渋谷道劇の踊り子、飯島しきさんについて「自分を知ること ~トラとインディアン娘~」と題したレポートを報告する。
H25(2013)年9月1日(日)、公演初日に渋谷道劇に向かう。その週の香盤は次の通り。①御幸奈々(フリー)、②月夜乃空(フリー)、③紫りょう(道劇)、④飯島しき(道劇)、⑤盃島楓(TS)、⑥青山はるか(晃生)〔敬称略〕。応援している青山はるかさん始め、新人の紫りょうさんのデビュー、と楽しみの多い香盤。今週、TSの盃島楓さんが今年いっぱいで引退すると楓ファンから聞いて大ショックだった。
そんな中で、今回は飯島しきさんの新作にはまった。とうとう念願の童話をしきさんにプレゼントできた。私自身も感動したが、しきさんも感動でいっぱいになっていた。「超すごいカンドーしました。うるうる (中略) 自分のイメージがこうお客様に伝わってるのって本当に嬉しいです。受け取ってくれてありがとう。本当に本当に心にしみました。」しきさんの反応がとても嬉しかった。
この感動を忘れないように、しきさんのレポートを書かせて頂きますね。
飯島しきさんはH23(2011)年11月21日に渋谷道劇でデビュー。もうすぐ二周年を迎える。新人さんが次々とデビューするものの、なかなか定着しない渋谷道劇で、よく頑張って続けてくれている一人である。
「渋谷にエキゾチックな美人さんがデビューしたぞ!」とスト仲間から耳打ちされて、デビュー週の中日に会いに行ったのを記録している。お顔の堀が深く目鼻だちがはっきりした美人顔。小麦色の素肌なので、中東など異国風の顔立ち。スト仲間がエキゾチックと言っていた意味が伝わる。身長はT151なので高くないが、B93.W56.H86というプロポーションは、特にバストが外人並みの迫力。
しきさんと仲良くなってつくづく感じるのが、外見は一見日本人離れしているのだが、内面はとても繊細な大和撫子であること。いつも笑顔で接してくれ優しい人柄が窺えるし、前回の演目では書道を演じ、素晴らしい腕前であることに感心した。字は人となりを反映するもの。
私の童話を気に入ってくれて、是非とも私の童話の絵を描きたいと話してくれる。書道の腕前を見ているので書画もできるだろうし、絵の勉強もしているとうかがったので楽しみにしている。
私の童話ファンであるからには、彼女の童話も書いてあげたいと前から考えていた。しきさん自身、それを期待しているのも分かった。かわいい蝶の演目のときも、童話にしやすいと思ったか、一生懸命その演目を説明してくれた。ところがステージを観ていても、なかなか童話のイメージが湧かない。インスピレーションが飛び込んできて、さぁ書くぞ!と思うまで、その時を待とうと考えていた。
そして、とうとう、その時が到来した。
ステージにインディアン娘が登場。しきさんの雰囲気はインディアン娘にピッタリ。たとえばディズニーのお姫様にも様々なタイプがあるが、しきさんは自身のもつ外見の雰囲気から云えば、アラジンのジャスミン姫かポカホンタスが似合うタイプと思っていた。色白ではないので普通のお姫様タイプよりは絶対こちらが似合うはず。そのバリエーションとしてインディアン衣装は成功していた。
ステージというのは、出し物を重ねながら、自分を知る作業を繰り返す。ステージでは今の自分を表現することはできるが、今の自分以上のものを演じようとすれば無理が生じる。だからステージは演じる場ではなく、自己表現の場なのだ。自分を高める努力は大切だが、なによりも今の自分を知ることが第一段階。インディアン娘はそのひとつの成功裡となっていた。服装や衣装というのは自分の個性にはまると美しさが引き立つ。そして、美は感動を呼ぶ!
