今回は、道劇所属の愛野いづみさんの6周年作「オードリー・ヘップバーン」について語りたい。

 

 

お盆を過ぎて東京はもう秋の気配を感じ始める。7月から続いた、あの猛暑が和らいだだけでも心身共にホッとしている。

H27年8月結の渋谷道劇の香盤は次の通り。①愛野いづみ(道劇)、②井吹天音(フリー) 、③天上くるみ(TS)、④六花ましろ(道劇)、⑤一宮紗頼(道劇)、⑥多岐川美帆(晃生)〔敬称略〕。

 

トップの愛野いづみさんのステージを観た瞬間に、目が釘付けになった。

麗しの貴婦人の姿は、一幅の絵になっていた。白いロングドレスに、羽根が立った白い帽子を優雅にかぶり、日傘を差している。雰囲気に酔わせてくれる出で立ちだ。

有名なミュージカル映画『マイ・フェア・レディ』のオードリー・ヘップバーンをイメージしていることに気付くのに時間はかからなかった。

 

いづみさんからのポラ・コメントが、作品について解説してくれた。「6周年作品は、オードリー・へップバーンでした。。オードリは女性らしさ、品格、美しさ、内面も、すべて兼ね備えた女性の永遠の憧れです。」

いづみさんはオードリに憧れていて、ずっとチャレンジしてみようと温めてきた作品で、この六年間で一番好きな演目だと話してくれた。

観ていて、いづみさんの六年間の集大成なんだなとつくづく感ずるものがあった。

いづみさんとはデビューからの長いお付き合いになる。2009(H21)年7月1日、池袋ミカド劇場にて「愛野すみれ」という名前でデビュー。私のストリップ日記を辿ると、デビュー翌月の8月9日に初めてお会いしている。当時は、デビューしたばかりで、当然ながら自信無げな表情をしていたのが強く印象に残っている。正直言って、踊り子を続けられるかなと不安になったほど。その後、何度か会うたびにどんどん綺麗になっていき、まさにストリッパーの顔になっていくのを感じさせてくれる踊り子さんだった。

2011(H23)年に、池袋ミカド劇場がTS系の傘下になるのを契機に、「愛野いづみ」と改名して渋谷道頓堀劇場に移籍した。この頃から彼女の中に大きな変化を感ずるようになった。それは踊り子としての自覚というか、ステージにも自分の生きざまみたいなものをぶつけてきているのを感じていた。気持ちを前面に出しているというか、時にそれは女の情念みたいなものを覚えることもあった。そして、それに感応するごとく、確実に熱烈なファンを増やしていった。

私は、いづみさんのファンとして追いかけることはしなかったが、劇場で会えば必ずポラを買っていた。いつも優しく接してくれるので、好きな踊り子さんだったし、私のレポートにも関心をもってくれた。いつかは彼女のレポートを書いてみたいともずっと思っていた。だからH27年初めに、今年はいづみさんのレポートを書かせてもらうね!と本人に宣言していた。後は有言実行あるのみ。

機会をうかがっていたところに丁度6周年作「オードリー・ヘップバーン」を拝見して、これだ!と思わず手を打った。レポートするのに最高の題材である。

 

いづみさんから「男性から観て、素直にどう思われたでしょうか!?」と質問されるまでもなく、私にとってもオードリは憧れの女性である。

オードリー・ヘップバーン(オードリー・ヘプバーンとも表記される)(1929年5月4日生―1993年1月20日満63歳で没)は、イギリス人でアメリカ合衆国の女優。ハリウッド黄金時代に活躍した女優で、映画界ならびにファッション界でのアイコンとして知られる。米国映画協会の「最も偉大な女優50選」の第三位にランクインし、インターナショナル・ベスト・ドレッサーにも殿堂入りしている。

オードリと云えば、彼女の人気を不動にした映画『ローマの休日』で見せたアン王女役の愛らしい笑顔の印象が強い。ヘプバーンカットと呼ばれたショートカットが似合う、この美少女を嫌いな男性はこの世にいないだろう。映画史上最高の美少女の一人である。

1953年に『ローマの休日』でアカデミー主演女優賞を獲得。その後も『麗しのサブリナ』『尼僧物語』『ティファニーで朝食を』『シャレード』『マイ・フェア・レディ』など数々の人気作、話題作に出演。アカデミー賞、エミー賞、グラミー賞、トニー賞の受賞経験を持つ数少ない人物の一人。

しかし、オードリの最大の魅力はその生きざまにある。彼女は少女時代に第二次世界大戦下のオランダにいた。身内がナチス・ドイツに殺され、彼女自身もひどい栄養失調になる。戦争が終わり、ユニセフ(国際連合児童基金)が救援物資を届けてくれたことを生涯忘れなかった。後に「アンネの日記」のアンネ・フランクと同い年であったことを知り、ひどく心を痛めた。そのため「アンネの日記」の主役を求められたときに断っている。後半生はユニセフ親善大使になって、アフリカ、南米、アジアの恵まれない人々の救援活動に献身した。身体を酷使したことも重なり癌になり63歳の早すぎる生涯を終える。オードリは1954年からユニセフへの貢献を始めており、亡くなる直前の1992年の終わりには、ユニセフ親善大使としての活動に対してアメリカ合衆国における文民への最高勲章である大統領自由勲章を授与されている。

