先日、夕貴美保さんの熱烈なファンであったAさんを久しぶりに劇場で見つけた。
以前、彼は夕貴美保さんが出演しているときには必ずいた。美保さんのファンは熱烈な方が多く、他にもみかける顔はたくさんいたが、その中でも彼の存在は「Aさん=夕貴美保さん」と云えるほどであった。彼の風貌からして夕貴美保さんの用心棒みたいな気がしていた。ポラは毎回毎回どれほど撮ったか分からないほど持っていたろうし、彼女のオークションなんかでも驚くほどの大金をはたいて入手していた。彼の部屋はきっと夕貴美保さんのグッズで埋め尽くされ、まさに生活そのものが夕貴美保さんだったと推測される。
昨年末に夕貴美保さんが引退されたとき、これからのAさんはどうするのだろうかと他人事ながら心配していた。
そんな彼をひょっこり浜劇で見つけたから、おやっと思った。
見ていたら、加瀬あゆむさんの追っかけをしていることが分かった。私はたまたま二日続けて浜劇に通ったが、案の定Aさんも二日来ていた。他の子のポラは一切撮らずにひたすらあゆむさんだけポラを撮っていた。
夕貴美保さんのときは、彼女の用心棒のごとく一番客の存在を示していた。みんなが一目置いていたと思う。それに比べて、あゆむさんのファンとしては後発隊であり、あゆむさんを一生懸命応援している姿を見るに、私はなんか悲しいものを感じさせられた。
彼の青春は夕貴美保さんだった。9年間よそ見もしないでひたすら美保さんを応援し続けた。50前後かと思うが、美保さんと出会って、結婚願望も捨て去り、今この歳になってしまったという感じがある。美保さんと出会わなかったら結婚もできて幸せな人生を送れたかというとそんな保証はない。彼が夕貴美保さんの引退をどんな気持ちで観ていたか、誰も窺い知るところではない。失望か、はたまたひとつの区切りとして受け止めたか。
美保さんが長い間応援してくれたAさんに感謝していたことは確かだろう。それだけでAさんは救われるのかもしれない。
ただはっきり云えることは、彼はこの9年間幸せだったということか。
踊り子さんとの出会いは縁である。たくさんいる踊り子さんの中で、たった一人でも夢中になれる方を見つけた人は幸せだと思う。彼女に会うために毎日ルンルン気分で劇場通いできる。それが幸せでなくてなんだろう。
恋愛している人間は幸せである。歳をとれば、なかなか恋愛気分に到達するものではないから、それができたのだから何を後悔することがあろう。
踊り子さんとの出会いと別れはひとつのドラマである。二人は劇場という舞台でドラマの主人公役を演じ切ったと思いたい。
平成21年4月