今回は、渋谷道劇の北川れんさんの六周年作品「星の王子さま」についてレポートします。

 

 

 平成29(2017)年3月7日、渋谷道劇を観劇。

今週の渋谷道劇の香盤は次のとおり。①御幸奈々(林企画)、②アキラ(道劇)、③白咲なるみ(道劇)、④橘メアリー(道劇)、⑤渚あおい(東洋)⑥北川れん(道劇)〔敬称略〕。今週は北川れんさんが六周年、アキラさんがBD週で、3/4(土)二回目ステージ終了後にダブルイベントあり(この日は三回公演)。また白咲なるみさんがデビュー、と話題がいっぱい。

 

トリの北川れんさんが六周年作品を披露。かぶりセンター席で期待しながら拝見。

最初の衣装を見た瞬間に童話「星の王子さま」と分かった。私はすぐにポラ時に「星の王子さまのバラの話だね。素晴らしい周年作だね。」と褒めた。すると「わーっ!太郎さん、分かってくれて凄く嬉しい。なかなか分からない人もいるのよ。太郎さん、レポート待っているからね。」とのれんさんの言葉。れんさんからレポートのリクエストをされたのは初めてだったので私自身うれしかった。以前、大阪東洋のステージをレポートしたことがあったが、今回張り切って二度目のレポートさせて頂くことにした。

 

 早速、六周年作品「星の王子さま」を紹介する。

 最初に、絵本「星の王子さま」とそっくりの姿で登場。金髪、黄緑色の宇宙服、黄色いスカーフ。白い靴。よく見ると、黄緑色の宇宙服にも黄色いベルトにもキラキラした星型マークが入っている。長身のれんさんがかっこよく決まっている。

 白いじょうろで、一本の赤いバラに水を遣る場面。童話のストーリー通り、星の王子さまは自分の星にある一本の赤いバラを育てている。ところが、王子さまはバラと喧嘩して星を出ることになる。

 場面が暗くなり、飛行機の音。童話の主人公の飛行機が墜落して星の王子さまと遭遇する。

 れんさんが蛍光塗料の六つの星を天井に張り付ける。星の王子さまが空を眺める。きっと、喧嘩して星に残してきたバラの花のことを思い出しているのだろう。

 場面が変わり、れんさんがバラの花になって登場。頭に真っ赤なバラの花をかぶる。身体中は緑の葉。濃淡を付けたたくさんの緑の葉が重なる。耳にも葉、首に緑のスカーフを巻き付ける。腕に茎が巻き付き、左手指先にも緑の葉。ベルト部に葉の刺繍。右足に黄色い紐を巻く。すんごく細部までこだわっているのが分かる。

 そのままベッドショーへ。自分がバラの花になる!!という発想がいい。

  最後に、一旦暗くなり、照明が付くと、盆の上に、ガラスケースに入った一本のバラの花が置かれている。印象的なラストシーンで締める。

 

 最初に現れたバラの花にはガラスケースは付いていない。ガラスケースは強い風が嫌いなバラの花のわがままで王子さまに頼んだもの。王子さまはそんなバラの花のわがままが許せなくて喧嘩して星を逃げ出した。しかし、最後の場面は、しっかりガラスケースに入っている。

 童話「星の王子さま」は意味深な内容がたくさん盛り込まれている。これをストリップで演ずるということ自体が凄いこと。れんさんから次のようなポラコメントをもらう。「いい話すぎて、どこをかいつまもうかすごく悩んだけど、バラとの愛に行きつきました。バラってエロの象徴的でベッドにも違和感ないし。分かってくれて嬉しいなー。」

 れんさんがとことんこだわり抜いて作ったのがよく伝わってくる。

 本題とは逸れるが、最初のインストは槇原敬之の曲「僕が一番欲しかったもの」。本来ならバラの花にかけて、同じ槇原敬之作曲のSMAP「世界にひとつだけの花」を持ってくるところだと思うがあえて「僕が一番欲しかったもの」にしたところが渋い。私も槇原敬之の曲の中でこれが一番好きなので、最初にこの曲を聴いただけでなんか嬉しくなった。(笑)

 

 童話「星の王子さま」は、フランス人の飛行士・小説家サン・テグジュペリが1943年に書いた、彼の代表的な小説。この作品は世界200以上の国と地域で出版され、世界で1億5千万冊も売れた大ベストセラー。

 れんさんのステージを機に、この童話を再読してみた。何度読んでもいいね。以下に、バラの話だけをかいつまんであらすじを話すね。・・・

 

 王子の星は家ほどの大きさで、そこにはよその星からやってきた種から咲いた一輪のバラの花があった。王子はバラの花が美しいと思い、大切に世話をした。しかし、ある日バラの花と喧嘩したことをきっかけに、他の星の世界を見に行くために旅に出ることにする。