その瞬間に、私の童心が騒ぎだした。童話の主人公としてイメージが膨らみ始めた。
今回の出し物は、映画“Life of Pi”をモチーフに使っている。最近、私は映画を観ないのでこの映画を知らず申し訳ないが、インターネットで調べたら、この映画は今年(第85回)のアカデミー賞受賞作品(監督賞始め最多4部門で受賞)でとてもホットなものと分かった。副題が「トラと漂流した227日」とあるごとく、とてもショッキングなストーリー展開になっている。予告編だけ観ても、その映像美の素晴らしさが伝わってくる。
しきさんは、トラが大好きと言う。だから、映画のストーリーにはこだわらずに、トラだけを今回の演目にとりいれた。二曲目に、子供遊戯具のキックスケーターの先にトラの大きな顔を取り付けて、軽快にステージの上を走り回る。猛獣であるトラというのは怖い顔であるのだが、改めて見ると凄く美しい。映画でもトラの顔がアップで映し出されるが、トラはなんて美しいんだろう!と溜め息がもれる。またしも、美は感動を呼ぶ!
三曲目は、赤く薄い布をセクシーに頭からかぶり、静かにベッドへ。イスラムの女性たちが頭髪を被うようにかぶるヘジャブがイメージされる。盆の上にしかれたトラの敷物に寝そべる。敷物にはトラの頭部が付いていて、彼女は愛おしそうに戯れる。
いい作品に出逢った。初めて拝見してすぐに感想を手書きして渡した。「感想ありがとうございます。太郎さん、すぐに感想言ってくれるからめちゃ嬉しいです。」
そして私は「トラとインディアン娘」と題して、童話の構想を練り始めた。初日に題名を含め童話をプレゼントすると約束した。有言実行しようと自分にプレッシャーをかけた。「めちゃんこ嬉しいです!! 大好きなトラの童話なんて。」
しきさんは喜んでくれ、今回の作品のことを手紙で詳しく教えてくれた。「映画“Life of Pi”で、曲はコールドプレイのさんの‘パラダイス’と二曲目は不明。立ち上がりは‘Piのララバイ’。べッド曲は全てサントラです。二曲目以外は全て映画の曲よ。」「この演目はお客様のブログでの打ち間違えから生まれたんです。ブログでしきがトラ大好きって写メと映画の名を入れた「Life of Pi」のことを「ライフ オブ オッパイ」って打った方がいて、せっかくなので使わせて頂いたのです。名はギャグだけど、トラへの愛は本物よん」
ある童話ファンの踊り子さんが、私の童話を「絵になる童話」だと評してくれたことがあった。今回のMY童話「トラとインディアン娘」は、インディアン衣装とトラの顔という二つの美が感動を呼び、色彩豊かな童話に仕上げることができた。とても満足している。
私自身、今回の童話は丁寧に仕上げたいと思った。だから次の土日に時間をかけて練り上げようと考えていた。しきさんにも少し時間を頂戴ねと伝えてあった。その週の土日に仕上げられなかったら、次の大阪晃生まで持参するよ!と話していたほど。
しかし、その週はずっと構想を考えていたので、一週間かけた次の土曜日に一応仕上がった。出来上がったら、すぐに見せたくなる。土曜日に「できたよ。まずは読んでみて!」と渡したら、「あらっ! 予定より早かったのね」と言って受けとってくれた。次の回のポラ時、満面の笑顔が返ってきた。そして本レポート冒頭のポラ・コメントが記されていた。
大好きな踊り子さんとステージを通して感動を共にする!そして共同作業のごとく童話ができあがる。これこそストリップにおける最大の醍醐味だ。
童話をしきさんにプレゼントできた喜びとともに、私にこの童話をプレゼントしてくれたしきさんに心から感謝する。
平成25年9月 渋谷道劇にて
H25.9
『トラとインディアン娘』
~飯島しきさん(道劇所属)の新作「Life of OPPAI」を記念して~
森の中に小さな湖がありました。
透き通った清い水をたたえ、月夜に照らされた湖面はきらきらと輝いていました。
