ある踊り子さんから笑顔でこう言われた。
「ステージの上から、太郎さんが劇場に入ってきたのを見つけたら、急に緊張しちゃいました。」
どういうことかな?
私はいつも楽しそうにステージを見ているから、と喜んでくれる踊り子さんも多い。ときにステージの感想を書いたりするので、へたなステージはできないと感じてしまうのかな。ともあれ、私の顔を見つけて、気合を入れてくれるのは嬉しいことである。
話は変わるが、先日、床屋に行っていて、こんなことを考えた。
昔は散髪一回で3500~3800円もかかったし、客が多いとずいぶん待たされたもの。1~2時間マンガを読みながら待つことは普通だった。それに比べ、今は一回の散髪が10分で1000円、しかも殆ど待たされない。少し前はQBによく行っていたが、最近は駅前にできた床屋に通っている。そこだと、一回の散髪が1000円の上に、ポイント券に10 回スタンプを押すと一回無料のサービスがあるため、一回の散髪が1000円以下の計算になる。
とにかく、私は自分の髪にお金をつぎこむ価値を感じない。娘が小さい頃、一緒にQBに行くと「私は15分かかったけど、お父さんは5分で終わったわね。2人で元をとった計算ね」と言われた。私は自分の散髪に時間も金もかけたくない。(笑)
だから、どういうふうにしましょうか?と尋ねられても「いつも通りでいいよ」と愛想なく答える。髪型を選べるレベルではない。間違っても、郷ひろみのようにして下さい!とは言えない。(笑)
床屋さんが散髪の途中「後ろはこのぐらいでいいでしょうか?」と尋ね、私に眼鏡を差し出す。私はわざわざ眼鏡をかけて確かめる必要はないと思っている。でも、せっかくの厚意なので、眼鏡をかけて答える。「はい、けっこうです!」 正直言って、私は後方から自分のヘアを眺めるられるのは好きでない。人から見られるのも嫌なのに自分で見るのはもっと耐えられない。要は、散髪の出来具合になにも期待していないのである。
言葉や態度で表してはいなくても、そうした客の気持ちは何となく床屋さんに伝わるのだろうな。つまり、客が期待しないと、床屋さんもさぞかし気合が入らないだろうなと思った。
下世話(げせわ)な話をして失礼しました。
思うに、何事につけ、自分が真剣な気持ちで相手に接するからこそ、相手もそれに応えて真剣に対処してくれるもの。
仕事でも一生懸命に接してくれる相手には真摯に対応する。いい加減なやつだと感じたら、真面目に相手をする気がしない。
恋愛だって同じ。真剣に交際を申し込んでくれるからこそ、相手に気持ちが揺らぐ。
私はストリップが大好きだからこそ、ステージを一生懸命に見ている。ステージの感想を書いたりすると「よくステージを見ていますね」と感心されたりする。そういう私の気持ちが踊り子さんに伝わり、少しでも気合を入れたくなったとしたら、それこそストリップ・ファン冥利につきる。
ある踊り子さんの言葉を思い出す。「いつもステージでテンションを維持することって難しいのよ。今日は気持ちが乗らないなぁと思うこともたびたび。そういうとき、知っているファンの顔を見つけると、頑張るぞ!って思うものよ」
そんなふうに踊り子さんのテンションをあげさせる客の一人になりたい、と私はいつも念じて止まない。
平成22年10月