以前、常連さんが知らず知らずのうちに劇場に足が向くのは、そこが「男の居場所」として快適だからだ、という話をしたことがある。
では、一般のお客にとって「ストリップの居心地の良さ」というのはなんだろう。
お客にとってはストリップ劇場は入場料を払えば一日中居てもいい権利が与えられる。長くいると従業員から早く退場するように催促されるなどの居心地悪さというのは全くない。後から入場してきた客から席を譲れと迫られることもない。時間が許す限り、見飽きない限り、一日中居ることができる。
昔の映画なんかもそうだったな。しかし、今の映画館は席を予約して観るため完全入れ替え制になっている。喫茶店でもコーヒー一杯で長く粘っていたのは昔の話で、今はまんが喫茶でいた時間見合いでお金を支払う。つまり、ほとんどの遊楽場所というのは時間に応じた遊楽料を取られるのが常識化している。特に風俗なんかは1時間いくら、延長はいくらなど時間感覚はきっちりしている。逆に明朗会計でないと安心して遊べない(笑)。そういう意味から言っても、ストリップというのは良心的な風俗で、暇な男性にとってこれほどいい時間潰しはないのではなかろうか。
まぁ、そうは言いながら、大概は途中で疲れたり飽きたりして帰っていく。
ポラも買わずに、ただ黙々とかぶりつきで一日中観続けているファンもいる。これはこれで構わない。
大抵のファンはポラを買って踊り子さんとコミュニケーションを楽しむ。おそらく、そうでもしなかったら一日中は居られない。踊り子さんと仲良くなることによって、劇場はさらに居心地のいい場に変わっていく。
ところで、踊り子さんにとって劇場の居心地の良さとはなんだろう。
踊り子さんにとって劇場は仕事の場。しかも楽屋は女ばかりの職場。
私が会社の職場に気持ちよく居られる条件を考えてみると、しっかりと仕事ができて、周りから期待・評価・信頼されている点に集約されるだろう。いくら人間的に良くても仕事が出来ないと職場にいる意味がない。職場は仲良しクラブではないから、仕事を通じて貢献できることが絶対条件になる。仮に職場の人間関係が合わなくても、仕事ができる限り、職場に居る権利があることになる。
たとえば、楽屋の中でたまたま踊り子さん同士がうまくいかないとする。女の世界だからそういうこともままあるだろう。そういうときは10日間我慢するしかないと思うが、そういうのが嫌で辞めていく方もいるだろう。それでも、私の居場所はここと信じて、頑張れる要件とは何か。
ひとつは、いいステージをやっているという自負。いいステージをやる踊り子さんは踊り子さん同士でも一目置かれるだろうし、劇場側もそれをちゃんと評価して呼んでくれるし、従業員の対応もいい。ステージに対する自信の裏づけができてくると、劇場はとても居心地のいいものになってくるのだろう。
もうひとつは、いいファンがついていることかな。新人さんで、まだ全然ステージに自信がもてない方もいるでしょうが、そんな自分をも一生懸命に応援してくれるファンが付いてくれると、自分の居所があると確信できるんじゃないのかな。固定ファンが付けばポラもある程度の数は確保できるので劇場側も評価してくれる。
この二つが兼ね備わってくれば、劇場がどんどん居心地のいい場になってくる。
よくベテランの踊り子さんが、楽屋にどんどん若い人が増えてきて居場所がないみたいな話をされるが、少なくともこの二つの要件を満たしているうちは引退することを考えなくていいと思う。逆に、新人さんもベテランの方に圧倒されて気落ちすることもない。
お客も踊り子さんも、みんなでストリップを居心地のいい場にしたものです。
平成20年8月 仙台ロックにて