2020年3月結の池袋ミカド劇場における、黒瀬あんじゅさん(TS所属)の公演模様を、演目「ありのままんじー」を題材に、「これは最高の傑作だ!」という題名で語りたい。
先に感想文をお渡ししましたが、何度も拝見しているうちに、この作品の素晴らしさがじわじわと伝わってきました。私のスト仲間たちも、この作品を絶賛しています。もう一度、観劇レポートを書き直します。
新作「ありのままんじー」を2020年1月頭のシアター上野と1月結のライブシアター栗橋で拝見し、既に観劇レポートをお渡ししたところである。ところが今回3月結の池袋ミカドで初日3/21に拝見したら、全く違う感動があった。
前回から二か月経ており、作品の完成度が増している。正直、持参した観劇レポートを渡すのを躊躇したほど、素晴らしい作品に仕上がっていた。あんじゅさんにレポートを渡す時「素晴らしい作品になったね。今日、観劇レポートを書いてきたので渡すけど、正直、褒め足りなかったと後悔しているよ。」と話す。あんじゅさんの嬉しそうな笑顔が返ってきた。その時、もう一度、観劇レポートを書き直そうと思った。
まだ、実際に映画「アナ雪2」を観たわけではないが、片っ端からネット検索して内容を確認した。その上で、全面的に、観劇レポートを書き直した。
まずは、一部訂正を入れ、再度、本作品のステージ模様を紹介しよう。
最初に、パープル系の衣装を着た女王エルサが登場し、ランプをかざして暗闇の中を進む。アナ雪2で、妖しい歌声に引き寄せられるように未知の世界に旅する姿を演じている。
衣装はエルサそっくり。肩から腕にわたり黒。胸から下は群青。胸と腰のあたりに金線が入る。スカートの下部に雪の結晶をイメージした模様。更に紫色のマントを羽織る。頭には青と銀が輝く王冠。
一曲目は、バレエ音楽・グラズノフ四季の「冬」。さすがバレエの素養のあるあんじゅさんの選曲と振付である。
二曲目は、「アナ雪2」の主題歌で、日本語吹き替え版でエルサ役を務める松たか子が歌う日本語バージョン「Into the unknow(イントゥ・ジ・アンノウン)~心のままに」。
(歌い出し)♪「ああ ああ... 聞こえてる でも無駄よ あなたの囁きを無視する 消えて欲しいと願ってるわ...」
ここで、マントを脱ぎ、王冠を取る。ブルーのドレス姿になる。
三曲目、ヴィヴァルディ四季の「冬」。
アントニオ・ヴィヴァルディ(1678年3月4日 - 1741年7月28日)は、ヴェネツィア出身のバロック後期の作曲家で、ヴァイオリニスト。カトリック教会の司祭。とくに多数の協奏曲の作曲家として知られる。
ブルーの衣装を脱ぐと、黒いレオタードの上に、下だけ薄い紫色の透け透けな花柄スカートを付ける。銀のハイヒールを履いて踊る。
途中でスカートを取り、完全な黒いレオタード姿になって踊る。
ここで一旦、暗転。キラキラと雪の結晶が砕けるようなBGM(フリー音源)が流れる。最高の演出だね。
パープル系のロングドレス姿に着替えて登場。銀の首飾り。肩紐で胸から下のドレスを吊るす。胸元のピンクの花がワンポイント。スカート部には青い花が点在している。黒い薄底ハイヒールを履いて踊る。
盆に移動してベッドショーへ。
ベッド曲は、映画「天気の子」の主題歌よりRADWIMPSの「グランドエスケープ feat. 三浦透子」。作詞作曲:野田洋次郎。これも昨年の大ヒット映画だね。映画好きになったあんじゅさんらしい。アナ雪だけにこだわらずに、作品のイメージに合った選曲を試みているのがいいね。
(歌い出し)♪「空飛ぶ羽根と引き換えに 繋ぎ合う手を選んだ僕ら それでも空に魅せられて 夢を重ねるのは罪か 夏は秋の背中を見 ...」
ラスト曲は、松たか子さんの『Let It Go~ありのままで~』。作詞:Kristen Anderson-Lopez/Robert Lopez/日本語詞:高橋知伽江、作曲:Kristen Anderson-Lopez/Robert Lopez。
(歌い出し)♪「降り始めた雪は 足跡消して 真っ白な世界に ひとりのわたし…」
さて、感想を書き替えます。
