2019年10月結の池袋ミカド劇場における、玉さん(TS所属)の公演模様を、演目「コードネームはTAMA」を題材に、「スパイは地球を救う」という題名で語りたい。

 

 

  2019年10月結の池袋ミカド劇場に顔を出す。今週の香盤は次の通り。①山咲みみ(TS)、②KAERA(TS)、③玉(TS)、④虹歩(蕨ミニ)、⑤上野綾(東洋)、⑥伊東紅蘭(東洋) 〔敬称略〕。

 

 玉さんの今週の出し物は、1,3回目は二周年作「遊び女Rart3~白拍子~」、2,4回目に新作「コードネームはTAMA」。この新作は10月10日にシアター上野で初めて拝見しており、次の機会に観劇レポートさせてもらいたいと思っていたので、いいタイミングだった。

 

 男なら誰しもスパイと聞いただけで心が弾む。映画007シリーズに心を躍らせたはず。

今回の作品を初めて拝見した時、何がテーマかさっぱり分からなかった。玉さんに尋ねたら、「新作名は『コードネームはTAMA』、スパイなのです。」という答えが返ってきた瞬間から、次に拝見したときに必ず真剣に観て、観劇レポートを書こうと心に決めていた。

 

 まず、ステージ内容をおさらいしよう。

 最初に、有名なフランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」にのって踊る、華麗な踊り子が登場する。全体的にパープル系にまとめている衣装。髪飾りもパープルの花飾り。上部は肩出しで、白い首輪、胸から下のドレスを肩紐で吊るす。後ろを見るとコルセット状に締める。裾広がりのピンクのスカート。足元は銀のハイヒールを履く。手には白く長い手袋をしている。ピンクと白と黄色の花束をひとつ持って音楽に合わせ踊る。

 踊り子を演じているが実はスパイ---

「夢見るシャンソン人形」は、セルジュ・ゲンスブールが作詞作曲したフランスの大ヒットしたポピュラー音楽である。しかし、この曲には悪いエピソードがある。「夢見るシャンソン人形」という曲は1965年、フランス・ギャルというアイドル歌手が17歳で歌い大ヒットした。ところが、その歌詞をじっくり確認すると、まだ人生経験も浅い、歳も若いアイドルが恋愛について歌うのを揶揄する内容になっている。彼女に作詞作曲したゲンズプールは、他にも皮肉や嫌味が入っている歌を彼女に提供した。ギャルは当時、「夢見るシャンソン人形」の中の「蝋人形、詰め物人形」といった歌詞やタイトルに込められていた二重の意味に気付かなかった。後年になりギャルは本作と距離を置き、歌うこともなくなったという。この歌の裏と表が、まるで踊り子とスパイを暗喩しているようだ。

 音楽が変わる。今度は、映画「ミッション・インポッシブル」のインスト曲。これも有名なスパイ映画で選曲がぴったり。

 一旦、暗転し、着替える。

 キラキラした黒いヘアバンドと首輪。上半身は裸で、腰に長いパープルの布を巻く。そして、同じくパープルの大きな布を振りかざして舞い踊る。パープル系はスパイの色なのかな。

 ここで、また暗転し、着替える。

 赤いだふっとしたドレス。襟元と裾が金模様。音楽に合わせ裸足で舞う。

 三曲目は、ロシアの作曲家チャイコフスキーによるバレエ作品「くるみ割り人形」の劇中歌で、コーヒーの精がアラビアの踊りを披露するもの。このバレエ作品は、童話「くるみ割り人形と はつかねずみの王様」を原作とする。クリスマスの夜、くるみ割り人形が姿を変えた王子に連れられて、少女クララはお菓子の国にやって来た。お城では、クララを歓迎する華やかな宴が催され、ロシアの踊り、アラビアの踊り、中国の踊りなど、国際色豊かな楽しい踊りが次々と繰り広げられていった・・・。くるみ割り人形と王子と同様に、本作品も踊り子という表の顔とスパイという裏の顔を演ずる。

このまま、ベッドショーへ。黒いパンティを左手に巻く。

アクセサリーがたくさん。ブルーと金のピアス。左手首に金のブレスレット。左手中指に金のリング。右手首にも金のブレスレット。右手人差し指と薬指にも金のリング。右足首にも金のブレスレット。そして、手にはパープルのマニキュア。

