黒瀬あんじゅさん(TS所属)について、2020年6月結のシアター上野での公演模様を、二周年作「swing girl」を題材にして、「ジャズの魅力」という題名で語りたい。
2020年6月結のシアター上野に顔を出す。
今週の香盤は次の通り。①三枝美憂(TS)、②愛奈(TS)、③くるる(晃生)、④黒瀬あんじゅ(TS)、⑤KAERA(TS)〔敬称略〕。
あんじゅさんは6月頭の池袋ミカドが周年週であったが、周年作が間に合わなかった。遅ればせながら今週一回目ステージで二周年作「swing girl」が披露されていた。私は新作を拝見した瞬間「これが二周年作だな」とピンときた。素晴らしい作品に仕上がっていた。
新旧のジャズ名盤が盛り込まれている。
まずは、ステージ内容をご紹介する。
最初に、白い水玉模様の入った黄色の、袖なしワンピース姿で登場。胸元に2個のボタン。ウエストを白いベルトで締める。
頭は、白いリボンで後ろ髪をひとつ縛る。
腕には白い手袋。金の時計を付けている。
足元は、赤黒いストッキングに、銀のハイヒールを履く。
赤いハンドバックを持って、音楽に合わせて軽快にかつエレガントに踊る。
1曲目は、Carmen McRaeをヴォーカルに迎えたDave Brubeckの代表作でありジャズ史に残る名曲「Take Five」。"テイク・ファイブ"はポール・デスモンドが作曲し、デイヴ・ブルーベック・カルテットの1959年のアルバム『タイム・アウト(英語版)』に収録されたジャズ曲である。曲名の由来にもなった、珍しい5/4拍子の使用で有名である。
デイヴ・ブルーベック(Dave Brubeck、:David Warren Brubeck、1920年12月6日 - 2012年12月5日)はカリフォルニア州コンコード出身のピアニスト。ウェストコースト・ジャズの代表的なピアニストとして知られる。母親から受けたクラシックのトレーニングの跡と即興のテクニックが特徴。ダリウス・ミヨーに師事していた時期もある。また彼の作品では4分の5拍子など、ユニークな拍子を持ったものが多い。長年のパートナーにアルト・サックス奏者のポール・デスモンドがおり、彼作曲の"Take Five"(Time Out収録)が代表曲となる。
2曲目は、エレガントな魅力溢れるAlice Francis の「Shoot Him down!」シュート・ヒム・ダウン!
個性的1920年代のジャズ・エイジに魅せられた"アリス・フランシス"は古くて新しい。
3曲目は、TiAが歌う「Deal with the devil」(アニメ「賭ケグルイ」オープニングテーマ)。(歌い出し)♪「アップダウンは世の常 クズ引いたって動じない…」
Tia(ティア、1995年10月18日 - 現在24歳)は、日本の女性歌手。埼玉県出身。supercellのryoによってプロデュースされている。 中学生時代にニコニコ生放送で活動していたところ、その印象的な声とキャラクターにryoが注目し、2012年に現役高校生として歌手および声優デビューした。
ノリノリに踊る。ここで、ハンドバックを取り払い、手袋も取る。
白いベルトを外し、黄色いワンピースを脱ぐと、下には赤褐色のブラと赤いスカート。
音楽が変わり、一旦暗転し着替える。
赤いドレスを羽織って登場。ドレスは刺繍入りで透け透けの生地の中に金色がちかちかする。
そのままベッド入り。赤褐色のパンティとストッキング。
ベッド曲は、Billy Joelの「ピアノ・マン」 (Piano Man) 。ビリー・ジョエルによってリリースされた最初のシングル。1973年11月2日にリリースされ、数枚のアルバムに収録された。ビリー・ジョエルの最初のヒット曲となり、代表曲でもあるこの曲は、1974年4月にBillboard Hot 100チャートで25位を記録した。 ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500(2010年版)では429位にランクされている。
立ち上がり曲は、映画「LALALAND」より軽快な「Another Day of Sun」で締める。
あんじゅさんから次のコメントをもらう。「この演目は周年作です。映画『LALALAND』をモチーフに主人公の男性がジャズピアニストということもあり、ジャズにおしゃれに上品にかつワクワクできるような演目を創りたいと思いました。『LALALAND』の曲は1曲だけですがどこかレトロでジャズを楽しんで頂けたら嬉しいです。」
