今回は、H29年10月結の大阪東洋ショー劇場における、藤月ちはるさん(ロック所属)の関西ラストの模様を、引退作「胡蝶之夢」にちなんで語りたい。
H29年10月結の大阪東洋ショー劇場に顔を出す。
今週の香盤は次の通り。①西園寺瞳(ロック)、②榎本らん(東洋)、③荒木まい(東洋)、④藤月ちはる(ロック)、⑤南まゆ(ロック) 〔敬称略〕。今週は、荒木まいさんの三周年週。
そして何と言っても、今週は、ロックの藤月ちはるさんの関西ラストになる。これが私としては藤月ちはるさんのステージ見納めになる。
今年も、これまで仲良くしてくれたロックのお姐さんが次々と引退していった。灘ジュンさん、豊田せりかさん、大友輝さん等。彼女たちは私がデビュー時より応援していたベテランさんばかり。いわゆる太郎チルドレンと呼ばれた方。彼女たちとはやはり付き合いの深さが違ってくる。
その中で、藤月ちはるさんの存在は大きい。ロックが誇る最高級のアイドル。
H24(2012)年4月11日に浅草ロックでデビュー。美少女との呼び声高く、漸くお会いできたのがデビュー四か月後の8月11日。大阪東洋の初日に会いに行ったのを昨日のことのように覚えている。あまりの可愛さに目が点になる。
それから、仙台ロック、DX歌舞伎、ライブシアター栗橋などで応援しながら、今日で27日目になる。五年少々で27日回というのは寂しい限りの数字であるが、ステージを拝見できただけでもラッキー&ハッピーだったと心から感じている。
今週は最後のお別れレポートを書きたいと思って、ステージを拝見させて頂いてます。
今週のちはるさんは三個出し。1,3回目は「胡蝶之夢」、2回目は「胡蝶之夢 蝶々」、3回目は「ちはるちゃりぶれ」。
演目「ちはるちゃりぶれ」がプロレス関連のものだったので驚いていたら、ちはるファンからちはるさんのプロレス好きを聞いて納得した。同じくプロレスファンの小宮山せりなさんとステージの上でプロレスごっこをして楽しんでいるのも話題になっているらしい。私もプロレス好きなのでもっと色々お話ができたのにな!と今更ながら思う。
さて、今回レポートのテーマにしたい引退作「胡蝶之夢」であるが、二つ目の「胡蝶之夢 蝶々」とどういう位置づけなのか。引退作「胡蝶之夢」は前々週H29年9結の川崎ロックで初出し。先週10月中のDX歌舞伎、そして今回の大阪東洋で三週目になる。この後、11月頭のSNAで三連投、そして11月21日から12月30日までの浅草ラストのロング公演と続く。きっと、その間引退作一つではと思って、「胡蝶之夢 蝶々」という姉妹作を作ったのだろう。
さっそく、引退作「胡蝶之夢」の模様を話す。
絢爛豪華な着物姿で登場。赤い着物に緑の帯を締め、その上に白い内掛けを羽織る。
髪結いが素晴らしい。華やかな櫛(くし)や金の簪(かんざし)、金糸が垂れる。
白い足袋を履いて、舞い踊る。
楽曲は、演目名にもなっているRin' の曲『胡蝶之夢』。まさしく今回の演目はこの曲に尽きる。
内掛けをとり、緑の帯を解く。下に赤い帯、それも取ると、白い帯に。一旦、白い腰巻だけになり、袖へ戻る。暗転。
舞台の上に白い花を置く。
再び、ピンクの襦袢姿になって盆に移動しベッドショーへ。インスト曲が続く。
もうひとつの引退作「胡蝶之夢 蝶々」の方は次の通り。
先ほどとは豪華さを控えめにしている。
白い打掛けを羽織らず、着物姿のみ。髪結いも白い花飾りだけにしている。
やはり一曲目は同じく『胡蝶之夢』。
最後の衣装も、白と花柄を左右にクロスした襦袢姿。赤と白の髪飾り。
この作品群『胡蝶之夢』に込めたちはるさんの想いを想像してみた。
最初に「胡蝶の夢」という有名な中国の故事を思い出す。以下にネットのWikipediaなどを参照すると・・・
胡蝶の夢(こちょうのゆめ)は、中国の戦国時代の宋国(現在の河南省)に生まれた思想家で、道教の始祖の1人とされる人物の荘子(荘周)による説話。荘子の考えが顕著に表れている説話として、またその代表作として一般的にもよく知られている。
内容は次の通り。
以前のこと、わたし荘周は夢の中で胡蝶となった。喜々として胡蝶になりきっていた。自分でも楽しくて心ゆくばかりにひらひらと舞っていた。荘周であることは全く念頭になかった。はっと目が覚めると、これはしたり、荘周ではないか。ところで、荘周である私が夢の中で胡蝶となったのか、自分は実は胡蝶であって、いま夢を見て荘周となっているのか、いずれが本当か私にはわからない。・・・
夢の中で胡蝶(蝶のこと)としてひらひらと飛んでいた所、目が覚めたが、はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか、という説話である。
今のちはるさんは五年半という間ストリップという世界にいて、まさしく竜宮城の乙姫になった気分で舞い踊っていたが、いざ引退を前にして、これは夢だったのか現実だったのかという思いにとらわれているのだと感じた。
