今回の題名は「さよなら、仙台ロック(その10)」です。
このシリーズを書き始めて、もう10編目になる。前回の9編目で終わりにしようと思っていたものの、関東に来て一ヶ月が経過しようとしているのに未だに自分の中で仙台ロックへの想いが断ち切れないでいる。10月の仙台ロック公演のポラや頂いたお手紙を読み返すたびに胸に込み上げるものがある。
11月に入り、新しい生活に漸く慣れ始めた頃から、また劇場通いを始めた。まずは、仙台ロックLASTでお世話になった踊り子さんに御礼と関東に戻ったご挨拶に伺った。浜劇の矢島愛美さんへ、SNAの安藤アゲハさんへ、DX歌舞伎の雪見ほのかさんへ、そして川崎ロックの武藤小雪さん、木村彩さん、夏木りりかさん、青井れいみさんへ。皆さん、こんなに早く私に会えるとは思っていなかったと喜んでくれた。
ちなみに、木更津で仕事をしているので、一番早く行ける劇場は川崎ロック。車でアクアラインにのって行けば一時間ほどで劇場に到着する。仕事が早く終わると、ストリップに行きたくて体が疼いてくる。就業後どんなに急いでも劇場到着は18時半過ぎになるので三回目の三番手に間に合うかどうかのタイミング。トップと二番手の三回目ステージが見れないのが残念。仙台ロックの場合は五人香盤だったので、19時までに行けば三回目トップから観れたのを思い出す。川崎ロックは六人香盤なので仕方ない。
川崎ロックに続けて通ったら、踊り子の皆さんに「関東でもたくさん会えて嬉しい。まるで川崎ロックが仙台ロックになったみたいね」と喜んでもらえた。川崎ロックがこれからのホーム・シアターになりそうな予感がする。
さて、11月結の川崎ロックに行ったとき、灘ジュンさんが新作を披露していた。二個出しだったので、四回目ラストステージで初めて新作を拝見した。
最初のうちは華やかな衣装で踊るジュンさんを楽しく眺めていたが、次第に私の中にぐぐーっと迫ってくるものがあった。翌日もう一度記憶を辿って作品分析してみると、この作品のもつスケールの大きさと奥深さに関心が湧き、作品構成をじっくり考えてみた上で感想レポートをまとめてみた。そして、それを翌日ジュンさんに渡した。
次のとおりの内容である。
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新作をまだ一度しか拝見しておらず、ステージ内容を十分に理解していない段階ですが、少し感想を書かせてもらいました。
はたして今回の作品の演目(テーマ)は何だろうか? 私の関心はその一点に集中した。
第一印象に残ったのは、全く違う二つの華やかな衣装・・・
最初に、銀色のマントを頭から羽織ってステージに登場。マントの下には銀色に輝く和服姿。しかも、キラキラと光る小さなミラーボールを手に持っている。
すべてが銀色ずくめ。銀色の着物を初めて見たし、マントとミラーボールとの組み合わせも斬新。
ジュンさんの踊りはまさに「神々しい舞い」・・・銀色は神々しさを強調している。まるで、ミラーボールを地球に擬(なぞら)えて、地球を温かく守る女神さまという印象。
二つ目の衣装は、古代ギリシャの白い衣装に、オリーブの冠をかぶり、緑色の布をマフラー状に首にかける。オリーブと布の緑がとても目に優しい。ここでも、二つの銀色のボールをもって踊り、そしてベッドへ移っていく。ベッドでは、盆の縁に二つのボールを置き、そのボールの放つプラズマに挟まれた形で演ずる。まるで神聖なお祈りを見ているようだ。
オリーブの冠はマラソンの勝者(orオリンピックの勝者)に与えられるものだが、もともと古代ギリシャの競技会では月桂樹で作られた冠が与えられた。古代ギリシャ・ローマでは月桂樹を神聖視し、その葉で作った冠は勝利や栄光の象徴だった。月桂樹もオリーブも共に地中海沿岸原産で、月桂樹はクスノキ科で、オリーブはモクセイ科の常緑高木。クレタ島には、イダ山に住む勇者が、オリンピアを訪れて兄弟と走り比べをし、勝者をオリーブの冠でたたえたという五輪発祥伝説があるので、オリーブの冠も月桂樹の冠(月桂冠)も同義と考えられる。
オリーブの葉をハトと共に平和の象徴にしたのは旧約聖書による。『旧約聖書』の「ノアの箱舟」(創世記第8章)では、放ったハトがオリーブの枝をくわえて戻ったことから、ノアは、神の怒りである洪水が引いてふたたび大地が姿を現したことを知る。以来オリーブをくわえたハトは平和の象徴とされ、国際連合の旗のデザインにはオリーブの枝があしらわれている。
こうした文化史を背景にして新作を見てみると、また違った味わいが出てくる。
二つのボールからは、アダムとイブが連想される。そのため、地球(人類)を生み出した女神の舞いというイメージまで膨らむ。
そう考えると、全く違った二つの衣装は、同じテーマを持つことが分かる。
今回の作品のテーマは、「アース(地球)神」という象徴なのではないかな。
地球上には、八百万(やおろず)の神々が宿る。
また、地球そのものがひとつの大きな神と云える。私はそれをアース神(造語)と呼ぶ。
そして、その地球をも包み込む大いなる神も存在する。それは宇宙神。
その宇宙神のひとつに太陽がある。今回の作品では銀色と緑が強調されていることを鑑みれば、テーマとなる神は地球を優しく包み込む太陽神という解釈もできそうだ。
どんどん瞑想が広がるにつれ、この作品のもつスケールの大きさ、奥深さに驚嘆するものがあった。的外れなことを考察していたらごめんなさいですが(笑)。
ジュンさんの作品はいつも私にいろんな瞑想をさせてくれる。だから、最高に楽しい。
素敵な作品の完成、おめでとうございます。合わせて、今回も素晴らしい作品を披露して頂いて本当にありがとうございました。
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すぐに、ジュンさんから嬉しいお返事が返ってきた。
「新作のこと早速書いてくれてうれしいです。太郎さんのイメージ、当たってますよ。」
「今回は正に地球をイメージしています。ガイアとかアースとか大地の女神、そしてアダムとイヴも!! 太郎さん凄すぎます。」「ステージの内に秘められたものを読み取ってくれるので凄いです!! だいだい自分の中でイメージするものがあっても見ている人にはそこまで伝わらないだろうな~と思ってるので。」
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今回の作品は私がこれまで拝見したステージの中で最も大きなスケール観をもつ。
しかも、私のもつ宗教観・宇宙観と相通じるものがある。だから同じ思想領域で作品を創造してくれたジュンさんに畏敬の念を覚えた。地球というイメージをステージの上で演ずるというのは非常に難しいこと。それを素晴らしい形にしたのだから、まさにジュンさんは表現者だ。
こうしたスケールの大きさに触れていたら、仙台ロックへの未練にこだわっている自分がやけに小さく感じた。なにかが吹っ切れた。
この作品は私の新しいストリップ・ライフ序章へのはなむけにさせてもらいたい。
平成21年11月 川崎ロックにて