今回は、ロックの踊り子、藤月ちはるさんのステージを「精華 藤月ちはる」と題名して語ります。

 

 

まるで花の精霊だ!

ふと『精華』という言葉が浮かんだ。彼女を表現するのにピッタリの言葉だと思った。

 

H26(2014)年3月7日、もうすぐ春がやってくる頃。

DX歌舞伎で、藤月ちはるさんの演目「春一番期」を見ながら、今年の冬は雪が多くて厳しい寒さだったなぁ~ようやく春がやってくると感じた。

作品を簡単に紹介しよう。

最初に、薄いパープル色の衣装で登場。スカートの裾は短い。肩口は透け透けの生地。全体として軽装で、銀のハイヒールを履いて、軽やかに舞う。

長い黒髪を垂らす。髪飾りが素敵。黄色とピンク色が重なり、ちょこんと乗っている。

アクセサリーとして、両手首に鮮やかなピンクの腕輪、そして右足首にゴールドの輪。

次に、長めのドレスに衣装替え。薄いブルー色で全体してスケスケで軽い感じ。胸元と肩口がフリフリ状。ジブリの曲に乗って裸足で軽快に踊る。

二つの衣装とも、風をイメージしている。まさに「春一番」。

最後に、ドレスを脱いでベッドへ。銀色のネックレスが煌めく。細かい銀の紐が垂れる。白いパンティが眩しい。白く透けたベールを一枚羽織る。ベールにはカラフルなキラキラが点在。全体として、とてもシンプルな感じなので、余計にちはるさんの素材の良さが引き立つ。近くで観ると、網目の入った黒髪がすてきだなぁ♡

二本の桜の小枝が印象的。ちはるさんには花が良く似合う。

 

昨年四月の、ここDX歌舞伎で拝見した一周年作を思い出す。身体中に、植物の蔓を巻いて演じていた。このときに「ちはるさんには花(植物)がよく似合うなぁ~」と感じていた。だからこそ、冒頭に述べた『精華』という言葉は自然に浮かんできた。

花のように美しく愛らしい笑顔。くりくりとした大きな瞳を輝かせ微笑むと周りの全てが華やぐ。優しく、慎ましい雰囲気は周りの人の心を明るくする。まさに彼女は『精華』。

 

当日、外の空模様が妖しくなっていた。ずっと場内にいたので分からなかったが雪がちらついたようだ。「外はなんだか悪天候なようですが、桜は満開でありますよー(DX歌舞伎限定)(笑)」頭の中にひとつの童話が流れた。童話『精華』をプレゼントさせて頂きます。

 

 

平成26年3月                            DX歌舞伎にて 

 

 

 

 

『精華』 

~藤月ちはるさんの演目「春一番期」を記念して~

 

 

 深々と雪の降る日。

 空高い雲の上で、雪の聖霊が高笑いしていました。

「今年は寒い冬だったので、思う存分、雪を降らせることができた。大満足!大満足!

やっぱり冬はこうでなくっちゃね。

もうすぐ冬も終わるから、私もそろそろ店閉まいか。みんなにご挨拶しておこうかな。」

雪の精霊は、白い雪でお手紙を作り、雪と一緒に降らせました。

 

手紙のひとつは、お日様の精霊のもとに届きました。お日様は、この世で最も偉大な存在で、お天道様とも呼ばれています。真っ先にご挨拶しなければなりません。

「今年の冬は、お世話になりました。お日様が頑張ると暖冬になるところでしたが、私にお気遣い頂きありがとうございました。お蔭で、今年の冬は、私が十分に活躍できました。感謝しております。」

 手紙のひとつは、風の精霊に届きました。雪の精霊の親しい仲間です。

「雪を降らせる際に、いつもご協力ありがとう。吹雪には風が伴わないと迫力がありませんからね。」

 手紙は草木にも届きました。

「もうすぐ冬が終わります。長い間、辛抱ご苦労様。ようやく蕾を咲かせることができますよ。」

 

 雪の精霊は、木々に向かって囁きました。

「今から、精華を降らせます。精華は雪の結晶ではなく、花の結晶です。」

 たくさんの白い精華が空から降り注ぎ、木々の枝に積もりました。

 そこに、お日様の精霊が優しく微笑みました。お日様の日差しにより、精華はすぐに溶け始めました。すると、たくさんの白い花びらに変わりました。

 すると、風の精霊が「今度はぼくが春一番を吹かせてあげよう」と言って、爽やかな風を起こしました。白い花びらが風になびき、春の匂いを漂わせました。

 大地は、雪の精霊の粋な計らいで桜の花が満開になりました。

 華やぐ春の始まりです。

 

                                    おしまい