『矢島愛美メモリアル』 ~突然の栗橋穴埋め
<栗橋大一劇場(2008.7.13~7.20)>
● 3週目は突然の栗橋
7月13日、愛美さんからメールが入る。なんと栗橋大一劇場からのものだった。
その週に栗橋の香盤に入っていた雪見ほのかさんが初日のステージが終わった時点で急病でダウン。後に従業員から直接聞いた話だが、ほのかさんを病院に連れて行ったら直ぐに点滴、余りにひどい状態だったので「こんな状態で踊らせるとはなにごとか!」と医師から厳しく叱られたらしい。もちろん2日目から降盤。急性甲状腺炎という病名が判ってからは投薬が効き、驚くべきに次の7月結の仙台ロック公演には復帰した。
愛美さんのところに穴埋めの依頼があったのは7月12日早朝。できれば今日から出演してほしいと要請されたらしいが、前日徹夜状態で寝不足のため、翌日13日からの出演になったとのこと。
私のところにメールが来たのは、3回目のステージ後。
「初乗りなだけじゃなく、 初トップバッターなんです! そして、穴埋めも初めて。。
そんな初めてだらけで、不安な感じでやってきたら、 今日は一回目から曲がずれて流れてしまい、 二曲目から流れたため、 頭の中ちんぷんかんぷん(笑)
えっ?とか言いながら笑うしかなく、 なんとかごまかしで踊り、 ベットが流れてる間に電話で音響さんに事情を話していて、一曲しか踊っていないという始末。。
ポラロイドが売れただけ奇跡です。
良く言えば、しょっぱなからそんなトラブルだったので緊張が吹き飛びました。これ以上の失敗はない!と。
なんとか後1ステージ!!」
アクシデント続きで散々なスタートだったようだが、愛美さん特有のプラス思考で乗り切った模様。
愛美さんのメールには、栗橋に応援に来て!とは書いていない。でも言外に、そんな気持ちを受け取った。すぐに、日曜日、楽日に応援に行くとの返信を送った。
● 初めての栗橋
私は関東の劇場にはよく行くが、埼玉の劇場までは行ったことがない。よく行く劇場だけでも、ロック系の三つ、新宿ニューアート、川崎ロック、浜劇、それにTSミュージック、DX歌舞伎、渋谷道頓堀、若松劇場とあり、一週間毎日違う劇場に通っても足りないくらい多い。だから、関東周辺まで範囲を広げることは避けていた。
しかし、愛美さんが出演するとなると話が違ってくる。栗橋の場合、以前はロック系の踊り子さんもほとんど出演しなかったが、博多ロックなど出演する劇場が減ったこともあり、最近はロック系の踊り子さんも出演し出した。しかし、まさか、新人の愛美さんが出演するとは・・・しかも穴埋めで・・・
ともあれ、初めての劇場、どうやって行くか?
仙台ロック常連に聞いたら、新幹線で大宮まで行き、そこから宇都宮線がいいとのこと。
その後、自分で調べたら、夜行バスで新宿まで行って、新宿から新宿湘南ラインで一本で行けることが分かった。大宮から高崎線につながっている路線もあるので乗る列車は気をつけなければならないが。この方が早く着けるし、かなり割安になる。
さて当日7月20日(日)。晴天。もう夏だからかなり暑い。
新宿発8時7分の新宿湘南ライン各駅で63分かかって朝9時過ぎに栗橋駅に到着。そこからタクシーで大一劇場へ10分弱。歩いたら40分ほどかかるらしいから迷わずタクシーにした。歩いたら汗だくだくになってしまう。
周りに何もないと聞いていたので、駅のキヨスクで朝食のパンと飲み物を買っていった。
大一劇場は田んぼの中にポツンと建っている劇場。大きな国道沿いだが、タクシーは駅から田んぼ道を通ってやってきた。その方が近道なんだろう。千円もかからなかった。タクシーの運転手が女性だったが、また帰りもタクシーを使うときには連絡して下さいと名刺を渡された。下ろされたのは劇場前の広々とした駐車場。20台以上は十分停められるなぁ。田舎だからほとんどの客は車で来るらしい。そして車の中で時間待ちしているようだ。
劇場入口前にベンチが三つほど並んでいて、先客が一名新聞を置いて場所取りをしていた。だから私は2番目。ベンチに座り、買ってきた朝食を取った。早朝とはいえ、もう夏だから暑い暑い!
