2020年1月結のシアター上野における、玉さん(TS所属)の公演模様を、演目「玉姫伝」を題材に、「心ときめく物語の数々」という題名で語りたい。

 

 

  2020年1月結のシアター上野に初日から顔を出す。

今週の香盤は次の通り。①山咲みみ(TS)、②KAERA(TS)、③玉(TS)、④宮野ゆかな(TS)、⑤愛野いづみ(道劇)〔敬称略〕。

 

玉さんは二個出し。1,3回目は新作「玉姫伝」、2,4回目は「遊び女~Part1~吉原」。どちらもお正月らしい作品。

新作の「玉姫伝」について、玉さんから解説してもらう。「2020年1月1日に大和ミュージックで出しました。初めて神さまを演じました。仕事をさぼって追放される神さまです・・・」「女神ですが、怠けていたので天界から地底に落とされ、最後はまた戻るというストーリー?ですね。さりげなく衣装も曲も、オリンピックが絡んでます。」

後ほど、この女神が太陽神アポロンの娘で半人前の女神のポロンであることが判明するが、この漫画『オリンポスのポロン』を玉さんが知っていて作品のテーマにしたのかな?

 

ステージ内容を紹介します。

最初に、天女のような恰好で登場。特徴的なのは髪型で、頭頂部に三つの輪を重ねています(正確には「飛仙髻(ひせんけい)」という古代中国の女性の髪型が原型)。ふわふわの白い布地に赤いベストを着ている。長い白い袖、白と赤の縦縞フリル布。銀のバレエシューズを履く。

最初は白いベールをかぶって現れ、そして金の丸いうちわを持って、舞い踊る。一曲目は、J・ガイルズ・バンドのヒット曲「堕ちた天使」(Centerfold)。なるほど解説の通り天界から落ちた神さまという曲名だ。しかも和物に洋楽とは四谷桃子先生独特なナイスセンス。作詞・作曲・編

ちなみに、この曲は、高校時代の憧れの女性が男性誌の見開きピンナップページに載っていることにショックを受けた青年の物語である。原題の "Centerfold" (センターフォールド)は「中央見開き、もしくは折り込みページの(ヌード)写真」の意味。

J・ガイルズ・バンド(The J. Geils Band)はアメリカ合衆国出身のロック・バンド。 ブルース・ロックから台頭し、音楽性が変化した1980年代にはシングル「堕ちた天使」が全米1位を記録。アルバムも1位を獲得し世界的な知名度を得る。一度解散したが1999年以降から活動を再開。象徴であるJ・ガイルズが亡くなるまで存続した。

音楽が変わり、どんどん衣装を脱いでいく。脱いでいく途中の帯がさりげなく国旗模様になっている。(笑) オリンピックに掛けたんだね。

音楽は、本作品のテーマでもある、オリンポスのポロンの曲。

『オリンポスのポロン』は、吾妻ひでおの漫画作品。 1977年から1979年に『月刊プリンセス』に掲載される。1982年から1983年に『おちゃめ神物語コロコロポロン』のタイトルでアニメ化される。ギリシャ神話の世界を舞台に、太陽神アポロンの娘で半人前の女神のポロンがいろいろな騒動を巻き起こすギャグ漫画。少女漫画誌に掲載されたため、吾妻の特色である過激な下ネタや不条理ギャグはなく、オーソドックスな子供向けのギャグ漫画になっている。

 音楽が男性ボーカルに変わり、暗転し、着替える。

 ふわふわ、すけすけの白いドレス。白い数珠状の首飾りと腰にも同じ白い数珠状の飾りを巻く。裸足で踊る。

 そのままベッドショーへ。ブラウンのパンティを右手首に巻く。

 両手首に純金のブレスレットがキラリ。

 最後はオペラ「椿姫」で締める。ジュゼッペ・ヴェルディ作曲による:歌劇「アイーダ」 - 第2幕 凱旋行進曲。

『椿姫』(つばきひめ)は、ジュゼッペ・ヴェルディが1853年に発表したオペラである。原題は『堕落した女(直訳は「道を踏み外した女」)』を意味するLa traviata(ラ・トラヴィアータ)。ネーミングからして最初の曲「堕ちた天使」とリンクしているのかな。

 椿姫は有名であるが、私はよく内容を知らなかったのでネット検索し、原作である小説の内容に感動した。

小説『椿姫』(つばきひめ、原題:La Dame aux camélias)は、アレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)が1848年に実際の体験を基にして書いた長編小説。主人公のモデルはかつて作者が交際していたマリー・デュプレシという高級娼婦。恋人アルマンのイニシャルである「AD」は小デュマのイニシャルと同じである。この作品は人々に愛されて幾度も舞台化、映画化され続けてきた。演劇に写実主義を初めて持ち込んだ作品でもある。

