数年前に引退されたロック系の踊り子さん、豹香さんの関東ラストステージについて話させてもらいます。
私はお気に入りの踊り子さんによくお手紙を書くようになりましたが、まったく反応がないと、内容に興味がないのかなとか活字が嫌いなのかななどと考えて次の手紙は書けなくなります。豹香さんも以前からお気に入りの踊り子さんでしたので、一度お手紙を出したのですが全く反応がありませんでした。興味がないのかなと思いつつ、しばらくはステージだけ観てましたが、その後、記念日に再度お手紙を出してみたら、なんと長いお返事をいただくようになりました。驚きやら、感激やら、・・
このことは、きっと、「男というのは、気に入った女の子に一度くらい軽くあしらわれても、そこであきらめず、二度三度とアタックすべし」ということをいっているのかな。三度を越えたら、やっぱり、しつこい感じがするが・・・(^0^)
ともあれ、9月の若松、10月の浜劇と、5度ほど豹香さん目当てで劇場に通いました。
すると、10月の浜劇楽日に頂いたお返事に、関東は浜劇が最後と書いてました。ポラを買いながら「引退するの?」と耳元で聞いたらコクッと頷きました。
ずいぶん突然で、しかも静かな引退に、胸にこみ上げるものがありました。せっかく仲良くなれたのになぁ・・・と思いながらも、浜劇のラウンジで、せっせとお別れのお手紙を書きました。豹香さんからの最後のお返事に、私からの手紙がいい思い出になったと書いてあったのには感激で胸が熱くなりました。
それから、すこし経った11月の若松劇場で、全く見知らぬ男性から声をかけられました。若くてけっこう男前の男性です。
「豹香さんが辞められるって本当ですか?」
突然の質問に驚きました。なんで私にそんなことを聞くのだろう。
「浜劇でお手紙を渡しているのを偶然見たんですよ」と彼は言いました。
彼は、豹香さんの熱烈なファンでした。少しでも豹香さんのことを知っている人とどうしても話がしたかったとのこと。ずいぶん顔を近づけて話しかけてくるのですが、目がうるうると涙ぐんでいるのには驚きました。
「豹香さんが辞めるなら、自分ももうストリップに来ることはないかな、と思っているんです」 (そういいながら、こうして来ているではないか!!)と思いながら・・・も、
こういうファンを持っていた豹香さんは幸せだったんだなぁ、と改めて思うものがありました。
「恋愛」という言葉がありますが、「恋」と「愛」とはずいぶん違います。
字をよく見ると、「恋」は心が下についてます。つまり、相手を自分のものにしたい等という下心があります。それに対して、「愛」は心が真ん中にあります。つまり、真心に昇華されているのです。相手の幸せをひたすら願う気持ちです。
豹香さんのことを愛しているファンなら、会えなくなる淋しさを乗り越えて、彼女のこれからの幸せを祈ってあげるべきですね。
サザンの曲「彩」の中に、「愛するあなたにサヨナラのプレゼント」という歌詞があります。本当に好きな人なら、独占しようとするのではなく、相手が自分の意思で離れていくときには、サヨナラという最高のプレゼントを与えるべきなのだと思います。
盛大に引退興行をする方もいますが、静かに去っていく引退もあるのですね。引き際にもそれぞれの踊り子さんの個性が出ます。
ともあれ、たまたまストリップが好きになって、そしてたまたま踊り子と観客(ファン)として出会えたわけです。時代や場所が少し違っても出会えなかったわけです。同じ時代を生き、同じ時間を共有できたというのは、なんて素晴らしい偶然なのかな、と思います。縁というのは面白いものですね。