今回は、黒瀬あんじゅさん(TS所属)について、H31年1月結の池袋ミカドでの公演模様を、新作「名前のない怪物」を題材に、「黒瀬あんじゅを解剖する」という題名で語りたい。

 

 

H31年1月結の池袋ミカドに1/28から顔を出す。

今週の香盤は次の通り。①山咲みみ(TS)、②愛野いづみ(道劇)、③黒瀬あんじゅ(TS)、④悠木美雪(TS)、⑤神坂ひなの(TS)、⑥望月きらら(晃生)〔敬称略〕。今週は神坂ひなのさんが1/26~31の期間限定出演で1周年週。

 

今週の黒瀬あんじゅさんは二個出し。1,3回目は二作目「真夏の世の夢」、2,4回目は新作「名前のない怪物」。

新作「名前のない怪物」は、今年のお正月興行・シアター上野で初披露したが本人曰く「一応出すには出したが、あまりに暗すぎる演目なのですぐに引っ込めた」とのこと(笑)。私はシアター上野に新年の挨拶に伺ったが本作を観た記憶がない。

 

今回の観劇レポートでは、少し趣向を変え、せっかくの暗い新作という「名前のない怪物」を材料にして、黒瀬あんじゅさんの本質に迫ってみたい。

最初に絵の話をしたい。私は只今‘お絵描きブーム’の真っただ中。そんな中で、あんじゅさんは私の最もお気に入りのお絵描きさん。私の専属マンガ家と言い切りたい(笑)。だから、あんじゅさんを一番追いかけて応援している。

ところで、あんじゅさんは昨年H30年6月頭のシアター上野でデビューした。私はそのときにいつものように新人さんには私の挨拶を兼ねた手紙をお渡ししする。手紙の反応を見ながら私との相性を見極めている。昔だったら毎週のように新人さんがデビューしていたので対応や反応がイマイチと思えばすぐに応援対象から外していた。しかし最近は殆ど新人がデビューしなくなったので、その判断はじっくり時間をかけている。まずは観劇レポートを書いて自分なりに考察している。応援するかどうかの判断は、下手すれば一年くらいかけている人もいる(笑)。正直言うと、あんじゅさんの反応は他の踊り子さんと比べてあまり良くなかった。手紙がはずまないと、仲良くなれるか自信がなかった。ただ彼女の場合、踊り子としてのステージはずば抜けて光っていた。だからゆっくり時間をかけて応援してみようと思っていた。

ところが歯車が高速回転し出した。それは絵の反応だった。6月頭の上野の次に、7月中の大和、7月結のミカドと様子を見ていた。そして満を持して9月頭のミカドでお絵描きを頼んでみた。私としては簡単に断られる可能性もあるので慎重にかつ丁寧にお願いした。また殆どの踊り子さんは「私は絵が下手だから」一旦は断る人が多い。たしかに他のお姐さんの上手な絵を見せると腰が引けるもの。ところが、あんじゅさんは何の衒いもなく対応してくれた。頼んだ次の回に「ちびまる子ちゃん」の絵が返ってきた。さっと描き上げた感じ。全く絵に対する嫌悪感を感じない。ひょっとしてお絵描きが好きなのかな。そう思って、次の11月頭の栗橋でまた絵を頼んだら、次々と絵が返ってくるようになる。しかも、めっちゃ上手い。私は感激で有頂天になった。ひょっとして凄い子を見つけたかも。私は大変な掘り出し物をした気分になって彼女に夢中になった。そして、現在のようにあんじゅさんの追っかけになった。

今頃聞くのもなんですが、あんじゅさんはどうして絵が上手いの? 子供の頃からのお絵描きだけでこれだけ上手くなったの。もしかして絵の勉強した? 例えば美術部にいたとか、マンガ研の倶楽部活動をしていたとか、専門の学校に行ってたとか?