ベッド曲は、Janet Jackson (ジャネット・ジャクソン)の「Throb(スロッブ)」。1993年のアルバム『ジャネット(janet.)』から。エロティックなうめき声を入れたエレクトロなトランス・ダンス曲である。

  立ち上がり曲は不明。「不明だけど、これに演目の秘密があります。あるドラマ?の曲らしいです。ヒントはスパイです。先生に言われて、まだヒミツでごめんね。」

 最後に謎かけされてしまい、私にはこれ以上の作品説明はできない。

 

 しかし、私はスパイ好きなので当然に気になる。

 そもそもスパイというのは何か。「スパイ(英: spy)とは、政府や他の組織に雇われて、秘密裏に敵や競争相手の情報を得る人のこと。工作員とも。」対象は主に国家です。表だって敵対している国だけでなく、潜在的な敵国、つまり表面的には友好国だけども将来は敵になるかもしれないと考えられる国も含まれます。相手が何を考えているのか、これからどういう行動に出るのかなど、様々な種類の情報を集めるのがスパイたちの仕事です。

映画では政府機関に空から潜入して、重要な情報が入ったファイルを盗み出すなど派手な活動をしていますが……、現実はもっと地味です。彼らは、まず外交官や牧師などをしています。

 ネットで、スパイについて検索していて面白い記事があった。

来年公開される予定の人気スパイ映画「007」の次回作で、主人公ジェームズ・ボンドのコードネーム「007」が黒人女性に引き継がれそうです。英国の大衆紙デイリー・メールがこのニュースを報じると、世界中で話題になりました。女性や黒人が「007」を名乗るのは、シリーズ25作目で初めてとのこと。

ひとつ、私も007で童話を創ってみました。

 

   

2019年10月                           池袋ミカド劇場にて

 

 

 

 

 

 

スパイ童話『ボンド・ガールTAMA』

~TAMAさん(TS所属)の新作「コードネームはTAMA」を記念して~

 

 

ボンドは、仕事と休養を兼ねて、とある外国の街のキャバレーにいた。

 一人の踊り子のステージに目が留まった。「なんて、すてきな雰囲気をもった女性だろう」

 ステージは、彼女が赤い化粧台に座り鏡をもって化粧している姿から始まった。髪をピンでとめて結い上げているせいか、美しい顔がよく見えた。観客に流し目を送り、おもむろに立ち上がって踊り出した。ピンを外し、長い髪がくるりと背中に垂れた。シックな黒い衣装が大人の雰囲気を醸していた。キラキラ輝く胸元の銀のネックレスが彼女の気品を高めている。

 ボンドの心が高鳴った。すぐにバーテンに彼女と一緒に飲みたいと話した。

 彼女は笑顔でボンドのいるテーブルに着いた。名前をTAMAと言った。

「踊りがお上手ですね」とボンドが話すと、「ありがとうございます。小さい頃からダンスが好きで習っていたんです。」とTAMAは答えた。

 ボンドは、旅行で来ていること、いろんな外国での出来事をユーモアを交えて話し出した。TAMAは目を輝かせて話に聴き入った。お洒落な大人の会話が続き、二人が恋に落ちるのに時間はかからなかった。

 

 ボンドはA国の秘密諜報部員。鍛えられた肉体だけでなく、知識・教養を含めて、まさに選ばれた人間だった。

 一方、TAMAもB国の秘密諜報部員だった。美しい美貌、気品だけでなく、身体能力に長けていた。まさに彼女も選ばれた人間だった。

 最高の男性と最高の女性が、お互いの素性を知らないままに出会った。それは最高の恋になるはずであったが、悲劇はすぐに訪れた。

 二人は、それぞれの国からの指示で、共通のある事件の重要人物を追っていた。その人物が一方の国に捕えられるともう一方の国が大変に不利な状況に置かれるために必死で捜索を続けていた。両国とも国の威信をかけ、スパイ活動を中心に対応していたが、事態はどんどん泥沼化してきた。

 そんな中、A国の秘密情報部からTAMAの殺害命令が下った。ボンドは愕然とした。

 一方、同じ頃に、B国でもボンドの殺害命令が下った。TAMAは驚愕した。

 

