今回の題名は「さよなら、仙台ロック(その6)」です。
月末には仙台を離れるという10月、その10月頭の仙台ロック公演は思い出深いものになった。
デビューから一押しで応援してきた矢島愛美さんが10月頭にのる。私がいる間で良かったと喜んでくれる彼女。デビューから一年半で、なんと5回目の仙台ロック。ほぼ3カ月に一度のペースで仙台ロックにのってくれた。
今回は仲良しの@YOUも一緒。私も@YOUを4月のデビューから精力的に応援している。私が仙台にいるうちに仙台ロックにのることができて良かったと喜んでくれた。
二人で私の仙台ロック最後を飾ってあげると言ってくれる。愛美さんからは、今回の公演は太郎スペシャル大会にしてあげるねと言われ、内心、さて、どういうことかなと期待していた。
10月頭の香盤メンバーは次のとおり。
1番目: 矢島愛美さん
2番目: 桜沢美羽さん
3番目: 青井れいみさん
4番目: 藤咲茉莉花さん
5番目: @YOUさん
今回は一人一人に深い思い入れをもってステージを拝見できた。
桜沢美羽さんは池袋ミカド所属。ミカドの踊り子さんが仙台ロックにのるのは初めて。まだ二週目の新人さんだが、実は9月中のデビュー週に私は池袋ミカドで彼女のステージを拝見していた。出張ついでに寄って四回目一ステージだけ観たのだが、そのダンスの上手さに魅了された。自己流とは言っていたが、特にレゲエ・ダンスに感心した。そのとき仙台ロックにのるかもと言っていたがまさか実現するとは思っていなかった。二度目の再会となり、すぐに仲良くなれた。
青井れいみさんは9月頭に新宿ニューアートでデビュー、今回の仙台ロックが二週目という新人さん。デビュー週に二日拝見していたので私のことを覚えていた。デビュー週では私のことが一番印象的なお客さんだったと話してくれた。ちょっと見では可愛らしい外見なのだが、緊張のためか怯えているような暗い雰囲気をもっている。踊り子さん向きの性格ではないな、この仕事を続けられるかなと心配していた。だから、二週目が仙台ロックに決まったときには驚いた。彼女のことはまた後ほど触れる。
藤咲茉莉花さんとは2003年デビュー以来の長いお付き合い。仙台ロックでも一番多くお会いしている踊り子さんのひとり。今回の出し物を拝見してドキリとした。今年1月に引退したきりしまひなさんの引退作を演じている。茉莉花さんはひなさんと仲良しで、この作品を譲ってもらったらしい。茉莉花さんとは今回ひなさんの話でお手紙交換できて嬉しかった。仙台を離れるにあたって、大好きだったひなさんの作品に触れ、また感慨深いものを感じた。
さて、愛美さんがいう太郎スペシャル大会が私の楽日10/9(木)にあった。金曜日に出張が入っており、その週の楽日10/10(金)には出れなかったため。ちなみに、その前日の10/8(水)は台風のため休館になってすごく残念だった。
愛美さんがいう太郎スペシャル大会とは、新作の披露だった。この週に出したいとは前から言っていたが、なかなか踏ん切りがつかなかったようだ。でも、どうしても私に見せたいと、私の楽日に披露してくれた。未完成だと本人は言っていたが、よく出来た作品と思った。
第6作目に当たる「ティンカー・ベル」。大人っぽい作品「♂♀」の次はメルヘンだった。3作目「魔法にかけられて」に続くディズニーもの。
私のために披露してくれた愛美さんの気持ちに、私は感激で胸がいっぱいになった。
ステージ前半は、ティンカー・ベルの衣装に身を纏い楽しく踊り、後半は白いシュミーズでセクシーにベッドに入っていく。私はまさにピーター・パンになった気分で、夢の国を彷徨えた。ティンカー・ベルの妖精の粉を浴び、信じる心を持てば空を飛ぶ事が出来るというが、まさにそんな感じ。
そのとき、ここ仙台ロックはネバーランドになった。ストリップというのは、大人のネバーランド。男として、決して枯れてはいけない性、決して失ってはいけない愛を蘇らせてくれる。
私は童話を書くが、私の敬愛する宮沢賢治にはイーハトーブという世界観がある。これは賢治の心象世界の中にある理想郷(ドリームランド)を意味する。
同じように、私は仙台ロックを私のパラダイスにしたいという夢があった。踊り子さんは仙台ロックに来れば私に会える。私はいつもニコニコしながらお迎えする。今日のおやつを持参してくれる。いつも、エッセイや童話の入った手紙をくれる。踊り子さんはそうした太郎ワールドに触れることで、私と一緒になって、私が作り上げたドリームランドを楽しむ。
その世界を楽しむためのキーは‘愛’。私が踊り子さんを大好きになると同時に、踊り子さんも太郎ワールドを好きになってもらうこと。
今回、もうひとつのキーを発見した。それは‘ファンタジー’。夢(ドリーム)と置き換えてもいいだろう。愛美さんが創出してくれたネバーランドは、私が理想とするドリームランドに激しく共鳴した。
新人の青井れいみさんは毎日のように仙台ロックへ通ってくる私に、次第に笑顔を見せてくれるようになった。私が持参する仙台名物・仙台銘菓をすごく喜んでくれた。どんどん明るくなっていくれいみさんに私もまた惹かれた。彼女はまさに太郎ワールドを感じ、仙台ロックというドリームランドを味わってくれた。「いまだに自分のことでいっぱい×2なんです。お客さんの顔で分かるのはまだ太郎さんだけなんです。」 父性本能をくすぐられる言葉だ。そう言われれば、彼女を応援しないわけにはいかない。
仙台ロックには踊り子さんを元気づけるものがある。私というドリームランドがそのひとつになってくれているのかなと思うと無性に嬉しくなる。
10月結、私にとって最後の仙台ロック公演でも、まったく同じことを感じ、踊り子さんが演じるファンタジー作品に私の心が激しく波打った。
ひとつは武藤小雪さんの新作「あかずきんちゃん」。ご存知、あかずきんちゃんを物語風に、しかも可愛らしく&セクシーに演じてくれた。すぐに小雪さんに作品感想を書いて渡し、喜んでもらった。
もうひとつは雪見ほのかさんの周年作「オペラ座の舞姫」。最初にランプの仄かな光が幻想的な世界に導いてくれ、後半はバレエの要素を取り入れたダンス、まるで壮大なミュージカルを観終わった気分にさせられた。ほのかさんにもすぐに感想を書いて渡した。ほのかさんにステージ感想を書くのは初めてだったこともあり凄く喜んでくれた。
二人の演じるファンタジーの世界と、私のもつドリームランドがしっかり交わった。この狭い仙台ロックの空間が大好きな踊り子さんと私の夢の共同空間になった。
仙台ロックを去るということは、私にとってドリームランドからの卒業を意味するのかもしれない。単身赴任が終わり家庭に戻ることで、現実の世界が待っている。
しかし、大人もこうしたドリームランドを失ってはいけないと思う。だから私はストリップを卒業したくない。ストリップは大人のファンタジーランドである。劇場の扉を開ければ、いつでもファンタジーの世界に入れる。これからもファンタジーな気持ちでストリップを楽しんでいきたいと思っている。
平成21年10月 仙台ロックにて