少なくても、漫画は相当好きだよね! 私の提供する童話のネタに全てついてきているのが証拠。知らないと絶対に絵なんか描けないもんね。殆どの子は「私はジブリはあまり見ない」とか得意分野が限定しているが、あんじゅさんはオールマイティだ。漫画もアニメも、ゲームや映画まで幅広くカバーしているよね。これだけでも驚いている。

バレエやポールダンスがあれだけ上手で、絵や漫画にも触手を伸ばす余裕があるなんて凄いなぁ~。めっちゃ驚いているんだよ。

今週私が提供しているネタだけでも、ジブリからサンリオまでさっさっと描いてきたよね。しかも、私の好きなカーヴィをうまく絡ませて。その絵心のセンスの良さにホント惚れちゃう♡

 

私は最近こう思っているんだ。「絵はステージと同じく、踊り子さんの個性や味をよく表現している」「目は口ほどにものを言うというけど、絵は文ほどにものを言う」と。だから、絵を通して、私は踊り子さんと新たな付き合いの境地に入ってきている。今まで私が提供してきた観劇レポートや童話に、踊り子さんが絵やイラストを描くことで、私と踊り子さんの新たなコラボが誕生している。今まで私からの一方方向だったのが双方向のコミュニケーションに発展してきている。おそらく私以外の客は私のレベルを想像できないと思う。それだけ絵の存在が大きいんだ。

その中で、あんじゅさんの存在が大きい。量も質も飛びぬけている。私はあんじゅさんと出会って、今まで経験したことのないストリップの楽しみを味わっているんだよ。

 

さて、絵の話ばかり長くなってしまった。新作の話に戻る。

今回の作品の第一印象を言おう。

あんじゅさんがしきりに「暗い作品」と言っているが、色としては黒ではなく赤が強烈なイメージ色になっている。黒だと観えなくなるか(笑)。

そして、音楽が最初と最後にEGOISTを使っているので、このEGOISTというミュージシャンへの依存度が高いことが窺わせる。演目のタイトルにもなっているし。もうひとつ、Aimerの存在感が私には大きく感じた。このEGOISTとAimerが決定的に作品を暗くしている(笑)。

EGOISTもAimerも最近のロックの若手踊り子さんが好んで曲を使っている。実は、EGOISTは星崎琴音さんが、Aimerは中条綾乃さんがよく使う。二人を応援している私としては当然に興味があり、私なりによくネット検索して勉強していたので、今回の作品に触れた瞬間にEGOISTとAimerは判別できた。

このEGOISTとAimerの音楽性は内面の心を抉り出そうとするところに最大の特徴がある。内面の心の中を表現するのは難しい。とかく内面はどろどろしているから真っ赤に表現される。絵画でいうと、ムンクの作品「叫び」なんかが連想させられる。それが今回の作品の色となっている。

あんじゅさんはプロのバレリーナーでありポールダンサーなんだから、例えばロックのみおり舞さんのように、前作の「真夏の世の夢」のような誰もが知っているバレエの代表作品に挑戦していくのが自然のような気がする。それなのに何故、内面を表現するのか?

一般に、新人さんは一年間は明るい作品だけやっておけ!と言われる。なぜなら、暗い作品は難しいんだな。内面を表現するなんてベテランになってからやればいいんだと。

それなのに、何故に、新人の三作目が今回の「名前のない怪物」という作品になってくるのか?

そうか、「名前のない怪物」というのは、あんじゅさんが得意なアニメの世界だね。というか、最近の若手の踊り子さんの選曲は殆どが漫画、アニメ、ゲームや映画からモチーフが来ているからね。あんじゅさんも例外じゃないんだね。

 

さて、本作品の内容について見ていく。

最初に、盆の上で後ろ向きからスタート。

異様な出で立ちである。赤いマントを羽織り、頭からフードをかぶって顔を隠している。右肩には銀の飾り。胸の中央に銀の花があり、そこで左右のマントを挟んでいる。

一曲目は、EGOISTの「KABANERI OF THE IRON FORTRESS」(カバネリ オブ ジ アイアン フォートレス)。おどろおどろした旋律。作詞:ryo(supercell) 作曲:ryo(supercell) 。2016年5月25日にSony Recordsから発売されたEGOISTの7枚目のシングルである。この曲「KABANERI OF THE IRON FORTRESS」はノイタミナ枠『甲鉄城のカバネリ』のオープニングテーマに起用された。(『甲鉄城のカバネリ』は、WIT STUDIO制作の日本のテレビアニメ作品。 2016年4月より6月までフジテレビ『ノイタミナ』枠にて放送された。)  2016年5月24日付のオリコンデイリーランキングでは5位にランクインし、翌日の5月24日付では1.0万枚を売り上げて1位にランクイン。EGOISTの首位獲得は史上初の快挙となった。