 王子は六つの惑星を経由して、最終的に地球に辿り着く。

 王子は、地球の砂漠に降り立つ。その砂漠で、飛行機で不時着した「ぼく」と王子は出会う。ぼくは飛行機の故障を直しながら、王子の話を聞くことになる。

 地球に降り立った王子は、数千本のバラの群生に出会う。自分の星のバラの花のみを愛していた王子にとって、バラはありふれた、つまらないものであったのかと思い、泣く。

 泣いている王子のところに、キツネが現れる。悲しさを紛らわせるために遊んでほしいと頼む王子に、仲良くならないと遊ぶことはできない、とキツネは言う。キツネによると、「仲良くなる」とは、あるものを他の同じようなものとは違う、特別なものだと考えること、あるものに対して他よりもずっと時間をかけ、なにかを見るにつけ、それをよすがに思い出すようになることだと言う。これを聞いた王子は、いくら他にたくさんのバラがあろうとも、自分が美しいと思い、精一杯の世話をしたバラはやはりいとおしく、自分にとって一番のバラなのだと悟る。

 

 この話は、人により、また子供の時か大人になってかその読む時期により、感想が変わる。ストリップに嵌っている私がいま読むとこういう感想になるか。・・きれいな女性はたくさんいる、目の前にも美しい踊り子さんがたくさんいるけれど、自分にとっては長い時間をかけて付き合った女房こそが一番大切な存在だ!という結論に辿り着く。なぜ離婚する前にそのことに気づかなかったかと今更ながら後悔しても後の祭り。しかし、今はストリップと再婚したと思っている。・・・

 

 これだけの‘こだわりの作品’に出会い、改めて渋谷道劇のエースは北川れんだ!と再認識させられた。童話好きの私の琴線は激しく揺さぶられた。脱帽である。

 

 

平成29年3月7日                            渋谷道劇にて 

 

 

【おまけ】私が童話「星の王子さま」で気に入っている箇所をひとつ紹介します。

 

・キツネと別れることになり、王子は自分がキツネと「仲良く」なっていたことに気付く。別れの悲しさを前に「相手を悲しくさせるのなら、仲良くなんかならなければ良かった」と思う王子に、「黄色く色づく麦畑を見て王子の美しい金髪を思い出せるなら、仲良くなったことは決して無駄なこと、悪いことではなかった」とキツネは答える。別れ際、王子は

「大切なものは、目に見えない」という「秘密」をキツネから教えられる。

 

【北川れんさんからの返事】

れんさんが私のレポートをすごく喜んでくれて、丁寧なお返事を頂き、私も大感激!

「周年作は星の王子さまモチーフですが演目名は『The Rose』にしてるのです(笑)」 

「衣装にキラキラとか本当によく観ているね。数回観ただけなのに描写が素晴らしいー。太郎さんが書いてた私の演目は私が演じたくて表現したかったことがそのままで嬉しいね。」

「SE(飛行機)の音の意味、バラのガラスケースの有無、そこに気付いてくれた人はなかなか原作を知ってても分かってもらえずー。」

「張り付ける星の数に意味はなかったけど六つの星だね。。ストーリーでいうと6つの惑星を巡って7つめに地球。そして私も6周年、そんなとこにもかけてるとこに深さがあるのですよー。」 

「エースではないです・・!!(笑)」

「マッキーの曲、気になるから聴いてみよう。でも最初のインストはたぶん違うかも? 」 

「キツネのくだりは一人では演じれないですねー。ただ名言「大切なものは、目に見えない」は実は今回のオープン着に書かれてたりするのです(笑) 」

 

 

 

 

 

 

【付録】童話「星の王子さま」の中の名言集・・・→ストリップ流に解釈すると

 

①    「きちんと決めてあるから、ある一日が他の日と異なる。ある時間が、他の時間と異なる。

→きちんと決めることで、普通の一日が特別な一日になる。ほんと、女の人って記念日を大切にするよね!

ストリップ的には、デビュー日が踊り子さんの誕生日になり、それに合わせて周年のイベントが催される。誕生日や引退のイベントも盛り上がるね。

 

②    「子供たちだけが、自分が何を探しているか知っているんだね。

→やりたいことが分からない人は、自分が子供の時に何が好きだったかを考えるといい。踊り子になりたいと思う方は子供の頃、歌やダンス、お遊戯会などで人前に立つことが好きな女の子だったんだろうね。私の場合は、子供の時から女の人の裸に興味があったからストリップにはまったんだね、きっと(笑)

 

③    「何百万年も前から、バラの花はとげを付けてきたんだ。それなのに、何百万年も前から、ヒツジは花を食べてきた。そんなふうに何の役にも立たないとげを、どうしてバラがずっと付けてきたのか、その理由を知ろうとすることが、それほど大切なことじゃないって言うの!

