人を表す最小単位といえば間違いなく‘名前’である。
名前とは、他人との区別を意味すると共に、家族としての所属も意味する。後者は姓名(苗字)が担う。名前は、親が字画などを気にしながら、子に対する想いを込めて命名する。親の名前の一字を受けることも多い。私の名前も祖父の一字を頂いたし、息子にも私の名前の一字を付けている。名前には親の愛情や優しさ、更には先祖の魂が宿っている。
赤ん坊に向かって名前を呼ぶと嬉しそうに微笑む。赤ん坊は名前の響きによって相手の愛情を感じる。つまり名前を呼ぶことは相手への関心の第一歩。名前の響きはときめき。名前を呼ばれた瞬間に、相手とのコミュニケーションが始まる。
また、名前というのは生まれてからずっと呼ばれ続けているので、身体に染み付いている。名前は自分にとって最も懐かしい存在である。
以上、私が名前から感じている一般的な話をしたが、このことから分かるのは、踊り子さんがお客と親しくできる最も簡易な方法は「ポラの時にさりげなく名前を呼ぶこと」。名前を呼んでもらった客は踊り子さんへの親近感が高まり、必ずリピートする。
ところで、踊り子さんの芸名も、命名は先ほどと同じ気持ちで付けないといけない。自然、名前はその人自身になっていくので軽んじてはいけない。
最近、踊り子さんの名前が紛らわしいと思うことがある。TS系の新人さんの名前を列記すると、稀羅愛花さん、咲愛華さん、結希瑠華さん、雅瑛璃華さん・・・これでは誰が誰か分かりづらく、もう少し考えて命名すべきではなかったか。字画が多く書くのも大変。一方、逆に愛さん、咲さんと一字だけの命名も続き、TSの香盤名は一体どうなっているのかぁと個人的には感じる次第。TSの集合ポラで、あるお客が面白がって、咲さん、愛さん、咲愛華さんの3人を並べ、各人に咲・愛・華というプラカードを持たせていたなぁ(笑)・・こういうジョークはセンスがいい。
東洋でも同じような名前が多くて一瞬名前を間違えたりする。「ゆりあ」「りあな」「ゆあ (優愛)」「あすか」・・・更にロックにも「あいな」と続く・・・まぁ苗字が違うからこのくらいはいいかな。
ちなみに、私が最近で個人的に気に入った名前はロックの「彩星 舞(あやせ まい)」。踊りの上手かった彼女に相応しく、いかにも踊り子の星になってくれそうなネーミングだと思った。しかし残念ながら、H20年前半にデビューしたが半年ぐらいで、まさに星のごとく消えてしまった。
また、ここ最近で変わった命名と思ったのがロックの「@YOU」「彦乃」。@YOUは最初どう読むのかな思ったら、正式にはアット・ユーと呼び、あっちゅーの愛称となる。また、彦乃さんの場合は、もっと、かわいい彼女に合ったネーミングにしてあげたらよかったのにと思っていた。
ロックの彦乃さんのことを少し話す。
彦乃さんは今年H21年1月のお正月公演で川崎ロックからデビュー。一緒に出演中の矢島愛美さんから同じ事務所の後輩だから応援してあげてと言われ、もちろん新人好きの私としては喜んで応援した。引き続き1月結に仙台ロック公演に出演してくれたことで仲良くなれた。その後1ヵ月間出演が決まらず心配していた。3月頭のSNAに新人さんの穴埋めで急遽出演。久しぶりに会いに行くことにした。私はいつも通り朝早くから劇場前に並んでいた。ふと彦乃さんが劇場の入口に入るのを見つけた。私服の彼女はほんと普通っぽくて踊り子さんには見えない(失礼!)。すると列にいる私を見つけて「太郎さん!」と言って私のところに駆け寄ってくれた。他のお客の手前、恥ずかしかったが凄く嬉しかった。
彼女には父性本能をくすぐられる魅力がある。放っておけない、応援せずにおれないという気持ちにさせられる。なんとしてでも頑張って踊り子を続けてほしいと願っている。
次に京都DX東寺が入り、出演が続いたことでホッとする。ただ京都までは応援にいけない。その次矢継ぎ早に4月21日から5月10日まで、なんと浅草ロック公演が決まった。これには度肝を抜かれた。デビュー4週目で浅草の晴れ舞台を経験することになるとは。ちょうど安藤アゲハさんも出演するので一緒に応援することができ、私としては喜んで浅草ロックに足を運んだ。
そのときに、彦乃さんが「小川りか」に改名したのを知った。最初、彦乃さんが降盤して別の新人に代わったのかと驚いたほど(笑)。どういうきっかけで改名したのかなぁ~。
彦乃さんのステージを観ながら、こんな童話が浮かんできた。
題名は『名前を変えて』・・・
ある山深い里に、歌のうまい一人の少女がいました。
彼女は背が低く小さい身体でしたが、とても高くて大きく、かつキレイな声が出ました。
その日も、丘の上から山に向かって自慢の歌声を発しました。♪♪♪
彼女の声は、きらめく光線となって清清しい空気を揺らします。
すると、山々が彼女の歌声に呼応して大合唱を始めました。風も伴奏をつけ、小鳥たちも囀(さえず)り、木々が肩を組みながら体を揺らします。まるで「山のコーラス」です。
山の神様「山彦」はその少女が大好きでした。彼女のお陰で、山に幸せが訪れるからです。山彦は彼女に自分の名前から一字をとって「彦乃」と名付けました。
彦乃は、いつか町里に出て、たくさんの人々の前で歌うことを夢見ていました。
そして、ついにその夢が叶う日がやってきました。
彼女はある劇場を訪れ、歌手として登録しました。名前は彦乃と書きました。ところが、何日経っても劇場関係者は出番をくれません。名前が劇場受けしないのかもしれません。
仕事の入らない彼女は、ぽつんと小川のほとりに佇みました。
すると、小川の神様が彼女に囁きました。
「元気を出しなさい。私は山の奥の方から流れてきているので、山彦からあなたのことを聞いています。私が全面的にあなたを支えます。町に出てきたからには、名前を彦乃から小川に変えたらいいよ。」
少女はそのアドバイスに従って「小川りか」という芸名に名前を変えました。
すると、なんと浅草劇場から声がかかりました。そこは歌手の憧れの大劇場です。
彼女は一生懸命に練習しました。
そして晴れ舞台の日がやってきました。
彼女はたくさんのお客の前で歌い出しました。彼女の声は一瞬でお客の心を捉えました。その歌声はお客の琴線を弾き、心の奥底に沁み込みました。まるで天の声、地の声を聴いている感じです。きっと山の神も陰ながら応援しているのでしょう。
その声は優しさであり、ときめきであり、時に懐かしさでもありました。お客の誰もが幸せな気分を満喫しました。
その噂が人々の口から口へと伝わり、彼女は心ある歌姫として人気を博しました。
おしまい
平成21年9月 川崎ロックにて