フードから顔を出し、赤いマントを取る。すると上半身はレオタードのようで、キラキラしたラメの赤。それを銀の線がたくさんクロスしている。左足は赤い紐で巻かれる。金髪のロングヘアをなびかせて舞い踊る。

一曲目が終わって、一瞬、心臓の音(フリー音)が聞こえる。これは「SE」(サウンド・エフェクトの略。音響効果の意。) 一般に、映画やテレビなどの画像に合わせて付加する効果音や短い音楽のこと。

二曲目は、B. Ames の「Sniffles(The Bump Dub) 2013年」が流れる。おもしろい振りのノリのいいダンス。最初「キレキレパーンツ」「キレキレダンス」に聞こえる(笑)。

ここで音楽が変わり、一旦、暗転して着替える。

音楽は、Bastoの「Bonny」。エレクトリックなインスト曲である。

黒い首輪。そして黒い皮ベルトを上半身にぐるぐる巻き付けている。トップレスで乳房が見える。赤いパンティが見える。その上に、花柄の刺繍入りの白い布を羽織る。

そのままベッドショーへ。赤いパンティを口に咥えたと思い気や、左手に巻く。

ベッド曲は、Aimer(エメ)の『Black Bird』。2018年9月5日発売Aimer 15th single は、映画『累-かさね-』(2018年9月7日(金)公開・主演:土屋太鳳×芳根京子)の主題歌である。映画『累-かさね-』のことをネットで調べた。<醜い顔でありながら卓越した演技力をもつヒロインが、口づけをした相手と顔と声を入れ替えることができる口紅の力を使い、他人の顔を奪いながら舞台女優として活躍していく姿を描く。> 美醜をめぐる人間の業を描いた作品だ。これをAimerが見事に曲にしている。こうした人間の暗部を歌いあげられる唯一に近い日本のミュージシャン(表現者)である。本作品を暗くしている最大の原因はこの曲にある。

立ち上がり曲は、EGOISTの「名前のない怪物」。EGOISTの3枚目のシングル。2012年12月5日にSony Recordsから発売された。テレビアニメ『PSYCHO-PASS』のエンディングテーマおよび同作劇場版エンディングテーマに起用された。実は、私はこのアニメ『PSYCHO-PASS』が大好きで全部観ている。だから曲が流れた瞬間にピンときた。早く曲名を確かめて、観劇レポートを書きたいと思ったわけ。(笑)

ついでながら、「EGOIST」とは、TV アニメ『ギルティクラウン』から誕生したsupercell のryo がプロデュースを務める架空のウェブアーティストである。この『ギルティクラウン』のメインヒロインである楪(ゆずりは)いのりが「EGOIST」のボーカル。無表情でミステリアスな雰囲気が漂い、出生不明。歌うことで自分の感情を解放する、という女の子である。この「EGOIST」の1stアルバムはオリコンウィークリーチャート初登場トップ10入りを果たすなど大きな話題になった。

 

これから渡す私の童話は、今までと雰囲気ががらりと変わる。アニメ『PSYCHO-PASS』や『攻殻機動隊』に深く影響しているから。乞う期待。

 

 

平成31年1月                           池袋ミカドにて

 

 

 

【黒瀬あんじゅさんからの手紙】

ステキなレポートありがとうございました♡

今回の「名前のない怪物」はベッド入りの「Black bird」と最後の「名前のない怪物」を中心に構成しました。

人気商売のストリップだからこそ起こりえる人対人の嫉妬、私はまだ半年ちょっとの新人なので名前のない(知られてない)ストリップ界の怪物になりたいという意味も込めて使用しました。たくさんの想いを込めた新作を愛して頂ければ嬉しいです。