仙台に単身赴任していた頃の話。

毎朝、車で山道を通って会社に向かう。近道になるので非常に便利なのだが、雪が降ると通行止めになるような奥深い山道。そのため木々が生い茂げ、春には新緑、秋には紅葉のトンネルを楽しめ朝から爽快な気分になる。

今年の秋も紅葉を見ながら通勤するのが私の朝の楽しみだった。秋が深まり、紅葉も終わりに近づく。葉が落ちる間際に、葉は一層の色づきをして枝を離れる。そんな残り葉を愛でるうちに冬に入っていった。

11月20日(木)、初雪。散り始めた紅葉にうっすらと雪化粧。まだ雪は早すぎる、もう少しこのままでいさせてほしいと紅葉が言っている、そんな幻想的な風情を覚えた。

初雪は積もることはなく、すぐに溶けてなくなったものの、仙台にはもう冬の寒さが来ている。

 

仙台の寒さを避けるように、11/22~24の三連休は東京に帰省した。

川崎ロックに観劇に行く。

奥菜つばささんの新作が私の心に触れた。私は勝手に「冬の贈り物」と名付けた。

私なりに新作を解説すると、・・・

つばささんが雪の妖精のように白い衣裳に身をつつんで楽しそうに踊る。そして、雪の結晶模様のベストを着たテディ・ベアのぬいぐるみを天高く持ち上げる。きっと、そのぬいぐるみはサンタさんからの贈り物。ぬいぐるみを抱きしめながら天に感謝。

ふと横を見ると、大きな雪だるま。雪だるまは天からの贈り物である雪から作られる。

2曲目は、サンタ色の衣裳で、つばささんが楽しく踊る。衣裳を脱いでベッドに入っていくが、胸元に赤い紐を巻く。つばささんの白い肌に赤い紐がとても映え、つばささんの形のいい大きい胸元を強調する。まるで、赤い紐をリボン代わりにつばささん自身をプレゼントしているようだ。相手は天であり、サンタさんであり、最後はお客さんという感じかな。(つばささん自身もお年頃なのでそろそろお嫁さんになりたくなったかな)

全体的にメルヘンぽいが、ベッドだけは赤い紐のせいかSMっぽい独特な匂いが醸されている。ベッドの曲はコブクロの「赤い糸」というラブ・ソングを若い新垣結衣さんが歌っていて、とても惹きつけられる。

つばささんはまだ振付をマスターしていないので、この作品に全然自信がもてないとこぼしていた。また赤い紐は大好きな人と別れてしまっても、まだ赤い糸でつながっているという意味だと最初つばささんが話してくれた。しかし、私の付けたタイトルや解釈を聞いて、すごく気に入ってくれて、次のステージからは太郎さんの解釈通り演じてみたいと言ってくれた。それには私自身が恐縮したものの、こんな嬉しい言葉はなかった。

 

ふと、童話が浮かんだ。

題名は『冬の贈り物』・・・

 

 

お空の高いところで、雪の粒たちがこれから地上に降りる準備をしてました。

こな雪たちは言います。「ぼくたちは寒い北の方に行くね」

ぼたん雪たちも言います。「それじゃ、わたしたちは南の方に行くわね」

 

風に運ばれたそんな雪たちの会話を聞きつけた地上のものたちは口々に叫びました。

紅葉盛りの山々たちは「まだ来るのは早すぎるよ。紅葉を楽しんでいる木々たちが悲しむよ。動物たちも冬眠に入って寂しくなるよ。ぼくのところは避けてくれないか」

魚が泳ぎまわる川たちも「君たちが来ると、舟も通れなくなり、魚たちも元気がなくなるよ。ぼくのところは避けてくれないか」

人間界の大人たちも叫びました。「雪が降ると交通が不便になり困るんだ。寒いと暖房代もかかるしね。ぼくのところは避けてくれないか」

しかし、大人たちの中にはこんなことを言う者もいます。「雪がないとスキー場が潤わないので、是非とも我々のところには降って欲しいな」「雪どけ水がなくなると農業に被害が出てしまうから、是非とも降ってほしいな」

 

雪たちは答えました。

「ぼくらには、どちらがいいとか悪いとか判断ができない。全てのものに平等に降り注ぐんだ。そして全てのものをいったん真っ白にする。それがぼくらの役目なんだ」

 

 雪は降り続け、地上の全てのものを真っ白におおい尽くしました。

 地上は静かになりました。

 

 いや、そんな中、にぎやかな声が聞こえてきました。

 子供たちが雪合戦を楽しんでいます。

傍らには、大きな雪だるまが子供たちの姿を微笑みながら見守っていました。

 

                                   おしまい

 

雪は冷たいけど、どこか暖かい感じがするのは全てに平等だからかなと思えます。

 

ところで、「雪は空からの手紙」と言われる。これは雪博士として有名な、元北海道大学教授の中谷宇吉郎博士(1900年~1962年)の「雪は天から送られた手紙である」という言葉から来ている。雪の結晶は様々な形をしていて、雪を研究している人たちは結晶の形によってその時の上空の温度や風の強さなどを推測する。そのために、今でも「雪は空からの手紙」という呼び方をされます。

私も踊り子さんに、キラキラ輝く雪の華のような手紙を送れたら嬉しいな。

 

平成20年11月                          川崎ロックにて