玉さん(TS所属)について、H30年9月結のライブシアター栗橋での公演模様を、新作「遊び女(あそびめ)~Part1~吉原」を題材に、「花魁のもつ切なさ」という題名で語りたい。

 

 

H30年9月22日(土)、ライブシアター栗橋に顔を出す。

今週の香盤は次の通り。①玉(TS)、②黒井ひとみ(栗橋)、③本城ナナ(道劇)、④沢村れいか(ロック)、⑤倖田李梨(ロック)〔敬称略〕。倖田李梨さんが栗橋初乗り。

 

玉さんとは、4月結のここ栗橋以来なので五か月ぶりと随分ご無沙汰してしまった。

なんと今週は、ここ栗橋で新作を初出ししていた。しかも初の和物だ。「栗橋で初出し緊張しました~!!」「もちろん、今回も全て桃子先生です。和物初心者なので着脱しやすいように作ってくれました。吉原なんでちょい悲しい曲ですが・・・」

本作を観た瞬間に、これは玉さんによく似合う演目だと感じた。「新作似合うって言ってくれて嬉しいです。」

さっそく新作「遊び女~Part1~吉原」の内容をご紹介したい。

 

最初に、豪華絢爛な花魁の恰好で登場。青い和傘をさして、金襴緞子の衣装で赤と金色の織りなす扇子を持って舞い踊る。

音楽はサザンオールスターズの「エロティカセブン」(サザンの32枚目のシングル。1993年7月21日発売。) この音楽と花魁がどちらもエロテックなのかよくマッチしている。

盆の上に移動する。裸足なのが分かる。足の爪には紫と銀のマニキュアが見える。

音楽が「吉原ラメント」という曲に変わる。作詞作曲そして歌も亜沙。

吉原で働く女たちの気持ちを切々と歌っている。お陰で吉原の情景が浮かんでくる。

盆の上で次々と着物を脱いでいく。赤い腰巻き一枚になったところで、最後に青い傘を持つ。ここで暗転する。

三曲目が、小林麻美の「雨音はショパンの調べ」(1984年4月21日発売)に変わる。この歌は、原曲は、イタリアの男性歌手ガゼボの歌唱による1983年の楽曲I Like Chopin。世界的なヒットをみた楽曲であり、1980年代のイタロディスコの中でも最もよく知られた楽曲の一つである。多くのカバー曲があるも、日本では小林麻美のカバー曲が有名。日本語歌詞は小林とは旧友でもあった松任谷由実による。

本演目では、小林麻美がアンニュイさを帯びた大人な女性の雰囲気で歌っているのがマッチしている。

そして、ラストのベッド曲に、浜田省吾の「青の時間」(1990年6月21日にリリースされた浜田省吾のオリジナルアルバム「誰がために鐘は鳴る」に収録された曲)を持ってくるところに脱帽した。もしかしたら先ほどの青い和傘は、この青の時間に通じるのか・・と唸らせられた。

私は昔カラオケで浜省の歌をよく歌っていたが、この曲は知らなかった。初めて聴いたが、懐かしい浜省の声とともに心に響いてくるものがある。この「青の時間」で歌われる風景は、夕暮れの後に訪れる、文字通り「青い」時間である。空が夜の闇に変わる前に、少しだけ明るみを残している風景だ。もちろんこの「青の時間」の「青」には、主人公のいわば「ブルーな気分」も含まれていると言える。彼女を失ってしまうという切なさである。それは「想いも思い出も青く染まってゆく」という歌詞にも表れている。

本演目では、その切なさを女性の立場に置き換えている。「彼女は約束の場所で 待ち疲れておれが来ないことを 最後の答えだと 決めて去って行くだろう」という歌詞に私は心が震えた。花魁はしょせん男を待つ女なのだ。華やかな衣装をするのは全て男に近寄ってもらいたい誘いなのである。本演目は、最初に派手な衣装で男を誘惑するも、最後は「待つ身の辛さ」を切々と歌った物語なのである。

 そして、花魁の境遇は踊り子に通じる。本作品を作った桃子先生はすごいね。この演目を演じ切った先に、玉さんのひとつの成長する姿を見るような気がしてくる。また演目名にPart1を付けたところに、この先更にPart2、Part3が展開していくのかなという期待感を抱かせる。玉さんがこの演目が似合うようになったら真の踊り子として脱皮するのだと感じさせられたよ。

 

 

平成30年9月                        ライブシアター栗橋にて