お客というのは、ちょっとしたことで踊り子さんを好きになったり、些細なことで嫌いになったりする。
先日、私のストリップ仲間Hくんが「もう踊り子Kさんを応援するのは止めた」と言い出した。Kさんはデビューして2週目の新人さん。HくんがKさんを観るのは今週からで初日の昨日に引き続き2日目。だから、ファンになるかどうかを決めるにはまだ日が浅い。
Hくんが言うには、四回目のポラでサインを断られたという。昨日も来ているし、明日も来るからと自然にポラ・サインを頼んだにもかかわらず、四回目はサインを受け付けないことになっていますと無下に拒否されたというのだ。かくいう私もKさんに三日後に来るからとサインを頼んだが特に何も言われず受理してくれた。Hくんの場合はエロポラだったせいかなぁ。
私から見ればKさんは魅力的な女性なのだが、Hくんはその一件でKさんのステージはもう観ないと言っていた。Hくんは気に入った踊り子さんには毎日通い毎回ポラを買うほどの熱心なストリップ愛好家だから、彼のようなファンに気に入ってもらえたらいいのになぁと思える。しかし、踊り子のKさんはデビューしたばかりで、その一言がそんな意味をもったなんて思いもよらないだろうし、また打算的にお客に迎合するつもりもなかったのでしょう。正直、Kくんもそれぐらいのことでステージも観ないなんて少し過剰な反応だと思う。
踊り子さんとお客(特にファン)の間には「相性」というのがあるなぁといつも感じる。
私の場合、ファンになるきっかけというのは性格的な部分が大きい。最初に目をひくのは外見かもしれないが、いくら外見がよくてもファンになるとは限らない。
どうもストリップのお客は女性にもてない小心者が多いんですね。私も含めて、特に常連さんは。よく仲間内で「あの踊り子さんは強いから苦手なんだよ」という話が出るくらいなんです。もちろんお客もみなさん好き好きだから色々な方がおりますけどね。
性格の問題はさておき、一番気になる点は、ファンが求めているものと踊り子さんがお客に与えようとしているものとのアンマッチかな。
たとえば踊り子さんの中には、お客よりもステージ第一と考えて、お客がポラを買うのはステージがよかったご褒美と思っている方もいる。たしかにいいステージを努めたいという姿勢は立派であるが、ステージはお客あってのステージ、お客が第一と考えるべきなんだと思う。たいていの方はお客も大事だしステージも大事と両立した考えをもっているが、なかにはステージに力を入れすぎたあまりファンが離れていっているのを感じることがある。最初のうちはファンが欲しくて一生懸命にお客対応していたのが次第に自信がつき又ステージの面白さを覚えステージに懲りだす、と共にファン対応がなおざりになる、なんてケースはよくある。長く続けていればステージに夢中になる時期というのもあって当然だし、難しいところではある。しかし、せっかくのファンを逃がしてしまうのは残念なこと。
一見客と違い、私のような常連客がポラを買う理由、それは気に入った踊り子さんに接していると「楽しい」と思えるから。楽しいと思わなかったらお金を出してまでポラは買わない。
では何をもって「楽しい」と思うか。一言で云えば「自分にかまってくれるかどうか」という点に尽きる。
親にかまってほしい子供と同じようなものかな。NHKの「おかあさんといっしょ」という幼児向け番組があって、以前『かまって音頭』という曲を私の子供たちと聴いたことがある。「おかあさん、かまって! おとうさん、かまって! かまって、かまって♪」という歌詞が耳に残っている。ファンが踊り子さんに求めているのはこういう子供と同じような感情かもしれない。大の大人とはいえ、女性にもてない小心者であれば尚更こういう感情が残っていてもおかしくない。
具体的にかまうというのはどういうことかと云うと、人それぞれ感じ方は違う。ステージ上で自分に向かってにこっと微笑んでくれただけで満足する人もいれば、ポラタイムで片言お喋りするのを楽しみにしている方もいる。ポラのコメントを喜ぶ人もいる。私の場合は手紙を読んでくれない方は私にかまってくれないことになる。つまり、相手に興味をもって接していれば自然とかまった状態になる。相手が興味をもっているかどうかは長く接していると分かってくる。人間は感情の動物ですから、とくに男と女はね。
人は多くの人間の中で生きていかなければならない。一個の人間として独立しているがゆえに、つねに孤独に苛(さいな)まれる。その心の空隙を埋めたくて、人にかまってほしくて、じたばたしているのが人間の生きている姿なんだと思える。
だから踊り子さんがファンの心を掴むのは簡単。かまってあげればいいんです。
ところが踊り子さんも生身の人間であるから、だれもかれもかまってあげれない。好き嫌いがあるし、時に生理的に受け付けないということもあるでしょう。そこに、踊り子さんとファンとの「相性」というのが存在する。
長谷川凛さんにはたくさんのファンがついている。あるお客が「凛さんは営業努力が行き届いているからね」という言い方をした。私はそれは違うと思った。私もファンとして彼女とは長く親しくさせてもらっているが、それは営業努力というのじゃなくて、彼女との相性、つまり彼女は多くの人と親しく出来る性格の持ち主なのだと感じている。彼女は自分では体育会系のせいか気が短いと言っているぐらいなので誰にでも迎合しているとは思えない。そんなことばかりしていたら疲れて大変。私は凛さんに接していると楽しくてしょうがない。凛さんはそういうことが自然にできる魅力的な女性なのである。だから応援したくなるのが当たり前。
個々に相性の話をし出すと止まりませんのでこの辺で打ち切りますね。
また長々と話してしまいました。気に障ることを述べてしまったらごめんなさいね。
ファンの中には、かまってもらえなくても夢中になって追いかけている方もいます。
恋は盲目ですから・・・本人がそれで幸せならかまいません。私がとやかくいうことではありません。
平成20年12月 若松にて