いいタイミングでRin' の曲『胡蝶之夢』と出会い、それを採用した。
おそらく、ちはるさんの想いは、「この五年半が夢のようなひとときだった」ということだろう。
そう考えれば、よりぴったりな中国の有名な故事「邯鄲(かんたん)の夢」がある。・・・
盧生(ろせい)という若者が一旗揚げようと邯鄲に向かって旅をしていた。途中のある町で、昼飯を食べるため一軒の店に入ったとき、そこにいた老人に自分のこれからの夢を話した。老人は若者の話を興味深く聞いてくれたが、飯ができるまで一休みするようにと枕を貸してくれた。若者が枕をあてると、すぐにうつらうつらし始めた。夢の中で、地位も名誉も財産も持ち、美しい妻や5人の子供に囲まれ、大きな屋敷住んでいる自分自身の姿、50年にわたる波瀾万丈の成功物語を見ていた。
誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた。「さあ、食事ができましたよ」。その声で若者は目を覚ました。その途端、今まで見ていた屋敷も何もかもが消え、そこにいるのはただのみすぼらしい身なりの自分自身であった。若者は驚いた。老人は若者が何に驚いているのかを知っていた。
自分が今見ていた夢、50年にも渡るあの波瀾万丈のドラマは、粟が煮えるまでのつかの間の出来事に過ぎなかったのか。彼は自分の抱いていた夢のはかなさに気がつき、邯鄲に行くのをやめ、故郷に戻ったという話である。
今のちはるさんは、「えっ! ストリップを初めてもう5年半も経っているのか」と思い、愕然とすると同時に、それはつい昨日のことのようにしか感じられないことに奇妙な感覚を覚えているのではないか。ストリップの舞台に立つということは普通の女の子では体験できないこと。ちはるさん自身、それがどんな世界だったと感じているのか、今の私には想像が及ばない。ただ、長い生涯において波瀾万丈のドラマチックな出来事のひとつになったことは間違いないだろう。そして、その過ぎてしまった時間を後から振り返れば、ほんの束の間の出来事に過ぎなかったと感じる「時の流れの不思議」に思いが至っているのだろう。
私はいつもこんな風に考えている。
ストリップというのは空蝉の世界。絶世の美女がきれいなヌードを見せてくれる非現実空間。劇場から一歩外に出た現実の世界では有り得ないことである。男にとってまさに夢のような世界である。
今、目の前で蝶のように舞う踊り子さんは夢か現(うつつ)か。そんなことを考えても仕方がない。「夢が現実か、現実が夢なのか?しかし、そんなことはどちらでもよいことだ」と荘子も言っている。
我々は観たままに感じればいいんだ。すてきな音楽、衣装、舞い踊り、そしてセクシーなヌード。あるがままに感じて満足する。我々は観て楽しみ、元気になる。それを生きるエネルギーにすることが大事なんだな。
ストリップは夢。私はずっと夢を見ていたいと思う。死ぬまでずっとね。
胡蝶の夢のごとく、夢から覚めることが「現実」という別の夢の始まりだと考えれば、常に夢は繰り返されることになるからね。
平成29年10月結 大阪東洋ショーにて
【参考】 Rin' の曲『胡蝶之夢』について(2015/04/04 公開。from album『飛鳥』)
Rin'(リン)は、日本の音楽バンド。日本の伝統楽器、箏、十七絃、琵琶、三絃、尺八で音楽活動を行なっていた、女性邦楽器演奏家3名によるバンド。
メンバー 流派 担当
Mana(吉永真奈) 生田流 ヴォーカル・箏・三絃・十七絃
Tomoca (長須与佳) 琴古流(尺八) ヴォーカル・琵琶・尺八
Chie (新井智恵) 生田流 ヴォーカル・箏・三絃・十七絃
◇曲『胡蝶之夢』歌詞の現代語訳
澄んだ空気に 染まる朝焼け
明ける暁(あかつき) 消える桃源郷(とうげんきょう) /
誰彼(ひと)が傷つく 歎(なげ)き聞こゆる
耳を塞(ふさ)いで 目を瞑(つむ)って避ける自分がいる /
浮き世 憂(うれ)うこと 其(そ)れは花に涙 濺(そそ)ぐこと
頼られて 支えられ 風 荒(すさ)ぶ曇(くも)りの日さえ
胡蝶之夢(こちょうのゆめ) /
赤みを増して 西に傾く
花屋 筝(こと)弾き 楼閣(ろうかく)笛 弄(あそ)ぶ /
春に花あり 夏に涼風(かぜ)あり
秋に月あり 冬には雪
日々 是(こ)れ好日(こうじつ)よ /
愛を無くすこと 其(そ)れは人に想(おも)いを無くすこと
愛(いと)しくて 慕(した)われて 万(よろず)歌 詠(よ)むことさえも
胡蝶之夢 /
浮き世 憂(うれ)うこと 其(そ)れは花に涙 濺(そそ)ぐこと
頼られて 支えられ 風 荒(すさ)ぶ曇(くも)りの日さえ /
愛を無くすこと 其(そ)れは人に想(おも)いを無くすこと
愛(いと)しくて 慕(した)われて 万(よろず)歌 詠(よ)むことさえも
胡蝶之夢 胡蝶之夢 胡蝶之夢 胡蝶之夢