『夢の中のお姫様』 ~あいかわ優衣さん(TS所属)に捧げる~
ある日、僕の夢の中に、この世の者とは思えないほど美しい美しいお姫様が現れた。まるで、童話の世界にある西洋のお城に住んでいるお姫様のようだ。名前をユイリー姫と言った。
僕は一目で夢中になり、ユイリー姫とまさに夢のような時間(とき)を過ごした。
僕は毎日、寝るのが楽しみになった。もちろん、ユイリー姫に会いたいからだった。
ところが突然、僕の夢の中からユイリー姫は消えてしまった。どんなに探しても、現れてくれなかった。
僕は、仲良しの踊り子まみんちゃん(*)に相談した。
すると、まみんちゃんは「私が夢の扉を開けてあげるわ」と言ってくれた。
僕は喜んで、彼女が開いてくれた夢の中に入って行った。
入った瞬間、すごく懐かしい感じがした。まるで、母なる子宮の中で優しく包まれているような空間だった。
僕は嬉しくなって、駆け回った。
あれっ! 白雪姫やシンデレラ、それに不思議の国のアリスまでいるぞ。
突然、肩を叩かれた。知っている顔が僕に声をかけた。なんとピーターパンだ!
「いらっしゃい! 大人のネバーランドにようこそ。」
僕は、ユイリー姫を探しに、ここに来たことを話した。
すると、ピーターパンは「ユイリー姫はこの夢の国ネバーランドを治めるお城に住んでいるお姫様なので、ユイリー姫に会うには夢の国の住人でなければダメなんだ。君はまだその資格がないよね。」と説明してくれた。
ユイリー姫に会えないと分かった僕は、もう一度夢の扉から元の世界に戻った。
そして、まみんちゃんにそのことを話した。
すると、まみんちゃんはこう言ってくれた。「大丈夫よ。あなたは既に夢の住人よ。なぜなら、あなたはいつもたくさんの童話を書いて、夢を描いているわよね。夢追い人は既に夢の住人なのよ。だから、ユイリー姫に会えるわよ。」
僕はもう一度まみんちゃんに頼んで、夢の扉を開けてもらい、夢の国に入って行った。
急いでお城までたどり着くと、城の前にユイリー姫が立っていて笑顔で迎えてくれた。
「ずっと会いたかったんだよ。」と僕が言うと、
「私もよ。」そう言って、ユイリー姫は僕の頬にキスをしてくれた。
僕はユイリー姫と結婚して、この夢の国で一生楽しく幸せに暮らしました。
おしまい
*.海宙まみんさん(TS所属、H25.1引退)は、優衣さんと一緒にチーム・ショーを演じた仲。
ポラでオープンする時に、いつも「夢の扉を開きます~!」と大きな声を発して客の笑いを誘った。
『夢の中のお姫様』(続編「ユイリー姫と浮気王子」)
~あいかわ優衣さん(TS所属)に捧げる~
僕は、王子としてユイリー姫と結婚し、一生楽しく過ごすはずだった。
ところが、夢の中には長くおれず、一晩寝て、目が覚めたときには現実の世界へ引き戻された。
実際に夢と現実の間には大きな障壁があった。現実の世界に住む僕には越えられない何かがあった。
僕はユイリー姫に逢いたくて、毎晩、夢をみようと心掛けたが無理だった。それどころか不眠症になってしまうほどだった。
僕は彷徨うようにストリップ劇場に向かった。前に夢の扉を開けてくれた、まみんちゃんは既にそこには居なかった。でも、劇場にいるとなぜか安心した。ストリップの世界が夢の世界のように感じられ、僕は毎日劇場に通い続けた。
ある日、突然、劇場にユイリー姫が現れた。僕は気が動転した。
ユイリー姫は叫んだ。「この浮気王子!私のことを見捨てて、こんなところで浮気していたのね。」
僕は慌てて説明した。ユイリー姫に逢いたくて、必死で夢の国に行こうとしたがダメだったこと、終いには不眠症になってしまったことも話した。ユイリー姫は気持ちが落ち着き、「浮気王子」なんて酷いことを言ったことを素直に謝った。そして、どうしたら僕が夢の世界に戻れるか一緒に考えることにした。
ユイリー姫は、劇場と踊り子として契約した。美しいユイリー姫を観て、劇場側は大喜び。大々的にデビューのイベントが催され、ユイリー姫は劇場の看板として活躍するようになる。
僕はユイリー姫に会うために毎日のように劇場に通った。
ユイリー姫のステージはそれはそれは素晴らしかった。
まさにディズニーの世界から抜け出たような美しいお姫様を演じた。観客は誰もが見惚れた。
ひとつだけ不思議な現象があった。ユイリー姫がオープンすると、あそこからピンクの強い光が発せられた。誰もが目がつぶれるため目をつぶらざるを得ない。しかし、観客の誰もがその光に激しいエクスタシーを覚え満足させられた。
僕は、ユイリー姫の大事な秘部にこそ、現実と夢の懸け橋があることにうすうす気づいた。この中に抵抗なく入っていける者だけに夢の扉が開かれる。
僕はユイリー姫のことを心から愛していた。しかし、この扉を開ける資格が自分にはないことを感じ始めていた。
ある日、観客の中に、ユイリー姫のオープンを目をつぶらずに見ている青年がいた。
彼の目は優しくユイリー姫を見つめた。ユイリー姫も何かを感じ取っていた。彼には夢の国に住める資格がありそう。おそらく彼は夢の国の子孫で、彼のDNAが強くユイリー姫を惹きつけているようだった。
僕はユイリー姫の顔を見つめて、「ようやく君に相応しい相手が現れたようだね。僕のことは気にしなくていいよ。二人で夢の国で幸せになってほしい。」と語り掛けた。
ユイリー姫はこっくり頷き、夢の扉を開いた。彼は扉の向こうに入って行った。
僕はいつものように劇場通いを続けている。
新しい踊り子さんを求めて今日も劇場を彷徨っている。
「浮気王子と言われても仕方ないかな」と笑みを浮かべながらも僕はこうつぶやいた。
「ユイリー姫に対する心の傷が疼くたびに、新しい踊り子さんにときめきを感じ、それで心を紛らわせるしかない。ユイリー姫のことを今でも心から愛しているんだ。この気持ちは一生変わらない。」
夢の国でユイリー姫が幸せになっていることを心から願っている。ユイリー姫のことは決して忘れない。
おしまい