ひっそりと静まりかえった中、一人のインディアン娘が湖で水浴びをしていました。つぶらな瞳、日に焼けた小麦色の素肌、長い黒髪、張りのあるバスト、小股の切れ上がったヒップ、そしてカモシカのようにすらりと長い脚。まるでビーナスの美しさ。彼女のヌードは月影に映え、静かな水浴びの音は森から流れる木々の葉擦れの風音と共に心地よい旋律を奏でていました。
彼女は、ふと気配に気づき、対岸に目を移しました。
一匹の大きなトラが彼女のことをじーっと見つめています。彼女は一瞬、恐怖で湖水の中に身体を縮めました。小さな湖なので、トラに襲われたらひとたまりもありません。
彼女は恐る恐るトラの目を見ました。不思議なことに、怖い気配は感じず、むしろトラの瞳には優しさが宿っていました。動物好きの彼女は、まるで猫に接するごとく、おいで!おいで!と手招きをしました。
すると、トラは優しい眼差しを湛えたまま、静かに森の中に去って行きました。
彼女は、あのときのトラの優しい眼差しが忘れられませんでした。
そして、なぜか、いつでも自分は、あの優しい眼差しに護られているような気分になりました。トラのことを思い出すたびに心が安らぎました。
インディアン娘には病気の母親がいました。
生活費と薬代を稼ぐために、彼女は都会に出てヌード・ダンサーになろうと決心しました。プロポーションには自信があったし、多少の踊りもできました。
彼女は懐かしい森に別れを告げるために、あの湖に向かいました。
事件はそのときに起こりました。
巨大なグリズリー(ハイイログマ)が彼女の前に現れたのです。彼女の背丈の何倍もあります。グリズリーは彼女に襲いかかろうとしました。そのとき一匹のトラが森の茂みから現れ、グリズリーに飛びかかりました。グリズリーは驚き、手でトラを払いのけました。そしてトラに向かって大きな声で威嚇しました。グリズリーの身体の大きさはトラをはるかに凌いでいました。しかし、トラも怯まずに、牙を剥き出しにして吠えました。
グリズリーは巨体でトラを圧倒しようとしました。トラはグリズリーの脇腹に飛びかかり噛みつきました。グリズリーは大きな腕の爪でトラに反撃しました。死闘が続きました。
最後は、トラの気迫に押され、グリズリーが森の中に逃げていきました。
グリズリーが見えなくなったことを確認した途端、トラは倒れ込みました。グリズリーの爪で致命傷を負っていました。トラは命をかけてインディアン娘を護ろうとしていたのです。
倒れたトラに、インディアン娘が駆け寄り、抱きつきました。
「ありがとう。私のために本当にありがとう。」彼女は死にかけているトラにしがみついて泣きました。
トラは以前のように優しい眼差しで彼女を見つめ、そして静かに息を閉じました。
インディアン娘はトラの強い愛を感じました。これまでも、いつも自分のことを護ってくれていたことを確信しました。
インディアン娘は、ストリッパーになって、今ステージの上にいます。
華麗なインディアン衣装を纏い、トラとの思い出を演じています。
ベッドショ―では、トラの頭部がついた大きな毛皮を盆のうえに敷きます。彼女はトラの毛皮のうえに寝そべり、愛おしそうに毛皮を撫でる。指先をトラの頭部にはわせ、自分の方に顔を向けさせ、トラの顔をじっと見つめます。トラは生きているかのように優しい眼差しを湛えています。心の窓である目を通じて、二つの魂が重なり合いました。
「初めて湖で出会ったときに、あなたの素敵なヌードに憧れました。この世にこんなに美しいものがあることを初めて知りました。あれから、ずっとあなたのことを想っていました。」トラの目はそう語りました。
「ありがとう。わたしは動物にも心があることを知っていたので、あなたの気持ちはしっかり通じていましたよ。あなたのお陰でずっと安心して暮らしてこれました。本当にありがとうね。」と言って、トラの顔にキスをしました。
インディアン娘は、トラの優しさに包まれながら、素晴らしいステージショ―を披露していました。
おしまい