先日、新宿ニューアートで観劇している時、ステージ真正面の席にメガネをかけた20代後半くらいのサラリーマン風の客が目に付いた。見たことのない方だ。彼はやたらと嬉しそうにステージを観ていた。踊り子さん全員のステージを、全ての曲を口ずさみながら、一生懸命手拍子していた。また全ての踊り子さんのエロポラをせっせと撮っていた。踊り子さんにとってはステージで踊ってて気持ちのいいお客なんだろうと思う。

 その人のにやけ顔を見ていると何かこちらまで恥ずかしくなる気がした。まるで昔の自分を見ている感じがして、私は思わず苦笑いしてしまった。

 おそらく彼はストリップが初めてか久しぶりなんだろう。彼は全ての踊り子さんに興味をもって、そして踊り子さん全てに魅力を感じているようだった。

 彼の中に、<ストリップの原点>を見る思いがした。

 

 というのも、最近の私は、全ての踊り子さんのステージを平等には観れなくなった。

 理由のひとつはストリップの観過ぎかな!?(笑) 1月に1回くらいのペースだったら全ての踊り子さんが新鮮に見えるのかな。

 また、理由のひとつには私のストリップ志向として踊り子さんとの擬似恋愛を楽しみたい願望がある。1人の踊り子さんに恋をすると他の踊り子さんが相対的に関心が薄れてくる。そのため、自分の気に入った踊り子さんのステージが中心となり、関心のない踊り子さんのステージは観なくなった。私の応援スタイルが手紙を中心にしているため、お気に入りの踊り子さんのステージ以外の時間をできるだけ手紙を書く時間にあてたいためである。既にワープロで印刷してある手紙の余白にその場で思いついたステージの感想等を書き込んでいる。臨場感ある生の声だから、ほとんどの踊り子さんは喜んでくれる。そうしたお気に入りの踊り子さんとのコミュニケーションを楽しむために当然書く時間が必要。そのために、お気に入りの踊り子さん以外のステージのとき席を外したりする。

 このことが良いとか悪いとか言う前に、なぜこういうことになったかを考えてみた。

 

 昔のストリップにはコミュニケーションというものがなかった。演劇を観るのと基本的に同じ。今の浅草ロックをイメージすればいい。せいぜいステージ上で踊り子さんと話すとすれば、入れポン出しポンのときに片言喋るくらいか。また昔は本番生板ショーなんかがあったのでお気に入りの子のときに手を挙げてステージに上がればまさに‘体話’ができた(笑)。あとは花束かプレゼントを渡すときに、手紙でも添えるぐらい。ほとんどコミュニケーションとは言えないレベル。

 女性とのコミュニケーションを求める場合はキャバクラなどに行けばいい。逆にそういうところは上手に会話ができないと場がしらけてしまう。その点、ストリップというのは本来コミュニケーションが不要な遊び。ただ黙って踊り子さんのステージを眺めていればいい。

 ところがポラが登場することで状況は大きく変化した。お客は大好きな踊り子さんと話す機会が与えられた。また踊り子さんはポラを売るために、お客とのコミュニケーションを求められる。短い時間とはいえ、愛想良く笑顔で接しなければならない。私のように、手紙でコミュニケーションを求める困った(?)客まで現れる。

 踊り子とは本来ステージで踊って見せることが全て。ポラなんかは余分な仕事ではある。が、今やポラ収入なくしてストリップ業界は成り立たない。ポラ収入は生命線になっている(TSの社長がしみじみそう言っていた)。こうしたポラの功罪については前に話した。

 ポラがなかった当時は、私は全ての踊り子さんのステージを平等に観ていた。時には見るに耐えられず席を外すこともあったが(笑)。昔は自分の母親以上の高齢者もたくさんいたからなぁ。外見の好き嫌いで席を外すことはあっても、踊り子さんの性格とか相性で観る観ないを判断することはなかった。

 ところが、ポラが始まり、こうして手紙でコミュニケーションを求め出すと、踊り子さんの性格や相性が大きく左右し出す。コミュニケーションを楽しむには、外見よりも性格や相性がはるかに大切。

 つまり、ポラがストリップにおける踊り子さんとお客との人間関係を作り出したのである。

 これは「ストリップのキャバクラ化」ともいえそうだ。そういえば最近、郡山ミュージック等でストキャバが流行っているようだ。踊り子さんがステージから降り、お客と一緒に会話したり、時にお酒を飲んだり、中にはお触りOKの子もいたり。新しい試みというが私の感覚からは邪道。ここまではいかなくても、ストリップにおいてコミュニケーションが求められてきたことは間違いない事実だろう。お客も、ストリップに癒しを求め、踊り子さんにかまってほしくて劇場通いしている輩はたくさんいる。こうした流れは無視できない。

 

 そもそも人間は、人間関係を避けては生きていけない。人間とは人間関係の海に浮かぶ小船に過ぎない。

 ブラウン管の中のアイドル(おっと、この表現は古いな)に憧れたり、好きな歌手のファン・クラブに入ったり、宝塚劇場に通ったりするのは、憧れの対象と「遠い関係」にある。本来ストリップはこれらと同様のもので、踊り子さんとは「遠い関係」にあった。それがポラの出現で「近い関係」になっていった。お客にとっては非常に嬉しいことである。踊り子さんも、こうした流れを受け入れて、お客とのコミュニケーションを大事にしていくしかない。

考えてみれば、以前は外見だけで全て判断されていたものが、今は自分の個性/性格でファンを増やすことができる。コミュニケーションをうまくこなせば自分のファンをたくさん作れる。そうやって作り上げた多くのファンの応援を受けて盛り上がるステージというのは掛け値なしに最高である。

 

 

平成21年3月                          仙台ロックにて