 二人は秘密裡のうちに、出会ったキャバレーで再会した。

 それぞれの国の命運を担った二人だが、国の指示に従うつもりはなかった。愛する相手を殺すことなんてできない。しかし、命令に背いたら生きて帰れない。

「君を殺すことなんてできない。君のためなら僕は死んでもかまわない。」とボンドは言う。

「私もあなたを殺せない。あなたのために死を選ぶわ。」とTAMAも応える。

 二人は心中しようと誓った。

「今度生まれてくるときには、争いのない時代で、必ず結ばれようね!」

 二人は拳銃をそれぞれの胸に当てて向かい合った。

 

 そんな二人の前に「平和の神様」が現れた。

「死ぬのは待ちなさいもうすぐ事態は変わる。別のことで、あなたたちは必要とされます。」

 神様の言葉が終わるやいなや、ボンドとTAMAの携帯がほぼ同時に鳴った。

「どこにいるんだ。すぐに戻って来い!大変なことが起こった。」

 二人はそれぞれの国に急いで戻った。

 

 地球は、ある異星人から宣戦布告を受けていた。

 異星人が地球を侵略し出し、いくつかの都市に異星人が入り込んできた。

 A国もB国も地球内で小競り合いしている場合ではない。地球が一つになって異星人に立ち向かわなければならない事態となる。

 地球防衛軍が組織される。その責任者にボンドとTAMAが任命された。まさに選ばれた二人に地球の命運が託された。

 

 宇宙飛行船から現れた異星人は、人間よりかなり小さく、頭が大きく幼児体型をしていた。一見、弱弱しい感じ。「一気に異星人を捻りつぶしてやる!」と人間は息巻いた。

 地球防衛軍は、優れた兵器を繰り出して、異星人や宇宙飛行船に反撃を加えた。

 ところが不思議な現象が起こった。地球人の怒りの感情や兵器の威力が、異星人に吸い取られ、まるで鏡に反射するように人間に跳ね返って来た。兵器の破壊力が大きければ大きいほど、カウンターの威力になって返って来た。地球は大きな被害を受け、ますます熱くなって攻撃を増大した。殺傷能力が優れている兵器を使うほど、それだけ多くの人間が死んでいった。地球上から戦闘に加わった男性がどんどん死んでいった。

 ところが不思議なことに、反抗しない女子供に対しては全く危害を加えなかった。

 地球防衛軍が、異星人は相手の力を利用して倍返しするカウンター攻撃を得意とすることに気付いたときには、もう地球上の武器は底をつき、多くの都市が破壊され焼け野原になっていた。地球は完全に劣勢となり、このままでは異星人に侵略されてしまう。

愛し合っていたボンドとTAMAは「このままでは僕らの未来の子孫に地球をバトンタッチできなくなる」と危機感を抱いた。責任者として二人は苦悩する。

 

 そこに再び「平和の神様」が現れた。「この地球をあなた方人間だけに任せるつもりはありません。私に任せなさい。今から全地球規模で攻勢に出ます。」

 平和の神様の号令で、たくさんの天使たちが集まりました。人間以外の生物として、動物、鳥、魚、昆虫、さらに細菌などの微生物、そして魑魅魍魎の妖怪まで含めて全地球規模の攻撃体制が整いました。

それらが一斉に異星人に襲いかかりました。ところが、それらの生物は相手を殺そうという感情は無く、武器を持っていませんでした。ただただ、自分らの生きる権利と生活する場所を確保するために邪魔しないでほしいと主張しているに過ぎません。

異星人は、自分達を殺そうという意思や感情等のマイナスのエネルギーを利用してカウンター攻撃しようとするも、相手にマイナスの思いが無いため混乱しました。異星人は防御の仕方が分からないまま最後は自滅しました。

 

地球は都市という都市がことごとく破壊され、荒廃した地が続きました。

「平和の神様」は、この荒れ果ててしまった地球をもう一度人間の手に託すことにしました。

 ボンドとTAMAに向かって言いました。

「あなた方二人が、これからの地球のアダムとイブになりなさい。あなたたちは地球の命運を託された真に選ばれた人間なのです。」

そして、こう付け加えました。「地球は荒廃してしまいましたが、全ての武器という武器は地上から無くなりましたね。国境も無くなったし、もう殺し合うことはありません。」と平和の神様は片目をつぶりました。

 

ボンドはTAMAに結婚を申し込みました。TAMAは喜んでボンド・ガールになりました。

 

                                    おしまい