視して一方的に踊り子が踊っていればいいというのではなく、お客が自分の踊りにどう反応しているか、それをお客の顔から感じ取らなくてはならない。

ステージというのはお客との会話といえないかな。

 ステージはやはり客あってのステージです。お客と一体になってステージが盛り上がったときが最高です。そのためには客の反応を見ながら乗っていかなければなりません。客の反応というのは、ダンスでは手拍子であり、ベッドではお客の固唾を呑むような静寂感とクライマックスの盛り上がりです。踊り子はそこに拍手と熱い視線のシャワーを感じるはずです。

 

 他人の顔というのは自分の顔を写す鏡でもあります。お客の顔には自分が見えます。つまり自分のステージをどう感じているかお客の顔を見れば分かります。

 きっと最終的には、お客の顔がすべて鏡になって、ステージ全体が自分の顔に写る、つまり場内が自分色一色に染まったときに最高潮に達するのだと思います。これがお客と完全に一体になった陶酔感です。

 これは究極の姿ですが、そうなるためにもお客の反応を感じられるよう、お客の顔をさりげなく見れるように心掛けたらいいと思います。

 Hさんのような新人のうちは、知っている顔がいないかなぁと客席の方を見ることから始めたらどうでしょうか。