次のようなあらすじ。・・・

19世紀中ごろのパリ。夜の世界(ドゥミ・モンド、裏社交界(en))に生き、月の25日間は白い椿を身に付け、残り5日の生理期間には赤い椿を身に付けたために人々から『椿姫』と呼ばれた高級娼婦マルグリット・ゴーティエは贅沢三昧の生活に心身共に疲れ果てていた。そこに現れたのが友人に紹介された青年、アルマン・デュヴァルだった。青年の正直な感情に最初は戸惑いを覚えていたマルグリットだったが、今まで感じ取ったこともない誠実な愛に気づき、二人は相思相愛の仲となった。マルグリットは享楽に溺れる生活を捨て、パリ近郊にあるアルマンの別荘で幸福の時を過ごすが、それは長くは続かなかった。息子のよからぬ噂を聞いて駆けつけたアルマンの父親がマルグリットに息子と別れるように告げた。それを聞いて彼女は驚いたが、それでも真実の愛に満たされた彼女はアルマンの将来を守るために、身を引く決心をした。パリに戻ったマルグリットは、心ならずも新しいパトロンを作り、高級娼婦稼業に戻った。 事情を知らないアルマンは裏切られたと思い込み、彼女を苛んだ挙句、傷心のまま外国へ旅立った。 心身共に傷ついたマルグリットの病状は次第に悪化したが、いつかアルマンと別れた本当の理由を知る事を願って、事の顛末を手記に書き記し、自分の死後アルマンに渡す様、友人に託した。アルマンはマルグリットの危篤を知り、急いでパリへ向かったが彼女は既に亡くなり埋葬も競売も終わっていた。しかし、マルグリットの手記では、世間からは忘れられた存在となっていたが、最期までアルマンへの愛を唯一の希望にしていた事が書かれていた。 ・・・

いやぁ~、名作はいいね。ところで、この椿姫は玉姫伝とどうつながっているのかな? とふと考える。堕ちること???  よく分からない。

 

 もう一度、玉姫伝というタイトルに立ち戻ろう。

 ネット検索したら、「玉姫伝説」なるものに出会った。鎌倉時代から口承で今に伝えられてきた伝承物語である。玉姫神楽として祭られている。この話も興味をひく。・・・

時は1204年、鎌倉時代初期 源頼朝亡きあと、北条政子と北条時頼の執権を巡る争いに巻き込まれ、無実の罪で非業の最期を遂げた父、畠山重忠。

一族滅亡を目論む北条時頼の追っ手から逃れ、北条政子の庇護を願うためわずかな供に護られて鎌倉を目指す玉姫一向がいた。秩父から険しい大菩薩峠を越えた玉姫一向に救いの手を差しのべた村人たち(現在の小菅村余沢地区)により雪解けまでのひとときを村で過ごす。

厳しい逃亡の中で、玉姫に寄り添い献身的に仕える若侍がいた。名を大青(おおせい)といい、いつしかお互いを想い合うようになった。

しかし、さらに厳しさを増す追及から逃れるために村をあとにするが、追っ手に追いつかれ激しい伐り合いで次々と味方を討たれていく。敵の刃をくぐり抜けながら玉姫と大青は山中を逃げたが、池の平で敵に追い詰められ、二人は手を取り合って池に飛び込む。 池に飛び込んだ大青は山の神狼に、玉姫は水の神大蛇に変化し、敵を討ち果たす。

村を護る神となり二人は仲良く池の平で暮らすが、ある年の豪雨で池が決壊し、大蛇の玉姫は海まで流されてしまう。 この玉姫が流された川は玉姫の玉を取って『玉川』と呼ばれるようになり、その後、美しく美味しい水として将軍に献上されることとなる。

独り取り残された狼の大青は玉姫を想い、呼び続けた。その悲しい呼び声は大正の初めまで聴こえたと伝えられる。・・・

多摩川はか つて玉川と呼ばれていて、玉姫伝説はその語源となる伝承として貴重である。

なるほど、この物語も落ち武者のストーリーとして「堕ちる」という共通点があるな。

 

今回の作品「玉姫伝」により、ギリシャ神話による漫画「オリンポスのポロン」、名作と誉れ高いオペラ作品「椿姫」、そして伝承による玉姫伝説と出会うことができた。

玉さんの作品イメージは最初の解説のごとく「オリンポスのポロン」にある。玉さんが今回の演目を作るにあたって、四谷先生にどのような要望を出したか分からないが、四谷先生はおそらく玉ちゃんのネーミングから「玉姫伝」を作ったんじゃないかな。まさに「オリンポスのポロン」のごとくギャグセンスで。だから、最初の洋楽「堕ちた天使」とかラストのオペラ「椿姫」が入ってきたのだと感じられる。これらは四谷先生の選曲の妙でもありギャグセンスでもありそう。

 まじめに「玉姫伝説」を演じようとすれば、悲しい物語のため、お正月の目出度さにマッチしないと避けたとも考えられる。

 いずれにせよ、今回の作品「玉姫伝」を通じて、私はギリシャ神話、世界名作、日本昔話に触れることができ、執筆を趣味とする者としてとても満足な気分です。感謝感激☆

 

2020年1月                            シアター上野にて