栗橋の場合、暑い日、寒い日、雨の日に、席取りするのは大変だというのが身をもって分かった。
暑くてじっとベンチに座っておれずに、劇場の周りを散歩することにした。
劇場敷地内は広く、平屋建ての大きな劇場の隣りに従業員さんが寝泊りする離れがある。トイレが外に設置してあるのはいい。
劇場は国道に面しているが、裏側は田んぼが続く。すぐ近くに小さな神社を見つけた。その中に川通り会館と書かれた集会所があったから、その神社は川通り神社というのかな。神前で手を合わせて「愛美さんが踊り子を続けられるように! 愛美さんと仲良くなれますように!」とお祈りをした。
10時くらいに戻ってきてベンチに座っていたら、3人目の客が来た。30歳くらいの爽やかな男性。話しかけたら気さくでいい感じ。常連ではなく何ヶ月ぶりに来たと言っていた。彼の印象が栗橋のいいイメージにつながった。
11時の開場前には10名近くの客が集まった。暑いのでベンチに座らず、建物の日陰や車の中で涼んでいる。
いよいよ11時に開場。受付で早朝割引3500円を支払い、左手奥の方にステージがあった。通路とステージの場の仕切りはドアではなく、単に冷暖房用の仕切りとして幕を下げているだけだった。これだと冷暖房効果が逃げてしまう。だから、かなり強めに冷房をかけていた。平屋建て一階の作りなので、ステージ奥が踊り子さんの楽屋だろう。
すぐにステージ真正面の席取りをした。場内の第一印象としては大阪の晃生劇場とよく似た作りだなと感じた。大きな盆がステージから半円だけせり出ている形、だから花道はない。浜劇と同じ感じ。盆が少し高く盛り上がっていて、この段差が踊り子さんにとってくせもの。「そうそう、段差がだいぶ苦しめてくれましたよ(笑)。ようやくコツをつかんで何とか上がれるようになりましたから。前半のうちは段差が怖くて上がらずに踊っていました。」
この盆を囲むように普通のパイプ席が40席ほど並んでいる。移動可能だが、だれも定位置を動かさない。段差のせいもあって、三列目以降の客はベッドやオープンが見づらいかもしれない。
たいがいの客は席取りをした後、車で近くのスーパーに買出しに行くらしい。車で5分くらい、徒歩で片道15分と云えど、この暑さの中歩いていったら、汗だくだくになる。車のない私はこの劇場内で涼んでいることにした。
劇場内をぐるっと見回ってみた。ステージ向かって左手奥にトイレ。古い和式トイレだがそこそこキレイにしてあってホッとした。今どき汚れたトイレには耐えられない。トイレ手前に缶ジュース、缶ビール、お酒などの自動販売機がある。缶ビールが400円なので東京より100円ほど安い。入口受付の横にカップヌードルなど軽菓子類が売られている。カップヌードルも200円なので、こちらも東京の劇場に比べれば100円ほど安い。やはり田舎なので良心的な値段。1日いても最低限のものは揃っているな。
● 栗橋のステージ
さて、当日の香盤を紹介しよう。
1番目 矢島愛美さん
2番目 水姫真名さん
3番目 ゆのさん
4番目 奈々子さん
5番目 相沢かれんさん
いや~個性的なメンバーだ。この中で愛美さんうまくやっていけてるのかなぁ~、心配になる。「そうですね、まだ会ったことがないお姐さんたちばかりで、前回はロック系、しかも同じ事務所のキーストンメンバーが三人もいて直ぐに仲良くなれましたが、今回はもうドキ×2最初びびってましたが、今はすっかり安心して一緒に話したりしています。」
このメンバーでうまくやっていけるのなら、どこに行っても安心だ。彼女の特徴のひとつに、誰とでも直ぐに仲良くなれるという特技がある。上の姐さん達にすぐに可愛がってもらえるのと、下の子ともすぐ仲良くなる。これは踊り子向きの最大の素養ともいえる。
