今回はロックの踊り子、夏木りりかさんの観劇レポートを「風が吹くままに風車(かざぐるま)はまわる」と題して語らせてもらいます。

 

 H25年GW、5月頭の週、若松劇場でロックの夏木りりかさんのステージを拝見している。最近の若松は、第二のロック館のようになっており、今週も出演者五人中四人がロック所属の踊り子さん。

 夏木りりかさんとは最近立て続けにお会いしている。4月頭に仙台ロック、その翌週4月中のDX歌舞伎、そして今回5月頭の若松と続いた。

 その間の出し物は『アフリカ蝶々』『風車(かざぐるま)』の二つがほとんど。

 

 りりかさんのステージは見応えがあり、以前から作品それぞれを楽しみにしている。

 今回の『アフリカ蝶々』も面白い作品。最初のシーン、閉まっていた幕の隙間から蝶々がひらひら出てくる。釣り糸の先に蝶々を付けて、ステージを駆け回る。次の場面では、自分自身が蝶々になる。ジュディ・オングが「魅せられて」を大ヒットさせた1979年の第30回NHK紅白歌合戦で披露したときの、通常の扇状に広がる袖を更に棒を利用して扇の面積を大きくした衣装と似た感じで、その羽根でもって雄大かつ華麗にひらひらと舞う。次に、軽装になりアフリカンダンスを披露。その動きが面白い。

 ちなみに、今回の観劇レポートでは、もうひとつの『風車(かざぐるま)』の方を詳しく言及させて頂く。

 

 初めて『風車』を拝見したときから、なにか自分の心をとらえて離さないものがあった。しかし、そう感じてはいたものの、それが何かは分からなかった。

 先月4月14日(日)、DX歌舞伎で朝から観劇。1回目ステージの『風車』を拝見していたら、ひとつの詩が頭の中を流れた。私はすぐに持参した手紙の裏に「風車(かざぐるま)」と題してポエムを手書きし、2回目のポラ時に渡した。このポエムはりりかさんの踊り子人生を反映している。感性のいい彼女は私の意思をストレートに受け止めてくれた。「デビュー時から観て頂いてますもんね。太郎さんに成長したと言ってもらえて光栄ですっっ そうですね。空回りした時は一度止めて落ち着き、またやり直します。このポエムは太郎さんの私に対する正直な心のポエムですね。」この返答は素直に私を喜ばせた。

 私は、この自作ポエムが気に入り、もう一度きっちり推敲したいと思った。そして、これを機に、彼女のレポートを書こうと決めた。次の若松までレポートを書かせてもらうね!と話した。「では、レポート楽しみにしてます。レポートを書くにもりりかの歴史(歴史という程でもないですが・・・)を改めて見て頂けるのも楽しみ。おてやわらかに~」

 すぐにレポートを仕上げて、GW中のH25年5月3日(金)、若松に持参した。併せて、この「風車」という詩をもう一度推敲し、題名を「風が吹くままに風車(かざぐるま)はまわる」と改めて、今回のレポートの最後に添付した。

 りりかさんが驚き、「ポエムだけでも十分に気持ちが伝わってましたよ」と話しながら、そのレポートを喜んでくれた。「太郎さんもりりかも自分に正直に生きてるのが共通点と感じました。太郎さんは文字にして、りりかはステージ♪ 生き生きと文を書いているのを感じました。それって素敵な事ですよね。」という感想が嬉しかった。

 ただ、そのレポートには『風車』の内容については触れていなかった。ところが、若松で『風車』観劇を重ねる度に別に心に訴えかけてくるものがあった。まさに私にこのポエムを書かせた何かである。それが何か、りりかさんと手紙のやり取りを通しながら次第に見えてきた。

 

 『風車』について、少し細かく内容を紹介する。

 ステージが始まる前に、二つの小さな風車を盆前に置く。金銀眩しいエナメル調の彩りの羽根を重ね合せた風車。

 最初に、りりかさんがひらひらとした天女のような衣装を着て登場。白い髪飾りに、長い振袖の付いた、青を基調色にした衣装。スカート部分は黄・青・赤・紫・緑の順でレインボー模様。これを青い帯で締める。まさしく風をイメージしている。「風になりたい」(Mdy'J)の曲にのって、風になって舞う。

 次に、この衣装を脱いで白い軽装になる。盆前に置いた二つの風車を身体に着ける。ひとつは右手首に、もうひとつは左の胸元に。懐かしいアニメ/トトロの曲「風の通り道」にのって、手を振る度に風車がキラキラと回る。りりかさんは風の妖精になって舞う。

 その後、ベッドに入っていくのだが、流れている3曲目「届きますように」(kokiA)の歌詞を丁寧に聴いていると、この演目そのものが鎮魂歌だと判る。恋人か伴侶を失って、天国にいるその人に語りかける。あなたは風になって私を包んでくれますか♪