私はタイトル名が「swing girl」と聞いて、すぐに2004年公開の日本映画『スウィングガールズ』(Swing Girls)を思い出す。私は東北生まれの田舎者であるが、この映画も東北の片田舎を舞台にしており、しかもオシャレなジャズを演奏するというのがミソである。この映画の脚本・監督はウォーターボーイズを手掛けた矢口史靖。東北の片田舎の落ちこぼれ女子高校生がビッグバンドを組んで、ジャズを演奏する青春映画。キャッチフレーズは「ジャズやるべ!」。ロケは山形県置賜地方を中心に行われ、セリフも山形弁(置賜弁)が使われた。劇場上映は好調に進み全国各地では次々とロングラン上演に突入。楽器店での管楽器の売り上げが数割ほど伸びるというある種の社会現象まで引き起こすなどといった当初の予想を上回る反響を得た。
たまたまであるが、私は現在、石塚真一の漫画『BLUE GIANT』(ブルージャイアント)に嵌ってコミックを読んでいる最中。ジャズを題材とした作品で、『ビッグコミック』(小学館)にて2013年10号から2016年17号まで連載された。現在は続編が進行中。初期の舞台が私の第二の故郷である仙台市であり、練習場となる広瀬川や国分町のライブハウスなどが登場する。仙台のジャズフェスティバルは有名で、仙台は音楽の杜でもある。この漫画は絵でジャズを表現している点が素晴らしい。是非お勧めしたい人気漫画である。
ジャズには人を惹きつける魅力がある。あんじゅさんが言うように、それはオシャレで大人っぽい。だから老若男女の垣根を越え、世界を越え、時代を越える。
「ジャズ」が流れる空間というのは、無条件にお洒落だ。「ジャズが好きだ」と言えば、その人自身もどこかお洒落で大人びているように感じる。そんな空間も人もなんでもハイセンスに変えてみせる「ジャズ」について、その魅力を見てみたい。
ネットを検索した結果、ジャズの魅力を以下に説明したい。
ジャズの起源
ジャズの発祥は、1900年代初頭のアメリカ・ニューオーリンズ・歓楽街ストーリーヴィルと言われています。 アフリカから奴隷としてアメリカに渡ってきた黒人たちがヨーロッパからの移民と出会い、西洋の音楽とアフリカの音楽を融合して作られたのがジャズの始まりです。小さな町で生まれたジャズはその後、シカゴやNYなど都市部に広がり、急速に発展を遂げます。そして、様々なジャズミュージシャンによって音楽としての幅を広められ、世界中にその地位を確立していきました。
ジャズとは
ジャズは「音楽のジャンルというより演奏方法である」と捉えるのが正解です。
よくカフェや雑貨屋、美容室などでジャズが流れているのを聴いたことがあると思いますが、よく聴いてみるとポップスやクラシック、アニメや映画などで使われた曲など、知っている曲だったりすることはないでしょうか。もともとジャズではない曲なのに何故かジャズに聴こえてしまうのは、ジャズ的な演奏方法にアレンジしているからなのです。
では、ジャズ的な演奏方法とは何なのでしょうか。
ジャズの音楽的特徴
ジャズの基本的な演奏は、最初は主となるメロディーを演奏し、次から和音はベースに置きながら、楽器それぞれが変奏(アドリブ)していきます。 そして、最後にもう一度始めのメロディを全員で演奏して終わります。
簡単に言うと、1番を普通にみんなで演奏し、例えば2番はサックスのアドリブ、3番はピアノのアドリブ、4番はドラムがアドリブをし、最後はまたみんなで演奏すると言った形です。あくまで基本であり、これに限らないことも多いですが、このアドリブがいかにカッコ良くて人々を惹きつけられるかが腕の見せどころなのです。
そしてもう一つ、ジャズの大きな特徴がリズムです。ジャズ演奏が他の音楽と明らかな違いを生み出すのは、オフビートだからです。オフビートは、本来のリズムの強弱が逆のことを言います。
基本の4拍子だと本来「1、2、3、4」の「1、3」のところが強拍になりますが、オフビートは「2、4」のところが強拍になるのです。ドラムの音に耳を澄ませてみれば、より分かりやすいと思いますが、このオフビートはジャズの大きな特徴です。
ジャズの真髄
