2020年1月頭の大阪晃生ショー劇場における、宇佐美なつさん(道劇所属)の公演模様を、5作品目「ナイトクルーズ」を題材に、「ストリップこそが楽園だ」という題名で語りたい。
2020年お正月公演、年末の大晦日に大阪晃生ショー劇場に顔を出す。昨年に引き続き、今年も年末年始は大阪晃生と決めていた。今回は人気の晃生メンバーに、今や時の人になっている道劇の宇佐美なつさんを加え、最高のメンバーを揃えていた。
今週の香盤は次の通り。①宇佐美なつ(道劇)、②神崎雪乃(晃生)、③くるる(晃生)、④北原杏里(晃生)、⑤浜崎るり(晃生) 〔敬称略〕。
最近は関東の劇場では大晦日を休館としている。大晦日に興行しているストリップ劇場は全国的にも大阪の東洋と晃生の二館しかない。ただ大晦日はどちらの館も二回公演のみ。東洋は時間通り17時過ぎに終わるが、晃生はゲームタイムなどもあって21時頃まで行われ、たっぷり楽しめるのでお得感がある。だから私は昨年も年末年始は大阪晃生としていたし、今年も同じスケジュールを組んだ。ちなみに今年の関東ではシアター上野だけ大晦日に三回公演していたので大入りだったと聞く。
晃生のお正月公演には、たくさんの宇佐美なつファンが関東から遠征してきていた。私のスト仲間もいて、同じ宿に泊まっていた。
さて、お正月興行に合わせて新作を出す踊り子さんが多い。ただ、だいたいは初日の大晦日には旧作を出し、二日目の1日から新作を披露するのが一般的である。ところが、この常識は新人の宇佐美なつさんには通じない。大晦日の一回目ステージで、なつさんが新作を出してきたとき、私は驚き、隣に座っていたスト仲間と顔を見合わせた。新作を観れて、やったー!という感じ。
なつさんとしては、とにかく仕上がったからには早く披露したいという思いのようだ。なつさんには出し惜しみなんてない。(笑)
新作は宇佐美なつさんにとって早くも5作目になるわけだが、どんな内容か気になる。前作「黒煙」ではアダルトな作品に挑戦していたが、今回も同じ路線かな?
題名は「ナイトクルーズ」。ナイトクルーズと聞けば、ふつうは豪華客船にのってライトアップされた夜景を楽しむことを想像しちゃう。が、今回の作品はちょっと違う。椅子の上に、昔懐かしのラジカセが置かれてある。音楽を聴きながら過去の別世界を見せてくれるのかもしれない。
おっ! 前作「黒煙」では全て男性ボーカルだったが、今回はまた女性ボーカルに戻っている。しかし、これまた知らない曲に知らないミュージシャンばかりだ!おじさん感覚からすれば聴き慣れない楽曲だなぁ~と思うも、新しいものに触れてみたい好奇心が湧いてくる。それにしても、教えて頂いた曲名と楽曲者を調べているだけで不思議な感覚に襲われてきた。(笑)
さあ、今回も、楽曲に沿って、ステージ内容を検証してみる。
最初に、シュミーズ風の白いドレス姿で、白い椅子にうずくまった状態で登場。首には白い真珠の首輪。衣装の上半身は肩出しで、胸と袖の布が繋がっている。スカート部はシュミーズ丈で、裸足で踊る。
音楽に合わせ、コンテンポラリーダンスぽく踊る。
一曲目は、吉澤嘉代子の「えらばれし子供たちの密話」。作詞・作曲:吉澤嘉代子。
るるる~と軽いリズムで歌っているので私の好きなファンタジーの世界かと思いきや、《誰かの寝息に毒をまぜて》っていうフレーズが出てきてドキッとする。かなりショッキングな歌詞だ。ストーリーはこうだ。・・・
時は1990年、小学校5年生の男女のお話。二人は学校ではほとんど会話をしませんが、連絡網を通じてつながっています。二人は校舎裏に隠された暗号を集めて、電話で暗号を言い合うことで、いつか楽園に行けると信じていました。学校にも家にも居場所がない二人に、ある夜、ついに楽園に行ける日がきます。そこで、親を毒殺して楽園に行こうとするものの、結局捕まってしまい、マスコミにも晒され、二人は離れ離れになってしまいます。しかし、大人になった時に、再び会いに行きます…。