 

 最後に、映画『マイ・フェア・レディ』のあらすじを紹介したい。

 イギリスの上流階級の教授と友人が、ふと知り合った下町の娘イライザを上流階級の社交場にデビューさせられるかどうかの賭けをした。彼女は訛りがひどかった。しかし、ヒギンズ教授は彼女を自分の邸宅に住み込ませて教育する。そして、見事にイライザは社交界デビューし、教授は賭けに成功する。ところが、二人の賭けを知ったイライザは自分が教授の実験台であったことに怒り、教授の邸を飛び出す。しかし、独身の教授とイライザの間には恋が芽生えていた。・・・

 イライザがいなくなり淋しさを感じた教授は、訛りを治すために蓄音機に録音していたイライザの声を懐かしむ。ふと蓄音機が止まる。そこにイライザが涙を浮かべて立っていた。思わず飛んで行って抱きしめたいと思う教授だったが、口にしたのは「イライザ。ぼくのスリッパはどこ?」

 映画はハッピーエンドに終わるが原作の結末は違う。原作では、イライザは自分を人間として扱わなかったヒギンズ教授を許さなかった。イライザは没落して無一文になった青年フレディと結婚して、二人で花屋を始める。お金持ちで社会的地位のあるヒギンズではなく、等身大で愛し合える貧しい青年との苦労を選択したのであった。生きざまとしては、こちらの結末の方が私は好きだな~。

 

 自らの生きざまを演じ、またいろんな生きざまを感じさせてくれる踊り子さんに巡り合えることは、ストリップ・ファンとして幸せこの上ないことである。

 いづみさんに心から感謝したい。

 六周年記念レポート、これが私からの周年プレゼントです。

 

 

平成27年8月                            渋谷道劇にて

 

 

 

 

 

【付録】私の好きなオードリー・ヘップバーンの名言を紹介しよう。

 

魅力的な唇のためには、優しい言葉を紡ぐこと。

 愛らしい瞳のためには、人々の素晴らしさを見つけること。

 

  → 私が踊り子さんをレポートするときの基本スタンスそのものなのに驚いた。

    いかに、その踊り子さんの素晴らしさを見つけるか。

そして、いかに、それを優しい言葉で表現するかをいつも心がけている。

 

・美しい身のこなしのためには、決して一人で歩くことがないと知ること。

 

・わたしとって最高の勝利は、ありのままで生きられるようになったこと。

 自分と他人の欠点を受け入れることができるようになったことです。

 

・いばる男の人って、要するにまだ 一流でないってことなのよ。

 

・どんな日であれ、その日をとことん楽しむこと。

 ありのままの一日。ありのままの人々。

 過去は、現在に感謝すべきだということを私に教えてくれたような気がします。

 未来を心配ばかりしていたら、現在を思うさま楽しむゆとりが奪われてしまうわ。

 

・いわゆる天賦の才に恵まれていると思ったことはないわ。

 仕事を心から愛して最善を尽くしただけよ。

 

・わたしを笑わせてくれる人を わたしは大事にしますわ。

 正直なところ、私は笑うことがなによりも好きなんだと思う。

 悩ましいことが沢山あっても 笑うことで救われる。

 それって人間とって、一番大事なことじゃないかしら。

 

  → ストリップがあるお蔭で、私はいつもにこにこ笑顔でいられる。

 

・愛は行動なのよ。

 言葉だけではだめなのよ。

 言葉だけですんだことなんて一度だってなかったわ。

 私たちには生まれたときから愛する力が備わっている。

 それでも筋肉と同じで、その力は鍛えないと衰えていってしまうの・・・

 

  → ストリップがあるお蔭で、私は愛する力は衰えない。そう断言できる。

 

・なんとしても避けたかったのは、人生を振り返ったとき映画しかないという事態です。

 

  → 人生を振り返ったとき、私には仕事と家庭と、

そしてストリップがあったと思うことだろう。

 

・母から一つの人生観を与えられました。

 他者を優先しないのは、恥ずべきことでした。

 自制心を保てないのも、恥ずべきことでした。

 

・年をとると、人は自分に二つの手があることに気づきます。

 ひとつは自分を助ける手。

 そして、もうひとつは他人を助ける手。

 

・なにより大事なのは、人生を楽しむこと。幸せを感ずること。それだけです。

 

・幸福のこんな定義を聞いたことがあります。

 「幸福とは健康と物忘れの早さである」ですって!

 わたしが思いつきたかったわ。だって、それは真実だもの。