暑くて外出する気にもなれず、夕方小腹が空いてきたので受付でカップヌードルを買って、そこでお湯を入れて食べていた。すると、よく東京の劇場で会う方から声をかけられて驚いた。50歳代の方だろう。名前は知らないがよく東京で話しかけてくれるので顔はよく知っている。なんと彼は栗橋の常連で、もう20年も通っているのだと言う。(後に斉藤さんという名前であることを知った)
従業員も気さくで一緒に話に加わった。先に話した雪見ほのかさんの突然の降盤の話、それから私が愛美さんを追っかけて初めて栗橋に来たことを言ったら、従業員さんが愛美さんのことを少し話してくれた。ポラが売れないと愛美さんが悩んでいたので、ここはポラが売れないところだから気にしなくていいよと話してあげたようだ。愛美さんの手紙にも「ここはポラがあまり売れる方ではないと聞いていましたが、初の『ゼロポラ』体験しましたよ(泣)」とあった。
また、けっこう場内も暑かったので、踊っている愛美さんには悪いけど、先にビールを飲んだ。「ビール飲んでほろ酔いかな? 気持ちよく帰ってもらえるなら何よりです。」と愛美さんから言われる。
最後に頂いたお手紙に愛美さんからのお礼の言葉があった。これがまた心を打った。
「仙台からお疲れ様でした!!本当によく来てくれました(泣) 太郎さんが居てくれて、お姐さんたちも喜んでいましたよ!! 真名姐さんも『お客さん全員、太郎さんだったらいいのにね~!!』って(笑) 太郎さんはとても楽しそうに、しかも全身でそれを表してくれていて『癒される~』と言う姐さんの気持ち、分かります。それに、やっぱりお客さんが楽しくしてくれていると、こちらも踊り甲斐があるので。今回、太郎さんが楽日を盛り上げてくれました!! 心から感謝します。みんなそう思っていると思います。」
真名さんとかれんさんが私が来たことを喜んでくれたのは、ポラを買いながら分かっていたが、改めてこう言われるとすごく嬉しかった。愛美さんがお目当てで来たわけだが、全てにご機嫌になっている私。
● 栗橋を後に
一匹の華麗な蝶を追いかけているうちに栗橋に来てしまった。そんな感じを覚えた。
蝶のイメージは字のごとく葉を二枚重ねたもの。葉は葉書、手紙に通じる。私は愛美さんとの文通が楽しくてファンになった。蝶は恋文に通じる。まさに蝶は恋を告げる虫・・・
当日たくさん文通したにもかかわらず、また帰りの電車の中で、愛美さんに対してメールを打った。そのときの文章が私の気持ちをよく表している。
「帰りの電車の中で、愛美さんのポラ写真を眺めながら、
もう一度愛美さんから頂いたお手紙を丁寧に読み返し、
すごく幸せな気分に浸っていました。
不思議だ・・・
ステージを観ていたときよりも幸福感が大きい感じがする・・
目で感じる以上に心で感じる方が大きいのかぁ
それにしても、愛美さんの手紙いいなぁ~
ブログやメールともちょっと味が違う。
自筆なところもいい。とても綺麗な字体。
最近、目力とかよく言うよね。
たしかに目は愛を相手の目へと運び、そこから心に刻みつけようとする。
目力と同じように、手紙力というのもあるよね。
読むほどに行間からじわじわ~って滲み出てくる感覚かなぁ
人間の持つ想像力がそれをかき立てる。
こんな感覚は愛美さんに出逢って初めて感じることができたよ。
愛美さんの手紙は幸せをいっぱい運んでくれる・・・
きっと愛がいっぱい詰まっているからなんだろうな
だからすごく幸せを感じるんだね・・
愛美さんにすごく感謝しているよ。 」