 そして、立ち上がりの中島みゆきの歌「一期一会」がしっとり&ずっしりと響く。つまり、風とは縁(えにし)。みゆきさんが人との出会いと別れを切々と歌い上げる。

私は少し前に‘一期一会’についてのエッセイを書いていたので、この歌詞が強く心に響き、それがポエムを書かせたのではないかな!?と気づいた。

 私はその段階になって、『風車』という作品がもつ意味を感じ始めた。りりかさん自身、今回の『風車』は以前の作品をかなりリニューアルした内容になっていると言っていたので、この作品にかなりの想いやこだわりを込めているはず。きらきらと回る二つの風車を観ていると、軽やかに回っているにもかかわらず、そこにステージの重さみたいなものを感じた。想いは重いに通じる。それは彼女の踊り子人生の重さであり、踊り子魂や人生観を反映しているものだろう。りりかさんは‘重み’を‘深み’という言葉に変えて、こう話してくれた。「演目にはカラーが出るし、太郎さんの言うとおり深みもありますよね。りりかは『心から踊りたい』それが体で表現される。太郎さんが心で文を書くのと一緒かな?」

 ステージを通して、これだけの話をできたのも久しぶりである。私はりりかさんに惚れ直し、離したくない気分にさせられた(笑)。

 

 さて、りりかさんの踊り子歴を振り返ろう。

 りりかさんは2006年10月11日に新宿ニューアートでデビュー。私はすぐに仙台から遠征し、デビュー週の10月14日に初顔合わせ。チャーミングな娘だなとの第一印象。デビュー当時からステージへの取組みは真摯なもので、すぐにファンが付いた。

もう7年目の中堅中の中堅になっている。ステージは仙葉由季さんの指導を受けて鍛えられた。仙葉さんに見込まれ、仙葉さんのチーム・プリティへ2008年の第1回目から入隊するほどで、まさに仙葉さんの正統派後継者(秘蔵っこ)と言える。

りりかさんのプロフィールによると、身長154㎝でB87.W60.H90というスリーサイズ。身長は高くはないが、ステージでは大きく見える。

 ステージの素晴らしさと合わせ、私の手紙に対する反応がいいのが、私が彼女を気に入った理由。デビュー当時のコメントに「太郎さんは文のセンスがとても良いですよね。素敵な特技を持ってて羨ましいです。りりかは、センスが無いので、踊りでカバーします。」と言っているが、彼女の返事を読むと、文への感性の良さが光る。今回も「太郎さんもりりかも自分に正直に生きてるのが共通点と感じました。太郎さんは文字にして、りりかはステージ♪ 生き生きと文を書いているのが感じました。それって素敵な事ですよね。」と言ってくれて凄く嬉しかった。

特に今回の若松では、私の最新の創作童話を読んでもらったのだが、その感想が私を唸らせた。「太郎さんは、いつも夢の中に居るような人ですね。すごく大切だと思います。りりかも、夢の世界大好き。」 私のことを‘夢の住人’と言っている。こんな素敵な表現で、しかも私の本質を喝破してくれた方はいない。私は狂喜するほど感動した!りりかさんに惚れてまうがなー(^0^) これから‘夢の住人’という言葉を温めていきたいと思う。

 

 私がロックの矢島愛美さんの追っかけを始めたH20年。その年8月に仙台ロックで愛美さんがりりかさんと意気投合。二人とも凄い酒豪らしい(笑)。後輩の面倒見の良さがりりかさんの長所でもある。りりかさんは後輩たちの素敵な目標でもあり、たのもしい相談相手でもある。

 最近、特に感ずるのがハイテンションな明るさ。もともと明るい性格ではあるが、踊り子として女性として経験を積み、全てを吹っ切り、ますます明るさに徹している感じ。

 プロフィールには1984年3月5日生まれとあるから、それなりの年齢になってきたが、引退を考えるのはまだ早い。彼女のファンは目の肥えた玄人好みがたくさんおり、彼女がどこの劇場にのっても全国を追いかけている。彼女のステージは今後ますます進化し続けると期待している。

 

 風が吹くままに風車はまわる・・・

風車の羽根のひとつひとつが重なり合う人間模様に見える。りりかさんには、これからも踊り子という素敵な風車人生を楽しんでもらいたいと心から念ずる。

 

平成25年5月                            若松劇場にて

 

 

 

 

 

 

『風が吹くままに風車(かざぐるま)はまわる』 

~夏木りりかさんに捧げる~

 

 君は風車になる

 金色と銀色が交互に重なり合う華やかな模様

 キラキラと君が回れば みんなに笑顔と元気を与える

 

 大空のかなたから 明るい太陽が風を送る

 静かな夜空には 三日月や星たちが風を送る

 君は風を喜び 風を楽しむ

 君が回れば みんなが楽しい

 

 僕は君をまわす風になりたい

 僕の笑顔が 僕の手拍子が 君を回す

 

 いろんな人が君に風を送る

 一生懸命応援してくれる優しい温かい風

 自分を理解してくれない心無い冷たい風

 乾いたり湿っぽくなったり移り変わりの激しい風

 そして時に どうしようもなく自分を翻弄する悪戯な風

 君は突然空回りを始める

 そんなときは回るのを止めればいいさ

 

 君は成長した

 今は順風満帆になり 安心して見ていられる

 君は美しく回り 僕らに笑顔と元気を与える

 

 いつまでもいつまでも 回り続けてほしい

 

 いつか君が回るのを止めるとき

 僕も風とともに消えていくことになる

 

 

                                    おしまい