摩訶不思議な世界というか、歪んだ世界にも思える。もしかしたら、私が青春時代に初めて谷山浩子の世界に触れて心がときめいたと同じ感覚で、なつさんたちは吉澤嘉代子の世界を聴いているのかなとふと思う。いずれにせよ、我々おじさんが彼女の世界観に馴染むには少し時間がかかりそうだ。
ネットで調べると、彼女の世界観がすごく注目されているのに驚く。次のように紹介される。<「魔女修行」に明け暮れた少女時代を経て、奇天烈な物語の主人公を歌と楽曲で演じる「妄想系シンガーソングライター」として今や唯一無二の存在感を放つ吉澤嘉代子。1st『箒星図鑑』(2015年)、2nd『東京絶景』(2016年)、そして『屋根裏獣』へと連なるフルアルバム「初期三部作」の集大成となる今作は、彼女の新たな進化の季節を十分に予感させる1枚だ。>
吉澤嘉代子(よしざわ かよこ、1990年6月4日 – 現在29歳)は、日本のシンガーソングライター。1990年埼玉県川口市生まれ。血液型はO型。 鋳物工場街育ちで、実家は金型の工場を営んでいた。小学5年生から中学時代の5年間、完全に不登校となり、昼の子どもがいない時間帯に図書館に入り浸って小説を読むようになる。
下線の部分に彼女の原点がありそうだ。彼女のライブ映像を見ると、とてもチャーミングなふつうの娘さんだ。不登校少女がどうして自己実現できたのか、彼女の音楽の才能の源は何か、非常に興味が惹かれるところ。
一曲目が終わり、少しの間だけ暗転。音楽が変わる。照明が点くと、椅子の上にラジカセが置いてある。
同じ衣装のまま、音楽に合わせて、裸足で踊る。
二曲目は、MONDO GROSS(モンド・ グロッソ)の「応答せよ [Vocal:やくしまるえつこ(相対性理論)]」。作詞:Tica α、作曲: Shinichi Osawa/Tica α
いかにもタイトルのナイトクルーズ風のイカしたサウンドだが、歌詞はこれまた魔訶不思議な世界だ。・・・ああ今宵のスイートなベッドルーム 怪獣棲みつくゴーストタウンの 深夜のファミリーレストラン 壊れたラジオの救難信号 地球は巨大なイースターエッグ 隠した秘密は解明されず 深夜の環状八号線に 乗り捨て ...
MONDO GROSSO(モンド・グロッソ)は日本の元バンドで、現在は大沢伸一のソロプロジェクト。バンド名はイタリア語で、「大きな世界」という意味。楽曲のジャンルはクラブ・ミュージックが中心。ジャズ、ソウル、ヒップホップ、ボサノヴァ、R&B等、その音楽性の幅はきわめて広く、対照的にハウスやブレイクビーツ、テクノといったデジタル音楽がベースの楽曲も数多い。
大沢 伸一(おおさわ しんいち、1967年2月7日 - 現在52歳)は、滋賀県大津市出身のミュージシャン。音楽家・音楽プロデューサー・ベーシスト・DJ等、数々の肩書きを持つ。血液型はO型。
音楽が変わって、ここで一旦暗転し、着替える。
肩袖のあるモスグリーンなドレス姿で登場。薄い生地なので白いパンティが透けて見える。音楽に合わせ、椅子に絡む。
三曲目は、Maison book girlの「SIX」。
Maison book girl(メゾンブックガール)は、2014年に結成された日本の4人組女性アイドルグループ。略称は「ブクガ」、「MBG」。ekoms所属。2014年7月8日に行われたBiSの解散コンサートにて、いずこねこを手掛けていた音楽家・サクライケンタが、BiSのコショージメグミを中心に結成。
そのまま椅子を持って盆に移動。椅子のベッドショーは初めての試み。
白いパンティを左手首に巻く。
近くに来たのでアクセサリーを確認。白い首輪、ヘソピアス。
ベッド曲は、神様クラブの「マモノ」。作詞:陽 作曲:神様クラブ。
子供っぽい歌声だが、これまた魔訶不思議な歌詞の世界だ。・・・妖艶にうごく マモノたちの夢光るカラダで ぼくをだきしめた生まれる前から君を 知ってるような気がしてカラダも目も歯も骨の形までぼくの腕の中にぴったりきてはなれないはなれないSとNグッバイきみが泣いている こんな世界はもう終わりダイヤでできたはしご ...
