今回は「ストリップにおける大いなる思い違い」という話をしてみます。
ストリップの仲間内で、今のストリップ界で最も人気のある踊り子さんはという話題になると、東の横綱劇場であるロック系の灘ジュンさんと西の横綱劇場である大阪東洋ショーの稲森しほりさんの二人が断トツのトップ・スターとなる。個人の好みはあるものの、私としてもこの二人がトップ・スターであることは納得できる。ただ、二人の持ち味はずいぶん違う。灘ジュンさんは綺麗系、稲森しほりさんは癒し系として、他の追随を許さない魅力を持ち備えている。ステージや接客態度としては、私の感覚では、灘さんはサラッとしているのに対し、稲森さんはトロッとしたイメージがある。(ラーメンの味みたいな表現でごめんなさい)
この二人に限らず、好きな踊り子さんのことを話すとき、ファンは熱弁になり、ときに自分の彼女を自慢するような口調になる。
さて先日、二度目の関東来演になる稲森しほりさんを目当てで新宿ニューアートに行ってきた。ゴールデン・ウィークということもあって大盛況だった。
私は昨年(H18年)9月に川崎ロックで二度、そして翌月10月に出張ついでに大阪東洋で二度、彼女のステージを拝見している。
前にも書いたが、彼女の魅力をもう一度再確認してみよう。
外見は161cmの均整のとれたプロポーション、透き通るような白い肌、完璧だ。
なによりも魅力的なのは、ほわっとした和ませられる雰囲気。
ステージ上では、目があえば恥ずかしげに目を伏せる仕草がたまらなく可愛い。
ポラタイムで、初めてポラを買ったとき「真正面で一生懸命に応援してくれてありがとうございます」という挨拶をしてくれた。私のことを意識して見てくれたんだ、という嬉しさがこみ上げてくる。ついつい会話をしてしまう。お客は一瞬で彼女の虜になってしまう。
大阪東洋に観に行ったときも、稲森さんは、ステージ上で私と目があった時に私が大阪に来ていることに驚いた様子。先月川崎ロックで初めてお会いした時、私が仙台から応援に来ていることを知らせていたのでそれを覚えてくれていた。ポラの時に「太郎さん、わざわざ来てくれたの?」。名前までおぼえてくれていて感激。私が「たまたま大阪出張が入ったので東洋に観に来たんだよ」と言うと、稲森さんが「本当ですか? 無理していませんか? 身体が疲れているんじゃないですか?」と言ってくれた。こういう気遣いがますますファンの男心をくすぐってくる。
彼女の魅力は、ヌードの美しさは言うまでもないが、目を合わせるのが恥ずかしいとばかりに伏目がちにする様、お客をおぼえる記憶力の良さ、さりげなく話しかけてくる親しみやすさ、そしてファンへの心遣いなどが総合されて、多くのストリップ・ファンの心をとらえて離さない。いまやこの業界№1の癒し系アイドルとなっている。
仲間内で稲森しほりさんの話をすると、みんなが彼女の虜になっているのがよく分かる。しかも、自分にだけ優しいという思い込みをしている。私ですら、彼女の魅力を語るときに、先に書いたようにかなり自己中な表現をしているところ。
ストリップを観に来る人は女性にもてない小心者が多い。現実問題として、彼らがこれだけ綺麗な娘と仲良くできるわけがない。
しかし、男というのは、どんな奴でも、どんなに歳をとっても、女にもてたいという願望をもっている。どんなに釣り合わないと分かっていても、どうしようもない。女房から「お父さんもいい親父になっているんだから、若い娘に相手にされるわけがないでしょ」といつもたしなめられるが、分かっていても治らない病気。
ストリップというのは、そうした男たちに淡い夢を抱かせてくれる。私は以前からストリップは男の竜宮城とか擬似恋愛だという話をしているが、劇場内だけでいいから、素敵な彼女がいるバーチャルな夢を味わいたい。ひとときの「ときめき」を感じたい。
お客が勝手に「大いなる思い違い」ができるようカモフラージュしてあげるのが踊り子さんの大切なお仕事ではないかな。これは踊り子さんがお客を騙していることにはならない。いや、むしろ劇場内では大いに騙してほしいなと思う(笑)。
お客を劇場に引っ張るのは踊り子さんの魅力である。
また、踊り子さんはお客を劇場に足を向かせるように営業努力も必要だ。たとえば、ポラ撮影やポラ・サインなどで「また観に来てね」「また会いに来てくれるのを楽しみにしているわ」とさりげなく言うのも効果的。常連になれば「次は若松で待ってるからね」と具体的に催促できるし、「いつ来るかと待っていたのよ」と言われれば自分のことを意識してくれてたんだと思える。お客に気持ちよく思い違いさせるのもサービスのひとつかな。
男というのは、ときめき願望がある限り、女やギャンブルや趣味などに必ずお金を費やすもの。ストリップもそのひとつであるならば、男心を上手にくすぐり気持ちよくお金を落とさせるようにするのも大切な営業努力(テクニック)と思う。
ストリッパーというのは商品。だから、本当の恋愛の対象にはなりえない。そのことをお客もわきまえて、上手に楽しめればいいのだと思う。
そういう意味から、稲森しほりさんは最高の踊り子であると断言できる。
平成20年5月 浜劇にて