ライブハウスやレストランなど、近い距離感でジャズの生演奏を聴くことができますが、実は演奏するまで曲目が決まっていないということもあります。 もしくは、曲は決まっていて何コーラスくらいしようかという打ち合わせはしているが、誰がどんな演奏をするかは全くリハーサルしていないということも。これは、ジャズがそもそもアドリブの音楽であるからです。
ジャズはその時の雰囲気、演奏者の気分によって曲が決まり、演奏中にメンバーが音で会話をして作り上げていきます。そして演奏者と客が一体となって、心で音を楽しむのがジャズの真髄なのです。
黒人たちが奴隷としてアメリカに移り、そこでヨーロッパからの移民と出会い、様々な問題を抱えて生きていた人々が心のよりどころとして作り上げたジャズは、自由に演奏をし、その空間を特別なものにすることこそが、ジャズ本来の在り方なのです。
ジャズの種類
◆ディキシーランド・ジャズ
ジャズが生まれた最初の頃のかたちで「ツービートジャズ」とも呼ばれます。
黒人のジャズをニューオーリンズ・ジャズ、白人のジャズをディキシーランド・ジャズと分けて呼ぶこともありますが、ジャズの原型のようなものです。ピアノやドラムをはじめ、トランペットなどの管楽器といった多くの楽器によって演奏されました。
1930年代から1940年代中頃までに発展したジャズで、ビッグバンド(大人数)での演奏が特徴です。大人数であるがゆえアドリブはほとんどありませんが、軽快なリズムでノリの良い(=スウィング)、ダンスミュージックとしての側面を持つのが音楽的な特徴です。
◆ビバップ(モダンジャズ)
現在、広くジャズとして知られているのがこのビバップです。
1940年代から広がりを見せた種類ですが、この頃ジャズの主流だったスウィングジャズの形式ばった規模の大きいジャズではなく、もっと気軽に楽しみたいという思いから、バーなどで数人のミュージシャンによって即興演奏されたのが始まりと言われています。
先にも書いたように、基本となるコード進行の中でアドリブ演奏していく形で、王道的なジャズの種類です。
◆ラテンジャズ
その名の通り、ラテン的な要素を含んでいます。ラテンパーカッションでリズムを担い、ドラムはいない場合が多いです。
ジャズで最も使用される4ビートではなく、8分音符や16分音符を使用した複雑なリズムを刻むのが特徴です。
ラテンジャズは、キューバで発展したアフロ・キューバン・ジャズのことを指しますが、さらに南下してブラジルで発展したブラジリアン・ジャズは、ボサノヴァの部類に入れられることが多く、音楽はつながっているということを教えてくれます。
◆モードジャズ
1960年代から姿を現した種類で、ビバップが進化したようなジャズです。
コード進行の代わりにモード(西洋の教会音楽で使用される音階で、一般的な音楽では使われることのほとんどないスケール)を取り入れたことで、ビバップよりも音の幅が格段に広がりました。幻想的な雰囲気に包まれるジャズで、モードジャズを好むファンは今でも多くいます。
◆フリージャズ
その名と通り、自由度の高いジャズのことをいいます。コード進行など、音楽の決められたルールは一切無視して、自由に演奏するのがフリージャズです。
ミュージシャンの感性がそのまま音に表されるので、よりアーティスティックで革新的なジャズを聴くことができます。
パーカッシブ奏法(ピアノを拳で叩いているかのように弾く奏法)など、楽器の概念さえも覆してしまう演奏者も現れ、初めて聴く時は衝撃を隠せないかも知れません。
◆ジャズファンク
ジャズにファンクやR&Bなどの要素を取り入れたもので、ジャズの最終形と呼ばれています。
それぞれ発展を遂げてきた他ジャンルを融合させることによって、近代的でダンサブルなイメージを生み出し、さらにジャズファンクを進化させて、無法状態にしたものをコンテンポラリージャズといいます。コンテンポラリージャズは、2000年代以降に提唱され始めたきわめて新しいジャズで、今後新しい波を作るかも知れません。
以上、ジャズの説明を見てみると、映画『スウィングガールズ』はビッグバンド(大人数)で演奏されていますから、スウィングジャズですね。
それに対して、今回の演目「swing girl」は新旧のジャズを盛り込んでおり、特にスウィングジャズに特化しているわけではなく、単にジャズを楽しむ女の子をイメージしている。だから我々観客も気楽にジャズを楽しむ感覚で、あんじゅさんのステージを楽しみたい。
2020年6月 シアター上野にて