前回の感想で決定的に間違えたのが、やはりこの作品「ありのままんじー」のポイントは「アナ雪2」にあること。ラスト曲「Let It Go~ありのままで~」が最高に盛り上がるのでアナ雪1,2全般にわたる作品と思ったが、それは違う。作品全体を通して、二曲目にある「Into the unknow(イントゥ・ジ・アンノウン)~心のままに」の部分が最高のクライマックスだ。どちらの曲も日本語吹き替え版でエルサ役を務める松たか子が歌う日本語バージョンであるが、大ヒット曲「Let It Go~ありのままで~」の方が耳に馴染んでしまっているのだが、「Into the unknow(イントゥ・ジ・アンノウン)~心のままに」を何度も聴いているうちに松たか子の歌唱力の凄さに身体が震えてくるものがある。彼女の美しくパワフルな歌声には、エルサが抱くまだ見ぬ未知の世界への不安と期待が見事に表現されている。松たか子がエルサの声優で本当に良かったと思えた。
だからこそ、本ステージにおける最初の場面で、暗闇の中ランプをかざして進むシーンが活きてくる。映画「アナ雪2」における未知なる世界への旅なのである。
「エルサはなぜ、その力を与えられたのか?──かつて、真実の愛によって姉妹の絆を取り戻したエルサとアナ。アレンデール王国の女王となったエルサは、アナ、クリストフ、そしてオラフと共に幸せな日々を過ごしていた。だが、エルサにしか聞こえない不思議な“歌声”に導かれ、姉妹はクリストフとオラフを伴い、アレンデール王国を離れて未知なる世界へ。それは、エルサの“魔法の力”の秘密を解き明かす、驚くべき旅の始まりだった…。」(公式サイトより)
この曲「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」は、前作で“ありのまま”の自分を受け入れたエルサが、“このままでいられない”と迷いを感じながら、自分の心に従って、未知の旅へと心のままに踏み出していこうとする彼女の想いが溢れた曲。前作「Let It Go~ありのままで~」よりひとつ上の次元を歌ったスケールの大きい曲である。
本映画の監督のクリス・バックも、「この曲は、あらゆる世代の人に共感してもらえると思う。まだ見ぬ未知の世界には、何かがあるかもしれない。どこへ行こうとしているかわからないけど、本当の自分を見つけるために、やるべき事があるということを表現しているんだ」とコメントしている。
二つ目は、あんじゅさんがどれだけエルサに憧れているかが衣装に表れている点。コスプレ用の衣装があるのかな、本当によく似ている。肩から腕にわたり黒。胸から下は群青。胸と腰のあたりに金線が入る。スカートの下部に雪の結晶をイメージした模様。更に紫色のマントを羽織る。頭には青と銀が輝く王冠。
まさしくコスプレ並みによく似ている。そして表情までエルサになりきっている。エルサの美しさがあんじゅさんに乗り移っている。あんじゅさんの美しさに惚れ惚れするよ♡
私のスト仲間の一人が「この作品を観て、あんじゅさんに心底はまりそうで怖いよー!」としみじみ言っていたが彼の気持ちがよく分かる。
三つ目が、本作品の最大のポイントとして‘アナ雪というミュージカルとあんじゅさんのバレエ演技の融合’がある。バレエの素養があるあんじゅさんだからこそ、本作品の見映えがある。アナ雪は1,2のそれぞれの主題歌を使い、それをグラズノフ四季の「冬」とヴィヴァルディ四季「冬」という二つのバレエ音楽、そして雪BGM(フリー音源)をうまく組み合わせて、冬と雪のイメージ効果を出している。かりにアナ雪のことを知らなくても、普遍のテーマとして「冬・雪・雪の女王」を彷彿できる作品に仕上がっている。選曲がいいので圧巻の作品である。
四つ目が、タイトル「ありのままんじー」について。
ラスト曲に「Let It Go~ありのままで~」を持ってきて、作品タイトルを「ありのままんじー」とするところに、あんじゅさんの強い想いを感ずる。主人公のエルサは、“ありのまま”の自分を受け入れ、何にも縛られず自分らしく生きることを決め、過去と決別した。「私は自分の足で立ち、今ここにいる!」という歌詞からも読み取れる。
ふと、あんじゅさんが昨年2019年6月中の池袋ミカドで1周年作「でぃあみー」を披露したのを思い出す。その作品には、あんじゅさんの肉声が入っていた。不思議なことに、あんじゅさんはその作品をその週だけで封印してしまった。
ちなみに、私は1周年作の観劇レポートで次のように書いている。「今回の作品は踊り子になった心の葛藤を表現している。あんじゅさん自身、ストリップを演じながら、いろんな心の迷いや挫折があることだろう。」しかし、私は「迷うことはない。ストリップ道を堂々と邁進していってほしい。」とレポートで結んでいる。
今回の作品「ありのままんじー」は、そのひとつの解答ではないかなと思えた。
2020年3月 池袋ミカド劇場にて