神様クラブは、東京を拠点に活動する陽(HARU)と周(AMANE)による日本の音楽ユニットユニット。2016年1月1日に結成。作詞作曲・ミックスをボーカルの陽、トラックメイキングを周が担当。
立ち上がり曲は、リトルゾンビーズの「This will be our year」。懐かしきビートルズ調の音楽。渋い曲で締めるねぇ~。映画『WE ARE LITTLE ZOMBIES』のサウンドトラックから。これは劇中で活躍するリトルゾンビーズの演奏。
『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(ウィーアーリトルゾンビーズ)は2019年6月14日公開の日本映画。 CMプランナーの長久允の長編映画デビュー作。サンダンス映画祭(アメリカ)、ベルリン映画祭(ドイツ)受賞作品。次のような概要。両親を亡くしゾンビのように心を無くした4人の子どもたちが冒険し心を取り戻そうと音楽を通して成長していく物語。10代前半の二宮慶多、水野哲志、奥村門土、中島セナらが劇中で登場するバンド「LITTLE ZOMBIES」のメンバー役で主演を務める。ゾンビーズというタイトルだがゾンビ映画ではない。 キャッチコピーは「生きてるくせに、死んでんじゃねえよ。」。
この曲は元々、ゾンビーズの1968年のアルバム『オデッセイ・アンド・オラクル』収録曲。「今日からスタート」という題名がいいね!!!!
ゾンビーズ(The Zombies)は、1961年に結成されたイギリスのロックバンド。シングル「Time Of The Season」(ふたりのシーズン)の大ヒットで知られる。セカンド・アルバムの『オデッセイ・アンド・オラクル』は、ローリング・ストーンが大規模なアンケートを参照した「オールタイム・ベストアルバム500」で100位にランクイン。2019年には、ロックの殿堂入りを果たした。
いつもながら、曲ひとつ取っても、宇佐美なつさんは奥の深い踊り子だなとつくづく思う。こうした才能のある音楽家を次々と繰り出してくる宇佐美作品に驚きと畏敬の念を覚える。宇佐美なつの最大の魅力はこうした選曲の妙にあるのかもしれない。改めて、そう思える。
全体を通してみると、一曲目の「えらばれし子供たちの密話」が本作のモチーフなのだと思う。「ナイトクルーズ」というのは親を殺してでも行きたい楽園なのかもしれない。そして、それは全てをかなぐり捨ててでも行きたいストリップの世界に他ならない。
暗い豪華船上から見える夜景はストリップのステージなのだ。
「えらばれし子供たちの密話」の歌詞では、子供の頃に一旦は諦めざるを得なかった楽園ではあるが大人になってからもう一度楽園を目指そうとする。それ以降の曲でも述べているように、子供の頃に夢見た楽園は摩訶不思議な世界であった。そして、ラスト曲に繋がる。ゾンビのように一旦は死んだものの、「生きてるくせに、死んでんじゃねえよ。」「今日からスタート!!!」と立ち上がって楽園を目指そうとする。
今回の作品「ナイトクルーズ」はストリップを愛するファンに対する応援歌と受け止めることができる。
2020年1月 大阪晃生ショー劇場にて
【宇佐美なつさんからのコメント】
「ナイトクルーズ」感想うれしいです。書いて下さったとおり、一曲目のストーリーが主軸となってます。