→女の子は弱い。だから、とげがある。自分を守るためにはとげが必要なんだ。

 

④    「バラの言葉ではなくて、バラの行動に基づいて判断すべきだったんだ。

バラは、素敵な香りでボクを満たし、ボクの心を明るくしてくれた・・。ボクは逃げ出すべきじゃなかったんだ! 意地悪な言葉の背後には、バラの優しさが隠されていた。そのことにボクは気づかなくちゃいけなかったんだ。

→踊り子さんに時にとげのある言葉をかけられる。思わず尻込みしてしまう。しかし、一旦その言葉をしっかり受け止めて反省したり、これまでの優しかったやり取りを思い出し、彼女の本意を考えたりすることが必要だね。

 

⑤    「ボクは宇宙にたった一輪しかない花を持っていると思って有頂天になっていたけれど、そんなことはなかった。あの花は、どこにでもある普通の花だったんだ。」

→女の子はこの世にたくさんいる。もちろん、自分だけが特別の彼女をもっているわけではない。

ある踊り子に出会い、この子は特別だと思っても、実はどこにでもいる普通の女の子。その子を特別視しているのは自分の思い込みに過ぎない。それでも、その子を特別だと思える気持ちは大切にしたいと思う。

 

⑥    「君は、まだ、ぼくにとって、他の何千人もの小さな男の子たちと全く変わらない。ぼくには君は必要じゃない。そして、君にもぼくは必要じゃない。ぼくは、君にとって、他の何千匹ものキツネと全く同じだからね。だけど、もし君がぼくと絆を結んだら、ぼくたちはお互いを必要とすることになる。君は、ぼくにとって、世界でたった一人の友だちになるんだ。そして、ぼくは、君にとって、世界でたった一人の友だちになる・・・」

→特に男と女とはこういうものかな。すべて運命という絆なんだよ。踊り子とファンというのも同じものかもね。間をつなぐものがポラかな(笑)

→それにしても、このフレーズは槇原敬之作曲のSMAP「世界にひとつだけの花」によく通じるなぁ~

 

⑦    「君は、飼いならしたものしか知ることができないんだよ。人間たちには、もう何かを知るための時間がない。だから、お店に行って、出来合いのものを買うだけさ。だけど、友だちはどこにも売っていないから、人間たちは友だちを持っていないんだ。」

→とても意味深なことを言っているなぁ~。

食事にしたって自分で作らずに、忙しいからと出来合いのものばかり食べてる。パソコン、スマホなどの電子機器、電化製品、なにもかも便利だから買う。でも中身を知る努力なんてしない。

独身の男の子が、女の子は好きだけど、生身の女の子を相手するのは気が引ける。だから、お金を払って相手してもらえるストリップに行っちゃう。これは安易すぎる?

せめて人間関係だけは時間をかけて構築したいものだよね。ストリップだって、踊り子とファンというのは時間をかけて応援して初めて深まるものなんだと感ずる。

何事も「知る」っていうのは、深く時間がかかるものなんだね。

 

⑧    「あのバラは、たった一輪でも、キミたち全員よりも重要なんだ。なぜなら、ボクが、水をやったり、ついたてを立てたり、ガラスの器をかぶせたりして世話をしたからだ。゛ボクは、あのバラのために、毛虫だってやっつけてあげたんだーー2,3匹は蝶々にするために残しておいたけど。不平不満だって聞いてあげたし、自慢するのにだって付き合ってあげた。バラが、黙りこくっても、我慢してそばにいてあげた。だって、ボクのバラだからね。」

→たくさんのバラより、ボクのバラと思える一輪のバラがいとおしい。

目に見える「数」よりも、大事なものは目に見えない「気持ち」。

目の前のたくさんのプレゼントやチップに満足している君。でも本当に大切なのは、君に会いたくて劇場に足繫く通ってくる「気持ち」なんだよ。

 

⑨    「君がバラのために使った時間が長ければ長いほど、バラは君にとって大切な存在になるんだ

→愛情は時間をかけて育てるもの

→好きだった踊り子さんがいなくなる。今までたくさんの時間とたくさんのお金とたくさんの労力をかけて応援してきた。それが全て無駄になるの? そんなことはないさ。

ぼくは好きな踊り子さんのことを朝から晩まで毎日毎日想っていた。その時間が長ければ長いほど、ぼくの中で、その好きな踊り子さんは永遠に大切な存在になるんだ。

 

⑩    「人間たちは、みんな、そのことを忘れてしまっている。だけど、君は忘れちゃあダメだよ。君は、いったん誰かを飼いならしたら、いつまでもその人との関係を大切にしなくちゃ

→たくさんの客がほしい。だから、これからの客がほしい気持ちは分かる。でも、これまでの客はもっと大切にしなくちゃ。大事な人との関係はいつまでも大切にしてほしい。

 

⑪    「家でも、星でも、砂漠でも、それを美しくしているのは、何か目に見えないものなんだね」

→目に見えないものが、美しさを生み出す。踊り子を美しくするのはファンの愛情。

 

⑫    「地球の人間たちって、と、王子さまが言いました。

--同じ庭に、何千本もバラを育ててるけど、それでも自分が探しているものを見つけることができない・・・。

「たしかにそうだね・・・」

--たった一輪のバラを大切にすれば、探しているものが見つかるかもしれないのにね。水をゆっくり味わって飲んでも、見つかるかもしれない。

「そうだね」

それから、王子さまは、こう付け加えました。

--目で見ても、大切なものは見えないよ。ハートで見なくちゃ。

 

  →「大切なものは目に見えない」

  これがこの童話の主題だろう。さすがに、このテーマはステージでは表現できないね。なにせ見えないんだからね(笑)